スタジオポノック最新作「屋根裏のラジャー」の完成を記念したジャパンプレミアが、本日11月16日に東京・TOHOシネマズ六本木で開催され、寺田心、鈴木梨央、安藤サクラ、仲里依紗、山田孝之、イッセー尾形、百瀬義行監督、西村義明プロデューサーが登壇した。
【大きな画像をもっと見る】12月15日に公開される「屋根裏のラジャー」は、「メアリと魔女の花」のスタジオポノックが手がける約6年ぶりの新作長編アニメーション。イギリス文学協会賞などを受賞したA.F.ハロルドの小説「The Imaginary」が原作のファンタジー作品で、愛を失った少女・アマンダの想像から生まれた誰にも見えない“イマジナリ”の少年・ラジャーを主人公に、現実と想像が交錯する世界で繰り広げられる大冒険を描く。
ラジャー役を熱望し、オーディションでその座を勝ち取った寺田。アフレコ時を振り返りながら「声変わりギリギリのときだったので、大きな声を出さないようにしたり、白湯やハチミツを飲んだり、気を付けることが多かったんですけど、ちょっとずつ声が変わっていくあの時期を、『屋根裏のラジャー』という映画に収めることができ、僕にとって貴重な体験でした」と語る。アマンダ役の鈴木は役作りについて「アマンダの設定年齢が自分の今の年齢よりも低かったので、自分の小さいときの作品を観て、喜び方とか話し方を研究しながら役に寄り添いました」と述懐。また映画を観た感想を問われると鈴木は、「ラジャーがイマジナリの子たちと出会う場面が大好きで、本当にいろんな声や音が聴こえてきて、すごく圧倒させられました」と伝える。それを受けて鈴木も「1回目ではどなたがやっていらっしゃるのかわからないほど、皆さんキャラクターとして生きている、一心同体となっているなと感じました」と続けた。
アニメ映画のアフレコは初めてだったというアマンダの母・リジー役の安藤。映画について「仕事柄もそうですし、自分自身、日常的にイマジネーションの世界から力をもらっているので、リジー役をやりたいなと一層思いましたし、今って携帯を見ればすぐに答えが見つかっちゃう、視覚化されてしまうじゃないですか。イマジネーションを題材にしたアニメが作られるのは、非常に素敵だなって思いました」と述べる。イマジナリの少女・エミリ役の仲は「出演が決まって、生活とかけはなれていたので、脚本を読んだら、なんて面白いんだって。実写だと限界があるけど、アニメだと無限大の力があるから、撮影の前から完成が楽しみでした」と言い、これから映画を観る観客に向けて「試写室で観ると仕事モードになり『絶対泣いてやるもんか』というスイッチが入ってしまうんですけど、涙を堪えるのが無理でした。嗚咽が出るくらい、泣いてしまって……皆さん、これからですよね? 大変ですよ。メイクも落ちちゃいますから」と投げかけた。
ラジャーの前に現れる怪しげな猫・ジンザン役の山田は、「映画の邪魔になりたくない」と顔を隠しながらトーク。謎の男のミスター・バンティング役を演じたイッセーは、「美しい映画でかわいらしくて、どんどんその世界に惹きこまれていく。70歳の男が自分にもこういうときがあったんだと、一瞬にして少年時代に戻るんですよ。そういった意味でこの作品は今のすごく密接につながっているなと感じました」とコメント。百瀬監督は「アニメーションっていう言葉には、命を吹き込むという意味合いもあるんですよね。キャストの演技によって、描かれたキャラクターに生身の感じを与えてもらえる。存在感があるよう、キャラクターを立たせてもらっている。絵を描くことと、それ以降の作業が別々じゃないっていうのかな。1つにつながっているという実感を持てました。すごくいい体験をしたなって思います」と感謝の気持ちを話し、西村プロデューサーは、今日を迎えたことについて「ここにいる皆さんはたぶん作品を選んで出ている方々だと思うんですけど、そういう方々が選んでくれたことがとてもうれしい」と喜んだ。
キャラクターの魅力について質問が及ぶと、寺田は「僕は今反抗期というか、何か言われると斜に構えてしまうんですけど、彼は疑うことをせず『大丈夫、僕ならできるよ』って信じれるんですよ。素直でまっすぐで芯が通っている。いつまでもラジャーのようになりたいし、ラジャーが教えてくれた気持ちを忘れないでいたいと思います」と返答。鈴木は「アマンダは天真爛漫で、ラジャーと冒険しているときは素直で明るい子なんですけど、お母さんのリジーには素直になりたいけど感情が爆発してうまく伝えられないときがあるとか、明るいだけじゃない、寄り添いたくなうような部分があるのが彼女のもう1つの魅力なんじゃないかと」と説明する。さらにこれまで4回ほどアニメで猫役を演じているという山田は、「猫でオファーが来ると迷えないんですよ。やりたいってなっちゃう。好きなんですよ猫が。アニメの声だけじゃなくて、最終的に猫役ができたらいいなって。なんなら猫になりたいですね」と言い切り、会場の笑いを誘った。
最後に登壇者を代表して、寺田と西村プロデューサーが挨拶。寺田は「この映画に絶対出たいと思ってオーディションを受けたこと、ラジャー役に選ばれてうれしくて泣いたこと、本気でアニメを作っている作り手の皆さんを見たこと、完成した映画を観たときのこと、こうして皆さんに映画を届けることができたこと。この映画にはたくさんの思い、たくさんのシーンやセリフが詰まっています。僕はこの映画に出られたことを一生忘れません」と精悍な表情を浮かべる。
西村プロデューサーは「ある友人について話をしたいと思います。僕には40歳くらい歳の離れた友人がいました。高畑勲という監督なんですけど」と前置きしたうえで、「監督の作品が小さい頃から大好きで、スタジオジブリに入りました。奇跡があって、高畑監督と『かぐや姫の物語』という作品を一緒に作りました。高畑さんとは『もう1本、作ろうね』って約束をしていたんですね。僕がジブリを去ったあとになるんですけど、原作小説(『ぼくが消えないうちに』)を読んでこの企画をしたときに、高畑さんが死んでしまって、1本作ることができなかったんです。高畑勲さんという方がいなかったら、志してはいないですし、百瀬監督とも出会っていない、ましてや『屋根裏のラジャー』という作品は生まれてなかったし、素晴らしい俳優の方々とも出会えていなかった。『そこに何が残るのか』というのをずっと考えながら企画していました。実は今日関係者にお願いして、僕の“イマジナリフレンド”である高畑勲監督に観てもらおうと、一席だけ用意していただきました。一生懸命に作りましたので、ぜひ友達と一緒に観てください」と、今は亡き友に思いを馳せる。これから始まる映画に観客たちが胸を高まらせる中、ジャパンプレミアは幕を閉じた。
■ 「屋根裏のラジャー」
2023年12月15日(金)全国東宝系にて公開
原作:A.F.ハロルド「The Imaginary」(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)
監督:百瀬義行
プロデューサー:西村義明
制作:スタジオポノック
製作:「屋根裏のラジャー」製作委員会
配給:東宝
□ キャスト
ラジャー:寺田心
アマンダ:鈴木梨央
リジー:安藤サクラ
エミリ:仲里依紗
オーロラ:杉咲花
ジンザン:山田孝之
ダウンビートおばあちゃん:高畑淳子
老犬:寺尾聰
ミスター・バンティング:イッセー尾形