電車内で注意されるのは恥ずかしいことだが、逆ギレして乗務員に食ってかかるのはさらにみっともない行為だ。東京都に住む50代女性は今から3年前、全席指定の私鉄の特急列車に乗っていて衝撃的なクレーマーを目撃してしまった。
「朝10時頃の特急に乗っていました。通路を挟んで反対側の斜め前に女性が一人で乗っていたのですが、どうやら自分が購入した席ではなかったようで、車掌さんが注意しに来ました」
車掌はタブレットで購入状況と実際に埋まっている席を確認し、その席を購入してない客にピンポイントで声をかけているようだった。ところが、注意された乗客は、あろうことか間違っていることを認めつつも激しく逆ギレし始めたという。編集部では一部始終を目撃していた女性に話を聞いた。
「ここの人が来たらすぐにどくんだし、空いてるんだからいいでしょ!」
車掌はタブレットを示しながら、とても丁寧に「こちらのお席は、お客様のご購入席とは異なりますよね」とその女性に説明し、本来の席に行くよう促していた。ところが
「女性は突然切れて、『切符ならちゃんと買ってます!不便な場所を買ったからここに座ってるのよ!ここの人が来たらすぐにどくんだし、空いてるんだからいいでしょ!』と、すごい言い草でした」
と激しい抵抗にあってしまう。もちろん車掌は諦めず、「ここの座席を買われている方がきて、他の方が座っていたらお気持ち悪いですよね」と説得を続けたところ、
「『私が気持ち悪いっていうの!』とまるっきり逆切れしていました」
この騒ぎに他の乗客も迷惑そうな顔をしていたそうだ。結局はその乗客は席を立ったというが、話はそれで終わらない。
「私のことを気持ち悪いとか言うし……」嘘のクレーム電話が丸聞こえ
そのクレーマー客がデッキで電話していたというのだ。女性はデッキのすぐ近くの席に座っていたため、ドア越しにその怒鳴り声が全て聞こえてしまった。どうやら鉄道会社のお客様センターに電話していたようで、こんなクレームが聞こえて来た。
「すっごいきつい口調で怒られたんですよ!私のことを気持ち悪いとかいうし、なんなんですか?あの乗務員!私はね、あんな風に怒鳴られたことなんて一度もないんですからね!たかが席のことで、あんなにひどいこと言われて……」
これを「ずーっと、終点につくまで電話していました」という。
「当時は冬で、デッキは暖房入っていなくて寒いのに、せっかく買った座席にも座らず、人生を無駄に消費するタイプの人だなぁとかぼんやり考えながら聞いていました」
電話に出た担当者も災難だ。しかも、盛りに盛った嘘のクレームで悪質と言うほかはない。女性はこれに黙っていることができなかった。
「あまりに理不尽だったので、翌日、カスタマーサービスに電話して『昨日、こういうクレームがあったと思いますが』と切り出しました。私は、車掌さんは根気よく、最後までとても立派な態度で、あの女性が一方的に怒鳴りまくっていたことを話し、くれぐれも車掌さんを叱らないで欲しいことなどを伝えました」
これにはカスタマーサービスの担当者も感謝していたようだ。女性は改めて当時を振り返り、
「結局、彼女はずーっとデッキで電話していたので、どこの席でも同じだったのではないでしょうか?そもそも、誰にも邪魔されたくないから余計にお金をだして座席を確保するわけですし、自分が購入したはずの席に他の人がいたら、『そこは私の席です』と言えない人もいるでしょう」
「外国の方で言葉が通じず、自分の権利を主張できない人だっています。眼の不自由な方とかで、当然空いていると思って座ろうとすればトラブルになるかもしれません」
と思いを巡らせた。
「クレーマーって、本当に想像力のない、自分勝手な人なんだなぁと感じました。私は、絶対にクレーマーのようなみっともない人間にだけはなりたくないと思います」