2023年11月15日 17:41 弁護士ドットコム
電車や駅構内などで痴漢や盗撮に及ぶ人を追い込み、警察に引き渡す「私人逮捕系」YouTuberの活動に批判が高まっている。JR東日本が「営利活動を目的とした撮影」を控えるように呼びかけたことで、SNS上では事実上の「規制」と受け止められている。
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11月13日には、電車内の活動にも参加していた「煉獄コロアキ」を名乗る私人逮捕系YouTuberが名誉毀損の疑いで逮捕されたばかり。
弁護士ドットコムニュースが、首都圏の主要鉄道会社4社に私人逮捕系YouTuberに対する考えを聞いたところ、各社がいずれも問題視していることが明らかになった。
公式サイト上に撮影の「ルール」を新たに記載する考えや、「施設管理権に基づいた撮影制限」の可能性も視野に入れているなどと回答した。
私人逮捕系YouTuberによる活動は、私人逮捕の要件を満たさない場合、暴行罪などに問われる可能性があるだけでなく、その様子を撮影した映像などをインターネット上に公開したときには名誉毀損罪にも問われることがある。
私人逮捕系YouTuberのひとつ「ガッツch」が公開した動画(現在は非公開)で、「痴漢」と指摘された男性と揉み合う中で、階段で転倒する危険な行為も見られたことを受けて、JR東日本は弁護士ドットコムニュースの取材に「駅や車内の秩序を乱す行為はおやめいただきたく存じます」と答えていた。
【私人逮捕系YouTuberの「やり過ぎ危険行為」にJR東日本が警鐘「駅や車内の秩序を乱す行為は止めて」(11月10日)】
また、JR東による「収益性のある動画共有サイトへの投稿など個人の営利活動における弊社保有施設内での各種撮影はご遠慮いただいております」という回答は、事実上の「規制」にあたるとSNS上では受け止められた。
問題が指摘されたガッツchは、記事を受けて「各所からどんな妨害を受けようとこの活動を続けます」とXに投稿している。
鉄道主要各社は私人逮捕系YouTuberをどのように捉えているのか。弁護士ドットコムニュースでは、小田急電鉄、東京メトロ、東急、京王電鉄の4社に問い合わせた。
JR東日本にしたものと同じ2つの質問を用意した。
(質問1)電車・駅構内での「私人逮捕系YouTuber」の活動をどのように捉えていますか
(質問2)電車内や駅構内の撮影・配信のルールを教えてください。このルールはYouTuberの活動を規制するものでしょうか
各社の回答を紹介していく(並びは回答順)。
○駅や電車内は公共性が高く、多くのお客さまが利用される空間であるため、ほかのお客さまのご迷惑に繋がる行為(撮影)は控えていただきたいと考えます
○ 痴漢・盗撮は犯罪であり、絶対に許さないスタンスですが、無理に追いかける等の行為はほかのお客さまへの巻き込み転倒・怪我を誘発する危険性が高いことからお控えいただきたく、犯罪行為を見かけた場合は、警察官または駅係員への通報をお願いしたいと考えます
○投稿されているものの多くは被害者にモザイクはかけられているものの、利用駅や服装など個人の特定につながる情報が含まれているとも言え、被害者保護や個人情報の観点での課題があると考えられます
○撮影について、当社では、報道機関をはじめいわゆるメディアの方には、事前に申請をいただき、広報部門の立ち合いのうえで実施しています が、 YouTuberをはじめ個人の方へ同様の対応をすることは難しいため、お客さま同士のトラブルに繋がるような撮影は控えていただきたいと考えます
○また、ほかのお客さまや当社従業員の個人情報流出の可能性等の観点から、今後の動向次第では施設管理権により、撮影に制限を設けることを検討の俎上にあげる可能性もありうるものと考えます
Q.どう捉えている?
「前提として、電車車内における痴漢等の犯罪や迷惑行為については、鉄道事業者として看過できるものではありませんが、お客様同士のトラブルや撮影に伴うお客様の肖像権・プライバシーの侵害などに当たる可能性もあります。周囲のお客様に危険が及ぶ行為については、お止めいただきたく存じます」
Q.撮影・配信のルールは?
「当社敷地内での撮影に関し、営利目的での撮影行為を行う場合は、内容の確認を伴う当社への事前申請と、当社社員の立会いが必須となります。ただし、動画共有サイトへの投稿など、個人の営利活動につながる撮影行為はお断りしております」
「なお、当社公式ホームページ上でも、お客様へのお願いとして、撮影時の注意点に関する記載を拡充する方向で検討しております」
Q.どう捉えている?
「私人逮捕系YouTuber」と言われる方の存在は認識しておりますが、当社敷地内における活動は把握しておりません。
お客さまには、スマートフォン等を操作・撮影しながらの歩行は、気を付けているつもりでも周りの様子や足元への注意が散漫になり、お客さま同士の接触や、ホームからの転落のおそれなど、大きな事故につながりかねませんので、おやめいたいただく事をお願いしております。昨今の状況を鑑み、必要に応じて対策を検討して参ります」
Q.撮影・配信のルールは?
「駅構内での撮影について、以下の事をお願いしております」
○写真撮影の際には運行中の列車に向けてのフラッシュ使用、立ち入り禁止区域での撮影等、列車運行に影響をおよぼす行為については禁止しています。
○駅構内などで撮影する際、撮影しているお客さまとカメラを向けられたお客さまとの間でトラブルが発生することがあり、周囲へご配慮いただくようお願いする場合があります。
○お客さまが個人的に撮影された写真などを公開し、その情報が第三者の権利を侵害する等、トラブルが生じた場合は、当社は一切関与せず、すべてお客さまの責任において対処いただくことになります。
「当社では日頃から、お客様が安全に、安心して駅・電車をご利用いただくための環境整備に努めております。
上記環境を乱すような撮影行為が見られた際は、おやめいただくようお願いをいたします。なお、必要に応じて、警察等との連携を図っております。
周囲のお客さまに危険が及ぶ行為など、駅や車内の秩序を乱す行為はおやめいただき、引き続きお客様が安全に、安心して駅・電車をご利用いただけるよう、ご協力いただけますと幸いです」
Q.どう捉えている?
「周囲のお客さまに危険が及ぶ行為など、駅や車内の秩序を乱す行為はおやめいただきたく存じます。
また、プライバシーに関わるほか、お客さま同士のトラブルにも繋がるため、他のお客さまが映るような撮影、またその動画の公開についてもおやめいただきたく存じます」
Q.撮影・配信のルールは?
「個人的な趣味等での撮影に関しては、安全上の問題があり、ほかのお客さまのご迷惑になると判断される場合は、撮影をやめていただくようお願いしております。
配信は、当社が行うものでもないため社内でルールは定めておりませんが、収益性のある動画共有サイトへの投稿など個人の営利活動における弊社保有施設内での各種撮影はご遠慮いただいております。
なお、法人としてのお取組みの場合は、内容によりご相談をお受けすることが可能です」