2023年11月09日 09:51 弁護士ドットコム
バイト先の焼肉店の賄いとして出された「牛の生レバーの刺身」を食べたところ、食中毒になってしまい、5日間寝たきりの生活を余儀なくされたという人から、「治療費の請求をしたい」と弁護士ドットコムに相談が寄せられた。
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この賄いは、食事補助の一環として行われているもので、普段は客が加熱して食べるものだという。
焼肉店に治療費を請求した場合、法的に認められる可能性はあるのか。下大澤優弁護士に聞いた。
「まず、前提知識を整理しましょう。そもそも『牛の生レバー』を生食用として提供することは食品衛生法により禁じられています。
次に、いわゆる『まかない食』が原因で食中毒が発生し、従業員に損害が生じた場合は、労災補償の対象となり得ます(ただし、業務上の災害に該当するかが争いとなる可能性はあります)。
また、労災補償の対象外であっても、雇用主に対して不法行為等に基づく損害賠償請求をすることが考えられます」
業務の都合上、その時間帯に、店で「牛の生レバーの刺身」を生のまま食べざるをえない状況だった場合、治療費は認められるのでしょうか。
「およそ肉を加熱することが不可能な状況であるにもかかわらず、雇用主(店)があえて『牛の生レバー』を賄い食として提供した場合、事実上、『牛の生レバー』を生食用として提供したとみるべきでしょう。
そうすると、賄い食の提供自体が食品衛生法に抵触し得る行為であり、これによって食中毒が発生した場合には、雇用主が治療費等の賠償義務を負う可能性は高いといえるでしょう。
ただし、従業員としても、『牛の生レバー』が生食に適さないことは認識していたでしょうから、過失相殺によって賠償額が減少する可能性は残ります」
賄いを食べなくても済むような状況だったり、他のメニューを選択できる状況だった場合、どうなのでしょうか。
「先の例と同じく、雇用主が『牛の生レバー』を生食用として提供した事実は前提として変わらないでしょう。
ただ、そもそも賄いを食べなくても済むような状況だったり、他のメニューを選択できる状況だった場合、提供された『牛の生レバー』を食したことについて、従業員の責任がより問われることになるでしょう。
『牛の生レバー』を生食用として提供した雇用主側の責任が全面的に否定されることは考えにくいですが、先の例に比べ、過失相殺によって賠償額が大幅に減少してしまう可能性があります」
【取材協力弁護士】
下大澤 優(しもおおさわ・ゆう)弁護士
2012年司法試験合格、2014年に弁護士登録。勤務弁護士を経て2016年に定禅寺通り法律事務所(仙台市)を開設。離婚・男女関係のトラブル(婚約破棄等)に注力している。
WEBサイト:https://sendai-rikon.com/
事務所名:定禅寺通り法律事務所
事務所URL:https://sendai-rikon.com/