2023年11月07日 09:50 弁護士ドットコム
自治体が設けた広場のギンナンを回収するのはダメなのでしょうか——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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イチョウ並木のある市街地などでは、木から落ちたギンナンが歩道を埋め尽くす光景は秋の風物詩です。「秋の味覚」であるギンナンを拾って食べたいということかもしれません。
秋は、ギンナン以外にも柿や栗などの美味しい実がたくさん付く季節です。食べたくなる気持ちはわかりますが、広場や歩道などに落ちている木の実を勝手に回収していいのでしょうか。新保英毅弁護士に聞きました。
——落ちているギンナンは法的にどう扱われるのでしょうか。
ギンナンなどの木の実は、法的には「天然果実」に該当します(民法89条1項)。
同条は「天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する」と定めています。つまり、落ちた木の実を取ることができるのは、その木の所有者ということになります。
自治体の広場や歩道の木は通常、自治体が所有していますので、落ちた木の実も木の所有者である自治体が所有していることになります。
——落ちているギンナンを勝手に回収したら犯罪になるのでしょうか。
前提として、他人が所有する「木についた状態」の実を採る行為は窃盗罪(刑法235条)に当たります。
「落ちた」実を回収する行為については、自治体の広場や公道に落ちた木の実は通常、所有者である自治体の「占有」が及んでいないと考えられます。占有が及んでいない他人の所有物を無断で持ち去ることは、占有離脱物横領罪(刑法254条)に当たる可能性があります。
ただし、自治体が落ちた木の実の利用をまったく考えず、清掃時に廃棄しているような場合は、自治体が木の実の所有権を放棄していると評価でき、犯罪にはなりません。
——私有地に落ちている場合はどうでしょうか。
私有地の木の実については、その土地の所有者の占有が及んでいることが多く、これを無断で持ち去ることは窃盗罪に当たるでしょう。
【取材協力弁護士】
新保 英毅(しんぼ・ひでたか)弁護士
2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。
事務所名:新保法律事務所
事務所URL:http://shinbo-law.com/