2023年11月01日 11:01 弁護士ドットコム
アツアツの鉄板の上で、ハンバーグがジュージューと音を立てるところを想像してほしい。今にもよだれが出そうな光景だろう。
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浮き沈みの激しい飲食業界だが、焼き立てのハンバーグやステーキを鉄板や鉄皿で提供する店は、一般論として人気である。しかし、トラブルもあるようだ。
鉄板から飛びはねた油で洋服が汚れたという客が、店側にクリーニング代を要求する――。そんな事例が弁護士ドットコムにも寄せられている。
客側は、紙エプロンが出る前に汚れたと主張しているらしく、店側は、たしかに油汚れは確認できたが、いつの時点で飛びはねたかわからないと考えているようだ。
はたして、このような油ハネの場合、クリーニング代はどうなるだろうか。杉浦智彦弁護士に聞いた。
飲食店が注意を怠ったことによって、客の携行品が滅失・損傷した場合、店側は損害賠償責任を負うことになります。ただし、この責任を追及するためには、客側が、店の不注意によって服が汚れたことを立証しなければなりません。
今回のケースで、店の不注意として考えられるのは、「油ハネがある可能性があるのに、それを警告しなかった」とか「紙エプロンを早めに渡すべきだったのに渡さなかった」とか、そういう事情だと思われます。
もちろん前提として、油ハネがこの店で発生したことを立証できればということではありますが、たとえばハンバーグが来たあとに紙エプロンを渡したなどの事情があれば、損害賠償責任が認められる可能性はあるでしょう。
そして、この責任にも「過失相殺」が認められるところです。今回のケースのように、鉄板が使われる飲食店であれば、油ハネは予想できるでしょうし、客自身も回避する必要が認められるところでしょう。そのような部分があるため、一定程度の減額も考えられるのではないでしょうか。
ここまでが法律的な話になりますが、悪質なクレーマーによる口コミ被害も増える中で、店側がそれを防止する観点で、早期解決が望ましいのも間違いありません。店側としては、通常想定されるクリーニング代を負担したり、替えの洋服を用意するなどの対応が、危機管理として望まれるでしょう。
【取材協力弁護士】
杉浦 智彦(すぎうら・ともひこ)弁護士
神奈川県弁護士会所属。刑事弁護と中小企業法務を専門的に取り扱う。刑事事件では、特に身柄の早期解放に定評がある。日本弁護士連合会中小企業法律支援センター事務局員としても活躍。
事務所名:弁護士法人横浜パートナー法律事務所
事務所URL:http://www.ypartner.com/