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丸パクリ!? 採用選考でデザイン提出するも不採用→「翌年、そのままのデザインで販売されていた」女性の怒り

2023年11月06日 06:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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採用面接で落とされたのに、持ち込んだデザイン案がそのまま商品になっていたら許せないだろう。関東在住の50代女性は、かつて某大手メーカーの面接を受け、そんな信じられない目に遭った経験がある。

「数度、無償でデザイン提案までさせられた挙句、最終面接で不採用になりました。ところが翌年、私がデザインした商品5点がそのままのデザインで販売されていました。もちろんデザイン料も支払われていません」

それは今から20年ほど前のこと。女性は40歳だった。面接は4か月に渡って3度行われた。編集部では女性に詳しく話を聞いた。

「私の目の前でサンドイッチを食べ始めました」

「初回から面接した事業部のデザイン担当課長さんは、『是非採用したい、自分の中ではほぼ確約』と言っていたし、同社のデザイナー数名とも一度会い、『これから一緒に仕事しましょう』と会食もしたので、私は期待していました」

それまで順調に進んでいた面接は最終の事業部長面接までこぎつけた。面接官は女性を採用したいと言っていた課長と事業部長の男性2人だった。ところが、いざ面接が始まると信じられない対応が待っていた。

「少し遅れて来た事業部長が、私の目の前でサンドイッチを食べ始めました。スーツを着て緊張し面接に臨んでいた私には非常に失礼な印象で、『へー、で、今まで何してきたの?』と口をもぐもぐさせながら馬鹿にしたような口調で問われました。その様子を見ただけで、『これは不採用だな、課長に請われ仕方ないから面接してるんだな』という印象がありありと出ていました」

失礼な面接の結果は、「しばらくして不採用の連絡が課長さんからきて、課長さんは本当に申し訳なさそうでした」と入社は叶わなかった。

ちなみに、採用活動中に会社に提出したデザイン案の商品は「いわゆる建材」だと教えてくれた。

「住宅建材商品なので工務店、施工業者、代理店に1000個でいくらという販売方法で売ります。金額は何個買ってくれたかで変わります。ちなみにカタログに載っている価格が目安ですが、それの半額程が実際の売価です。1つ10万円ぐらいでしょうか」

これを、面接期間の数ヶ月で10点ほどデザインした。デザイン料だけ取るとすれば値段はいくらか聞いてみると

「初めのアイディア提案だけで最低でも1点10万円、その後、素材、構造まで含めるなら1点30万円」

とのことだった。10点なら普通、100万円~300万円にものぼる価値の仕事だったのだ。

建材のカタログを見ていたら「私がデザインしたそのものの商品」

自分がデザインした建材が販売されていると知ったのは、それから半年後のことだった。

「もともと内装設計系のデザイン提案の仕事もしていたので、偶然、建材の代理店でカタログを見ていたら、私がデザインしたそのものの商品が同社の製品カタログに載っていました。とっても驚きました。普通に外注すれば100万は払わねばならない提案を、採用面接で得たからと勝手に使うなんて、とても大企業のやることとは思えませんでした」

あまりのことに苦笑いで語ったが、笑うどころではない話だ。

「それに、商品化できるぐらいのデザインをしたのになぜ不採用だったのかと。事業部長の物言いからして私が女性だからだろうなと直感しました」

と振り返る。

女性はこの件について相手企業を訴えるなどしなかった。理由は、自身が男女雇用機会均等法施行後の1986年に就職した世代であることが関係しているという。

美大で工業デザインを専攻した女性は卒業後、住宅・設備関連の大手電機メーカーのデザイン部に総合職として入社した。「当時、工業デザインを生業としている女性は大企業にもほとんどおらず、非常にレアな存在」だったという。そんな中、

「均等法のお陰で男性と同等の総合職と言われ入社したものの、結婚したら女性は泣く泣く辞めねばならない時代でした。男性には出ていた住宅手当などもなく残業代もカットされながら毎月100時間を超える残業をし、成果を残していてもです。だから『またか』という思いが強く、特に訴えたりはしませんでした。当時は他企業も似たような状況でしたからね」

日本中の企業が似たような状況で、「訴えても無駄だ」と思ったからだった。それから20年経ったが、女性はいまも状況はそんなに変わっていないと感じている。

「ジャンダーギャップ指数が124位だけあって、現在も日本企業の男尊女卑は酷いと感じています。特に理系。私が見ている限り、40歳以上の女性のエンジニアやデザイナーは、どの大企業にもほぼ居ませんし、いても本当に少数です。2000年頃までは採用しても結婚、出産したら辞めるように促されました。

仮に会社に残って、男性と同様に一級建築士の資格や賞を取っても、女性は社内で認められなかったのです。それが虚しくなり辞めていく超優秀な大卒院卒女性のなんと多いことか。能力ある女性を『女性』という理由で、不当に低く扱い評価しないのが日本企業。だから日本は成長しないのですよ」