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複雑化する司法試験、2023年は在学中受験が3分の1占める “ロースクール離れ”は防げるのか

2023年11月09日 14:31  弁護士ドットコム

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裁判官、検察官、弁護士(法曹三者)になるための“登竜門”とされる司法試験の合格発表が2023年11月8日にあり、合格者数は1781人、合格率は45.34%だった。


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今年は法科大学院(ロースクール)在学中の受験が認められた上、法学部3年+ロースクール2年という最短5年の「法曹コース」が創設されて初めての試験。在学中受験者が637人と全体の3分の1を占める結果となった。ここに法曹コースの合格者も含むが、法務省は「把握しているが、あくまでご本人の出願時の申し出なので公表しない」としている。



近年、ローを通らずに受験資格を得られる「予備試験」の合格率が9割を上回り、“ロースクール離れ”が指摘されている。新制度で一定の歯止めを利かせる格好となったが、試験はこの20年で複雑化し続けている。



●予備試験の躍進で、ロー離れが加速

在学中受験資格で合格した場合、ロースクールの課程を修了していることが司法修習生の採用要件となる(改正裁判所法66条第1項)。それまで、在学中に予備試験で資格を得た場合はローを中退する学生もいた。



2011年にスタートした予備試験は、そもそも経済的・時間的な事情で通えない人にも道を開くべきとの意見などを受けたものだった。しかし、ロー修了者より格段に早く法曹資格を獲得できるため、近年は人気が集中。高校在学中に突破する人も登場し、「優秀さ」の指標ともなっている。



予備という名称とは裏腹に、「ローよりも予備で受かったほうがいい事務所に就職できる」(慶應ローに通う学生)との声もあり、「予備こそが本命」とする学生が増えているようだ。



ロースクール制度を維持するためには、安定的な合格率を保つ必要がある。そこで、繰り出されたのが「3+2」と在学中受験資格の創設だった。





●新たに「法曹コース」が登場、在学中受験も可能に

2019年に文部科学省が新設した「法曹コース」(通称3+2、図1参照)は、最短6年で法曹資格を取得できる。また、所定科目の単位を修得するなど一定の要件をみたした場合はロースクール在学中の受験も認められるようになった。





ただ、最短の道となるのは、やはり予備試験ルートだ(図2参照)。従来どおりのローならば他学部などから未修者コースに入学した場合は最短でも8年、法学部から既修者コースに進んだ場合は最短6年で司法修習となり、司法研修所で1年間法律実務を学ぶ。司法修習後の2回試験(司法修習生考試)に合格して、ようやく法曹資格を得ることができる。





●合格率2%からは大幅に上がったが…

文系の中で「最難関」といわれ、かつての旧試は合格率2%前後の狭き門だった司法試験が、新試験に変わったのは1990年代後半の司法制度改革がきっかけだ。



当初は5年間のうちに3回までしか受けられなかったため、すべて不合格となると「三振」などといわれた。ローを修了すれば「法務博士」の学位が与えられる。やむを得ずに就職活動に繰り出す30代以上の法務博士や諦めきれずに再びローに入学する人もいた。



2015年の試験からは受験制限が緩和され、5年で5回受けることができるようになった。それでもローを経由する場合、最短で法曹資格を取得するまでに8年の年月がかかっていた。



約20年の間に、司法試験は目まぐるしく変化した。2023年は在学中受験の影響で、ロースクールの合格率は、数字上では2007年以来の4割に戻した格好だ。しかし、予備試験通過者の合格率との差は50ポイントと依然として大きい状態となっている。