2023年11月03日 08:40 弁護士ドットコム
学習塾で講師が生徒を盗撮したり、学校で男子生徒が女子生徒を盗撮したりするなど、悪質な盗撮事件が相次いでいます。これまで各都道府県の迷惑行為防止条例に委ねられていましたが、条例適用のハードルが高いことや、条例では対応しきれない行為が多発していたため、今年(2023年)7月に「撮影罪」(性的姿態等撮影罪)が施行され、各条例によるバラバラの判断基準ではなく、統一的に取り締まることになります。
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盗撮行為そのものだけでなく、盗撮未遂や盗撮画像の提供、保管にも処罰の範囲が広がりました。一方で、ユニホーム姿のアスリートの胸部や臀部を撮影する、いわゆる「アスリート盗撮」は規制の対象外となり、疑問の声もあがっています。
弁護士ドットコムでは、盗撮の当事者(被害者・加害者)をはじめ、ひろく盗撮についての意識調査(期間:9月6日~9月11日)を行い、全国の974名から回答が寄せられました。盗撮をされた、盗撮されたのではないかと感じたことが「ある」人が、25.3%にのぼりました。
アンケートではまず、7月13日に施行された「撮影罪」(性的姿態等撮影罪)の認知度を尋ねました。結果は、「知っていた」が38.1%、「知らなかった」が61.9%となり、法改正が認知されていない実態が浮き彫りになりました。
撮影罪では、アスリートの盗撮(競技中のアスリートの股間等を盗撮すること)は処罰の対象外となりましが、アスリートの盗撮を含めるべきかを尋ねたところ、「入れるべき」が62.0%、「どちらともいえない」が29.9%、「入れるべきではない」が8.1%となりました。
アスリートの盗撮を撮影罪に含めるべきかを尋ねたところ、以下の声が寄せられました。
【入れるべき派の意見】
「新体操をしていた10代の時、どう見ても怪しい男性が撮影していて非常に不快だった。未成年者は大人に強く言えないし、その場で証拠を押さえることもできない。アスリートを守ることは大変重要だと思う」(30代・女性)
「被害者サイドで考えると、アスリートのメンタル面で非常に影響を及ぼすと思う。競技中のフォーム悪化や調子の悪さなど、アスリートの競技結果に悪影響になる可能性が高い。この問題を放置すると、国際的な大会を日本で開催する場合、国際問題になりかねないと思う」(30代・女性)
【どちらともいえない派の意見】
「線引きが難しいと思います。結局悪質な撮影者に対して何もできないような形に落ち着くか、正当に仕事をしている人に迷惑をかけるだけのどちらかだと思います」(30代・男性)
「撮影を仕事としていますが、使うレンズや切り抜き、使用方法によって撮影者が意図せずとも盗撮の罪を課せられてしまう可能性を感じ、恐ろしさを感じます。一方で、性的な意図で撮影され、YouTube等の消費コンテンツになってしまっている部分もあるので、撮影者、コンテンツクリエーター、競技者間でより慎重な議論が必要と感じます」(40代・男性)
【入れるべきではない派の意見】
「アスリートは守られるべきだと思うし、アスリート側が嫌がることは絶対してはならないという前提ではあるが、その一方で撮影者の自由も担保されるべきだと思う。『どこからが局部でどこからが局部ではない』といった、取り締まり側の曖昧な基準によっていちいち連行されていては保護者もカメラマンもたまったものではないと思う。動きの速いスポーツという性質上、連写することもあるのでそういった写真が紛れ込むのは、ほぼほぼ必然であり、処罰の対象としてはふさわしくないと感じる」(30代・男性)
「処罰範囲が不明確になる恐れが高い。カメラの持ち込みを制限するなど、主催者が対応できる事も多くある」(20代・男性)
これまでに盗撮をしたことが「ある」かを尋ねたところ、あるが3.3%、ないが96.7%となりました。
盗撮をしたことが「ある」人に、盗撮した場所を尋ねたところ(複数回答)、スーパーやショッピングモールなどの商業施設が37.5%、電車やバス、タクシーの中が34.4%、駅が31.3%と人が多く集まる場所が上位を占めました。
その他の回答には、「陸上競技場」、「風俗店」、「ラブホテル」などがありました。
盗撮をしたことが「ある」人に、盗撮をしたきっかけについて尋ねたところ(複数回答)、欲望を満たすためが37.5%、スリルを味わうためが21.9%、ストレス発散のためが18.8%、魔がさしたが15.6%、優越感を得るため、販売するため、盗撮仲間に見せるためがそれぞれ3.1%となりました。
盗撮を「した」ことについて、経験談が寄せられました。
「最初は、被害者にバレなければ盗撮はいいだろうという勝手な考えから始まり、そのうちどんどんエスカレートしていき、盗撮した画像よりも盗撮する行為にスリルを求めて行うようになっていた。逮捕され専門病院で依存症治療を受けて、現在は過去の反省をし、2度と繰り返さない決意を持って生活している」(40代・男性)
「10年以上前、友人が風呂に入る際に、自宅にカメラを仕込んで脱衣を撮影した。その後、罪悪感で動画はすぐ削除した。当時は色々なことで精神的に追い込まれており、奇行が目立っている旨を指摘されていた」(30代・男性)
「海外のジムはノーブラなのでエロいです。しかも撮りやすいw」(20代・男性)
「他人の敷地(アパートのベランダ)に入り、窓の隙間から撮影してるところを、住人にバレて逮捕されたことがある」(30代・男性)
「あんまり性的欲求というよりは鍛えられた女性の足腰や速いタイムで走る足の筋肉の付き方が好きだった」(60代・男性)
「同居の義理の妹の入浴前後(を盗撮した)」(40代・男性)
一方、これまでに盗撮を「された」、あるいは「盗撮されたのではないか」と感じたことがあるかを尋ねたところ、「ある」が25.3%、「ない」が74.7%となりました。
男女別では以下の結果となりました。女性では「ある」が44.0%、「ない」が56.0%となり、半数近くが盗撮被害の経験者であることがわかりました。
盗撮された人に、盗撮にどのように気がついたかを尋ねたところ、不自然な「動き」があったので自分で気がついたが66.3%、不自然な「器具、機械」があったので、自分で気がついたが22.8%、周囲の人が気がついた12.6 %、警察から教えられた1.2%、その他19.9%と続きました。
多くの人が、周囲の人からの指摘ではなく、自身で違和感を感じて盗撮に気がつくという実態が明らかになりました。
その他の回答には、「シャッター音がした」、「スマホのカメラが向いていた」「ウェブに掲載されていたのを知り合いが教えてくれた」「数十年前の事です。当時は電話帳に住所氏名や電話番号が載っていたので、盗撮した人から電話がかかってきた。その人とデートしなければ写真をバラまくと脅された」などの回答がありました。
盗撮されていることにすぐに気がつく場合もあれば、後日、盗撮した画像や動画をウェブに掲載されたり、脅迫によって知ることもあるようです。
後編では、盗撮にまつわるエピソードや予防策についてみなさんの声を紹介します。