Text by CINRA編集部
映画『ゴーストワールド』のコメントと描き下ろしイラストが到着した。
ダニエル・クロウズの同名グラフィックノベルを原作とする『ゴーストワールド』はテリー・ツワイゴフ監督の初長編フィクション映画。「ダメに生きる」をキャッチコピーに2001年に公開され、「低体温系」青春映画と称された。1990年代アメリカの名もなき町を舞台に、いつも周囲をばかにして過ごしているシニカルなティーンエイジャーのイーニドとレベッカが大人になることに直面し、自分の居場所を見つけようとする倦怠感に満ちた数か月を描く。11月23日から東京・Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で公開。
主演はソーラ・バーチとスカーレット・ヨハンソン。それぞれイーニド役、レベッカ役を演じる。スティーヴ・ブシェミ、ブラッド・レンフロらが共演。
コメントはアユニ・D(PEDRO)、澤部渡(スカート)、竹田ダニエル、玉置周啓(MONO NO AWARE)、年森瑛、能町みね子など総勢14人によるもの。6点のイラストは奥田亜紀子、カナイフユキ、志村貴子、冬野梅子、早川モトヒロ、ワカヤマリダヲが描き下ろした。
カナイフユキイラスト © 2001 Orion Pictures Distribution Corporation. All Rights Reserved.
ワカヤマリダヲイラスト © 2001 Orion Pictures Distribution Corporation. All Rights Reserved.
奥田亜紀子イラスト © 2001 Orion Pictures Distribution Corporation. All Rights Reserved.
早川モトヒロイラスト © 2001 Orion Pictures Distribution Corporation. All Rights Reserved.
冬野梅子イラスト © 2001 Orion Pictures Distribution Corporation. All Rights Reserved.
【アユニ・D(PEDRO)のコメント】
はみ出し者とは:風変わりで周囲に容易に溶け込めない人。
それでいい。
それがいい。
誰だって思春期は旅路を彷徨っている。
寿命が来るまで人間見習い中でいい。
私はこの作品に未来への希望を抱いている。
最高にプリティーでキュートなふたりが大好きだ。
【王谷晶のコメント】
あの頃、「自分はイーニドですらない」と思いながらも泣かされたダサくてイモい元・若者たちよ。中年になってから観る『ゴーストワールド』、強烈に沁みます。
【カネコアツシのコメント】
原作コミックは大名作ですが、そのエッセンスを余さずディープかつカラフルに翻案した本作もまた「映画」として大傑作!最高に幸せな映画化のかたちだと思います。
【澤部渡(スカート)のコメント】
若かった頃、『ゴーストワールド』を「お洒落な映画なんでしょ」ぐらいに思い、素通りしたのを反省しています。でも今観ることができてよかった。映画の中のあらゆるビターな状況が今の私に重なり、いびつできれいななにかになりました。
【少年アヤのコメント】
モラトリアムの痛みは、ずっとここにはいられない、という痛みである。イーニドがあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、余計なことをしたり、しなかったりする様子を描きながら、本作はどうしようもなく、険しいほどに順行していく時の流れそのものを炙りだしているのではないか。
【絶対に終電を逃さない女のコメント】
10代の頃の日の当たらない鬱屈とした毎日に、光を当ててくれた。イーニドにとってシーモアがヒーローだったように、この映画こそが、すべてのはみ出し者たちにとってのヒーローになる。
【竹田ダニエルのコメント】
ただの「可愛いティーン映画」だと思ったら、大間違い!「大人の女性」として扱われたいけど、つまらない「大人」には絶対なりたくない。そんな少女の葛藤と閉塞感を、「大人」になった我々は今、どう受け止める? 初公開から22年たった今、社会はどう変われただろうか?
【竹中万季のコメント】
燻った気持ちを抱えた学生時代、私の映画だ!と思った。二人のファッションを一つひとつノートに描いてたことも思い出す。世界に対する居心地の悪さの理由は個人的なものとは限らないことに気づいた今、昔は気に留めてなかったシーンに目がいく。「今は差別を隠すのが上手くなった」という言葉。2023年の今はどうだろう?
【玉置周啓(MONO NO AWARE)のコメント】
イーニドはカラオケに行った方がいい。絶叫しながら踊って、嫌なこと全部忘れて、世の中マトモじゃないやつばっかだってこと受け入れよう。俺ハモるよ。でもこういうカウンセラー気取りが一番鬱陶しいのか。じゃあいいよ、人生における選択をミスりまくるがよい。浮かない顔で街を出て、浮かない顔で帰ってくればよいわ。そうした痛みを伴う往復の先にしか自分の居場所がないってこと、レベッカもいつか分かってくれるさ。
【年森瑛のコメント】
普遍性があること、多くの人の胸を打つということはすなわち凡庸さを意味するのではないと、本作は証明している。
【中島セナのコメント】
世の中を素直に捉えず、諦観することも出来ない女の子たち。が、原因は周りではないということを徐々に自覚していく。世間に罷り通る正しさに疑問を持つ。疎外感の中、イーニドは自分を認識するための岐路にいるのではないだろうか。風の吹かない日常を皮肉を交えておしゃれでポップに描いている。どこか滑稽な2人を観ていたつもりが、自分が滑稽だったのではないかと思えてくる作品だ。
【能町みね子のコメント】
北関東のクソ田舎で育った私は映画館なんか近くになくて、まともに映画館で映画を観たことがなかった。22歳まで。マジで、22歳まで映画を知らなかったと言っていい。22歳、映画くらい観たほうがいいんじゃないかと思って、雑誌「CUT」を買って、自分が興味を持てそうな映画を選んで、恵比寿ガーデンシネマに人生で初めて1人で映画を観に行った、それがゴーストワールドなのだ。すごくないか。この選択肢はすごくないか?運命づけられてないか?今でも、こうして運命づけられる人がいるはず。いま大人になって見て思う、イーニドとレベッカのダサい顔!周りをダサいとこき下ろす本人だってしっかりダサくてそこが愛おしすぎる、顔見るだけで泣ける顔。今のポリコレからしてキツいところもわずかにあるけどそこはちょっと置いとく。みんなイーニドなんだろ?我々みたいなクソ女子のバイブル、自分がいちばん若いときに観ろ、つまりいま観ろ!
【山内マリコのコメント】
『ゴーストワールド』のことを思い出すと胃が痛くなる。映画が公開されたとき、わたしは二十歳だった。スクリーンの中にまさに自分たちみたいな子が映っていることに、うれしさを感じると同時に、親友と二人、多分ちょっとがっかりしていた。なーんだ、わたしたち以外にもいたのかって。
【ゆうたろうのコメント】
イーニドとレベッカの、正反対なんだけど互いを求め合ってる距離感がとにかく愛おしく、物語に登場する90年代の衣装、ヘアメイク小物がとにかく可愛くて。この作品に関わる全てを羨みながら没入していました。多感な時期を生きる素直になれない少年少女が絶妙に描かれてる思いきや、物語を締めくくるラストシーンでは色んな意味で裏切られる、この映画の凄みを最後の最後まで痛感させられました。