図書館は静かに利用するのが常識だが、自分の思い通りにならないと怒鳴りだすクレーマーが出没することもある。図書館司書として働く50代女性が、こんな迷惑クレーマーについて語ってくれた。
昨年、「かなり特殊な専門書」を探しに来たという高齢男性が、なんと約40分にわたり怒鳴り続けたというのだ。男性の言い分はこうだ。
「大体、どうして図書館に小説なんかを置くんだ。自分は小説なんて今まで1冊も読んだことがない。こんなものをありがたがって読むのは頭のおかしい連中ばっかりで、そんな本を買い集めている図書館の職員は知能が低い。こんな小説まとめてさっさと捨てろ」
あまりにも身勝手で驚くしかない。そのとき対応した司書の女性が、編集部の取材に詳細を語ってくれた。
「なんで、税金で役にたたない本なんか買って並べておけるんだ!」
その高齢男性は、「服装はけっこうおしゃれで、ノーネクタイのワイシャツにジャケット」という恰好だった。
「もとは大学の先生だったらしいです。白髪で、眼鏡をかけていて、文化人のイメージそのものという感じでした」
そんな知的なはずの男性から「小説なんか捨てろ」という暴言が飛び出したのだから驚愕だ。探していた本は、「建築業界のいろいろな人を紹介しているような、マニアックな紳士録のようなもの」だった。
「普通の人は読まないし、大学図書館なら所蔵しているかもしれませんが、公共図書館では需要がなさそうな本でした」
と振り返る。女性はこう対応した。
「『申し訳ございませんが、その書籍は、現在当図書館では所蔵しておりません』と言ったとたんに怒鳴りだしました。実はその後に、『が、他の図書館から取り寄せることはできますし……』と続くはずでした」
確約はできないが、リクエストを出してもらえれば「購入希望で選書に入れることができる」旨を説明する流れだった。しかし
「なんで、こんな有名な本がないんだ!小説ばかり並べやがって!あんなものは、人間をダメにする。なんで税金で役にたたない本なんか買って並べておけるんだ!私の税金を無駄遣いするな!」
と怒涛のクレームが始まり取り付く島もなかった。
「口を挟む間もなくて、『いえ、あのぉ!』とか、なんとか、お取り寄せや購入の説明をしようとしたのですが、もう、全然ダメでした」
「こんな図書館の司書なんて、みんなろくな大学出てないんだろう」
きちんと説明を聞いていれば後で借りられたかもしれないが、無いと知るや怒りだしたのだから仕方ない。勝手な暴言はなおも続く。
「絵本だって、あんな大きな本、邪魔だ!あんな大きな本を並べるから、まともな本を置くスペースがなくなるんだろう。こんな図書館の司書なんて、みんなろくな大学出てないんだろう。本の貸し出しなんて、学生アルバイトかパートのおばちゃんで十分だ!」
子どもの教育に必要な絵本や司書を見下し、誹謗中傷まで始まって完全におかしいのはクレーマー男性のほうだった。女性はこれに「相手をしても仕方がないので、全員で完全無視をして下を向き、黙々と仕事を続けました」という対応をした。
「カウンターの中でメモがまわって、『とりあえず、逆らうな。目を合わせるな』となりました。40分近くその調子で怒鳴っていたので、いつのまにかこちらの神経が麻痺というか、慣れてしまって、普通に仕事をしていました」
それでも、激しく不快な思いをさせられ辛かったことだろう。クレーマー男性はいつの間にかいなくなり、利用者たちが静かに雑談をする落ち着いた図書館の光景が戻った。
学生がスマホを向けて動画を撮りかけていた
児童スペースは別の階にあり、子どもがこの騒ぎを目にすることはなかったが、学生がスマホを向けて動画を撮りかけていたのを司書が制した場面もあったという。公共の場で大人が怒鳴り散らすなど、常軌を逸している。
女性はこの件を「お店などと違って図書館は物を売るわけではないのでお客様が怒っても、そのまま帰ってしまっても、二度と来なくなっても、別に誰も困りません」とした上で、感想をこう語っている。
「人にはそれぞれ本に対する好き嫌いがあると思います。自分が読んだことがないからといって他の人が楽しみに読んでいる小説や絵本などを頭から否定し、静かにしなくてはいけない図書館で大騒ぎをするなど、私たちから見たらクレーマーと言うよりは、ただの変な人でした」
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