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コンビニの自転車置き場に「無断駐輪」したら撤去された!勝手に移動した店員も悪い?

2023年11月01日 10:11  弁護士ドットコム

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客ではないにもかかわらず、コンビニの自転車置き場に勝手に駐輪する人たちがいる。弁護士ドットコムにも、学校に行くために自転車を利用し、近くのコンビニに停める友人がいるとの投稿が寄せられている。


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投稿者によると、この友人の自転車は、店員が歩道に移動したため、そのまま撤去されてしまったという。結局、保管所でみつかり、処理手数料を払うことになったようだ。



店側からすれば「迷惑駐輪」だが、店員が勝手に移動してもよいのだろうか。坂口靖弁護士に聞いた。



●罪に問われる可能性は「極めて稀」

ーー駐輪した自転車を勝手に歩道に移動させた店員の行為は、なんらかの犯罪にあたるのでしょうか。



一般的に、所有者に無断で自転車を移動させる行為は、器物損壊罪や窃盗罪、占有離脱物横領罪にあたる可能性があると指摘されています。



しかし、今回のケースのようにコンビニの自転車置き場から敷地外にある近くの歩道に移動した場合には、かならずしも自転車の効用を害するとはいえないため、器物損壊罪が成立するのは極めて稀であるように思われます。同様に、不法領得の意思等も認められないため、窃盗罪が成立するのも稀といえるでしょう。



また、違法駐輪された自転車を撤去する目的での行為を考えると、実際に刑事処罰を受ける可能性は限りなく低いといえます。



ただし、一見してどこにあるのかわからない遠方に自転車を移動した場合には、器物損壊などの罪に問われる可能性はあるでしょう。また、歩道に移動させたことで、自動車が衝突するなどして損壊したり、何らかの損害が発生したりした場合には、民事上の不法行為責任を問われる可能性はあるかもしれません。



ーー不法行為責任を問われた場合には、どうなるのでしょうか。



今回のケースでは、店員が移動したために自転車が撤去され、処理費用が発生しています。同費用の損害賠償責任を負担しなければならなくなる可能性があります。



ただし、無断駐輪の事実をもって過失相殺されることも考えられます。当然、無断駐輪をした人も民事上の不法行為責任を負うことになるので、近隣の駐輪場を使用した場合と同等の使用料相当額の損害賠償責任を負います。この使用料相当額の損害賠償請求と相殺できる可能性があるでしょう。



いずれにせよ金額は極めて低額にとどまります。訴訟で支払いを求めるのは現実的とはいえませんし、実際に損害賠償金を支払う必要が生じることは少ないように思われます。



店員にとっては、このようなトラブルに巻き込まれるだけでも負担になります。警察に連絡し、指示に従って処理したほうが安全です。無断駐輪されている自転車があったとしても、勝手に移動させることは極力控えたほうがよいでしょう。




【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」 <https://youtube.owacon.moe/channel/UC0Bjqcnpn5ANmDlijqmxYBA> も更新中。
事務所名:プロスペクト法律事務所
事務所URL:https://prospect-japan.law/