大丸心斎橋店と⼼斎橋パルコが、初の共同メディア懇親会を開催した。⼼斎橋パルコは、かつて「大丸心斎橋店 北館」として営業していたビルを丸ごとリノベーションして営業しており、1階コンコースと地上2階から10階までの連絡通路で「大丸心斎橋店 本館」と接続。年齢層が異なる顧客を相互に送り合うビジネスモデルが奏功し、両店は2023年に過去最高売上を達成する見込みだ。
大丸心斎橋店は、全身の「松屋心斎橋店」として1726年に開業。1933年に大丸心斎橋店の旧本館が完成し、アール・デコ・デザインの装飾などにより関西を代表する建築として広く親しまれた。2019年9月には86年ぶりに本館をリニューアル。心斎橋から世界に向けて新たな百貨店像を発信することを目指して再スタートを切った。
心斎橋パルコは、渋谷パルコ、名古屋パルコと並ぶパルコの「基幹店」として2020年11月に開業。高感度ファッションやアート、カルチャーの発信によって「パルコらしさ」を打ち出しながら、同じくJ.フロントリテイリング傘下の大丸心斎橋店と物理的に繋がることで百貨店の「強み」も取り入れ、「百貨店でも専門店ビルでもない新しい複合ビル」として営業を続けている。
同店が開業し、大丸心斎橋店と相互の取り組みを始めてから丸3年が経った。心斎橋エリアは梅田などと比べて駅の乗降客数も少なく、マーケットとしてはやや小さい。特に大丸心斎橋店は阪急うめだなど大阪府内の競合店と比べて営業面積が狭いといったディスアドバンテージもあるが、心斎橋パルコと連絡通路で接続したことで顧客層の幅を広げ、買い回り客を増やすことに成功したという。大丸心斎橋店の小室孝裕館長は「1ヶ月で70万人以上の方が両館を行き来してくれている。大丸、パルコ両方で買い物をしてくれる顧客の1館あたりの平均客単価は、片方のみを訪れる顧客の2倍以上なので、今後もこういった顧客を増やす取り組みを進めたい」と語る。
また、両館ともにコスメ・ラグジュアリー・食といった3カテゴリーに特化して店舗を展開。特定のカテゴリーに関しては府内の他店に負けないラインナップを揃えることで目的買いの顧客を取り込む狙いが奏功し、特に大丸心斎橋店ではラグジュアリー商品のインバウンド売上が過去最高を記録した2019年を超えるペースとなるなど、好調に推移しているという。
今後、大丸心斎橋店は外商顧客への提案を強める「富裕層強化」、訪日外国人を更に取り込む「インバウンド強化」、店外の心斎橋エリアのラグジュエリー店舗とカード提携などを進める「エリア戦略」といった3つのテーマを店舗戦略の軸に掲げる。心斎橋パルコは若年富裕層への訴求も強めつつ、大丸からの買い回りである年齢層の高い顧客層も取り込み、「カオスでアヴァンギャルドなメディアセンターを目指す」(心斎橋パルコ緒方道則館長)としている。
大丸心斎橋店の2023年の売上は、新型コロナウイルスの終息に加えて心斎橋パルコとの相互送客が機能していることで、歴代最高売上を記録した2019年を上回るペースで進捗。小室館長は「これまで目標にしてきた売上1000億円をついに達成できるだろう」と話す。心斎橋パルコもこれまでの年間最高売上を大きくを更新する220億円で着地する見込みで、池袋パルコの売上を超える予想だという。緒方館長は「開催を約500日後に控えた大阪万博も追い風になる。今後更に客足は伸びるのでは」と期待を寄せた。