テクニカルディレクターのオリビエ・ジャンソニーによると、プジョーは2024年のWEC世界耐久選手権シーズンに向けてル・マン・ハイパーカーをアップデートするため、「かなり多くの異なるコンセプト」を検討しているという。
プジョー・トタルエナジーズは2023年のWECハイパーカークラスに2台の“ウイングレス”ハイパーカー、プジョー9X8を投入しているが、表彰台獲得は第5戦モンツァの1度のみ。セブリング・インターナショナル・レースウェイや富士スピードウェイなど他のサーキットでは厳しい状況に陥り、とりわけ低速コーナーでのトラクションに苦戦してきた。
富士での第6戦からプジョー9X8は、BoP(性能調整)変更によりドライ路面におけるハイブリッド展開開始速度が135km/hへと緩和されたものの、このレースでも7位と8位に終わっている。
ジャンソニーは11月2~4日にバーレーンで行われる最終戦に先立ち、9X8の大幅な改良について検討している、と記者団に語った。
プジョーがリヤウイングの導入を検討しているという報道もされるなか、ジャンソニーは次のように述べている。
「我々は来年に向けて、あらゆるコンセプトを検討している」
「我々は非常に多くの、異なるコンセプトを評価・検討してきた。来年はもっと良い順位を目指すことが目標であり、何事にもオープンな立場で見ていきたい」
「さらに良い順位を獲得するために必要なことは、何でもしようとしている。開発の手を止めたことはない」
「我々は、新しいホモロゲーションに関して何をもたらすことができるかを楽しみにしている」
リヤウイングの追加は、9X8への大幅な変更を意味する。現在の9X8は、ボディ下面からダウンフォースを生成することに依存するという、おそらくハイパーカークラスで最も急進的なデザインを備えている。
しかし、ジャンソニーはリヤウイングの採用が検討されているかどうかについては、明言を避けた。来年のプジョー9X8は大きく変わって見えるのかとの質問に、彼は次のように答えている。
「それは可能だ。それは明らかに、我々が提示しているジョーカーの一部だ」
■“ジョーカー”を最大限に活用する可能性も
ハイパーカーメーカーは、技術規定では『EVOジョーカー』と呼ばれる、パフォーマンス上の理由から限られた数の技術アップデートを行うことが許されている。信頼性を高めるためなら、さらに変更を加えることもできる。
許可される5つのジョーカーのうちのひとつとみなされるかどうかは、FIAおよびACOとの対話によって決定される。 メーカーが新たにホモロゲーションを取得した数に関係なく、ジョーカーの許容量は2021年1月から2027年12月まで5つのままとなっている。
ジャンソニーは、プジョーが来季のアップグレードにジョーカー枠を最大限に活用するつもりかどうかについては直接言及しなかったが、そのような変更には時間がかかることを認めた。
同氏は、プジョーが潜在的なアップデートに関して、パフォーマンス関連のジョーカーや信頼性アップデートの構成要素について、オーガナイザー側と「まだ議論している」と付け加えた。
「ジョーカーを最大限に活用したい場合は、非常に時間がかかる」とジャンソニー。
「最大限の成果を上げようとするなら、時間をかけてものごとを適切に行うことが重要だ。だが、永遠に待つことができないのも確かだ」
「できるだけ早くレーストラックに投入するために開発を急ごうとしているが、同時にジョーカーを簡単に消費しすぎないようにして、ジョーカーを最大限に活用するよう努める必要がある。我々は常に妥協の中にいるのだ。 実際のところ、それは紙一重だ」