2023年11月14日 15:31 弁護士ドットコム
「煉獄コロアキ」を名乗る男性が名誉毀損罪で逮捕された。
【関連記事:セックスレスで風俗へ行った40代男性の後悔…妻からは離婚を宣告され「性欲に勝てなかった」と涙】
これまで男性は「私人逮捕系」YouTuberとして活動して、その言動がSNSで炎上、メディアにもよく取り上げられていた。
行き過ぎた行動がネット上などで問題視されることも多い「私人逮捕系YouTuber」について、今後も警察の威信にかけて摘発が続く可能性もある――。元検察官の弁護士はそう指摘する。
報道によると、男性は今年9月中旬、都内の劇場にいた10代女性に「チケット転売をした」などと詰め寄って撮影したうえ、「転売ヤー」や「パパ活女子」などのテロップをつけて動画を投稿して、女性の名誉を傷つけた疑いが持たれている
しかし、警察は、女性が不正転売に関わった事実は確認されていないとしているという。女性はモザイクがかからず、自分の姿が映っているとして警察に相談していたそうだ。
男性のXのプロフィールには「ジャニーズチケット不正転売撲滅!私人逮捕!」などと書かれている。「私人逮捕」の様子を映した動画をネットにアップしていたが、11月に入ってからYouTubeチャンネルが停止されていた。
電車や駅の痴漢や盗撮犯を追い詰め、身柄を確保し、警察に引き渡す他の「私人逮捕系」YouTuberの活動は問題視されている。捜査当局はこうした「私人逮捕系」の活動をどのように見ていたと考えるのだろうか。東京地検の元検事・西山晴基弁護士に聞いた。
——名誉毀損罪で逮捕されたことについて、どう考えますか
今回は、私人逮捕そのものを問題としたのではなく、動画をモザイク処理せずにYouTubeで配信したことについて、名誉毀損にあたるとして「被害届」が提出されたため、名誉毀損罪で逮捕されたようです。
しかし、現行犯逮捕の要件を満たさない状況で逮捕行為に及べば、当然、それは違法な行為になりますので、逮捕罪や暴行罪にあたる可能性があります。さらに、相手をケガさせれば、逮捕致傷罪や傷害罪に問われる可能性もあるでしょう。
また、「私人逮捕系」YouTuberの中には、相手のスマホなどを無理やり取り上げる行為に及んでいる人も見られますが、私人には捜索差押権限は一切ないため、強盗罪にあたる可能性もあります。
——警察や検察は「私人逮捕系」YouTuberの活動をどのように見ていたのでしょうか。今後も「同業者」の摘発に向けた動きがありうると考えられますか
警察が逮捕行為に至るまでには、状況に応じて慎重な判断をしています。そのため、「私人逮捕系」YouTuberの行き過ぎた逮捕行為について、「舐めたことをしているな」と思っている警察官も多いのではないかと思います。
また、場合によっては、「私人逮捕系」YouTuberが出しゃばることによって、証拠関係が不十分な状態に陥る可能性もあり、本来、警察が適切な捜査に及べば立件できたものができなくなってしまうリスクもあると考えられます。
今回逮捕された男性もそうですが、実際に「私人逮捕系」YouTuberが規制線の中に侵入するなどして、警察からすれば妨害行為ともとれる事態になったこともありました。
警察の捜査を妨害する行為は、場合によっては、公務執行妨害罪などにもあたりえます。
今回は、被害届の提出をきっかけに逮捕されました。しかし、今後、警察の目に余る行為や捜査の邪魔になる行為が見られるようであれば、警察が威信にかけて「同業者」の摘発に向けて積極的に動き出すこともあるのではないかと思います。
【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/