全国で相次ぐクマ被害。東京の多摩地域、さらに八王子市や町田市でもクマの目撃例が相次ぎ話題となっている。東京でもクマに襲われる可能性があるという状況を地域の人たちはどう捉えているのか。（文：昼間たかし）
クマ出没情報で増えたのは報道陣
もともと東京はクマの生息地である。多摩地域の森林にはツキノワグマが暮らしており、東京都環境省のサイトでは東京を「世界的にも珍しいクマが生息している首都」としている。しかし、その数は決して多くなく、クマを目撃したことがあるという人は極めて少ない。奥多摩町に暮らす40代の男性に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「もともとクマ出没情報が多いところなので、普段から気にしてますよ。今年は、市街地にクマで出てくることが多くて騒がれているみたいですけど、こちらではクマは普段から近くに住んでいるので気をつけなければならないものです」
普段からクマの存在を意識しているためか、新たにしている対策は今のところはないという。
「これまでも、農家の畑や収穫物が荒らされる被害があったため、外に食べ物や生ゴミを置かないといった対策はごく当たり前に行われていました。ただ、これはクマを意識してというよりは、ほかの動物に荒らされることを考えてのものだったんです。もっとも、これだけ報道されると、もっと気をつけないといけないかなと思わないこともありません」
ちなみに男性によれば「最近増えているのは、クマよりもクマのことを取材している報道陣です」とのことだ。
人間がクマに勝てるはずがないでしょう
とはいえ今年のクマ被害が深刻なのは、食べ物を求めてクマが市街地にも出没するようになっていることだ。そのため東京では八王子市や町田市でもクマの目撃情報が相次いでいる。その地域の人たちはクマを恐れているのだろうか。町田市の中心部に住む男性に聞いてみると……。
「町田市でもクマが出たという報道を見て驚きましたけど、よくよく見ると出没したのは、高尾山の近くにある草戸山のハイキングコースだというじゃないですか。さすがに市街地でクマが出るんじゃないかと恐れている人はいませんよ」
やっぱり「クマは山のなかにいるもの」という意識らしい。
「ただ、会社とかで『クマ大丈夫？』と聞かれることは増えましたね。自宅は町田駅から徒歩10分でなんですけどね。きっと八王子の人とかも同じようなことを聞かれているんじゃないんですか？」
ちなみに、これまで「自分ならクマとこう戦う」というネタを振ってきた人は3人いたという。
「自分も登山を趣味にしているんですが、クマの糞を見ただけでも、恐ろしくなって即効で下山しましたよ。フツーに考えて、人間がクマに勝てるはずがないでしょう」
クマの出没は、あらぬところで諍いのタネにもなっているようだ。
