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「スロットルが戻らなくて」「リヤがスナップした」「まだ60%も出せていない」【SF Mix Voices 第8戦】

2023年10月28日 20:10  AUTOSPORT web

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スーパーフォーミュラ第8戦鈴鹿 スタート直後の1~2コーナーの様子
 10月28日、三重県の鈴鹿サーキットで全日本スーパーフォーミュラ選手権2023年第8戦の予選・決勝が行われ、野尻智紀(TEAM MUGEN)がポールポジションから優勝を飾った。

 レースは130Rでの大クラッシュの影響により赤旗終了、3周終了時点の順位が正式結果となり、ハーフポイントが与えられることになった。

 決勝後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、波乱の第8戦に挑んだドライバーたちの声をお届けする。

■佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING) 予選11番手/決勝10位

 午前中の予選Q1では、A組を5番手で突破した佐藤。Q2ではさらなるパフォーマンスアップを目指したというが、施した調整が裏目に出てしまう。

「Q1では結構いい感触を得ていて、そこからQ2へ向けアジャストしていったのですが、思ったよりも難しいクルマになってしまい、それがミスにつながってしまいました」

「より曲がる方向にセット変更していったところ、オーバーステアになりすぎてしまい、デグナーを過ぎたところでリヤがスナップしてしまって、外に飛び出る形になってしまいました」

 佐藤によればQ1でもマシンはそれほど悪いわけではなかったという。ただ、想定していたよりもコンディションが上がらなかったことで、結果的にセットアップ調整を“やりすぎた”形になってしまったようだ。

「(1分)36秒台の予選Q2になると思ったのでそういったアジャストをしたのですが、思ったよりも来なかったですね」と佐藤。

「もうちょっとコントロールしていけばよかったんですけど……やっぱりタイムを出しに行っていたので、ああいった形になってしまいました。セクター1でもだいぶリヤが薄くて怖い状況でした」

 Q2終盤、各車がアタック中というタイミングではあったが、これにより赤旗が提示されることに。赤旗原因車両となった佐藤は、Q2進出車両の最後尾グリッドから決勝レースをスタートすることとなった。

「ポテンシャルはあると思うので、明日に向けてはいい材料になったかなと思います。決勝に関しては、1周目に2台抜けてポイントを獲得できたのはよかったです。ただ、少しペースには不満が残るところだったので、そこは明日に向けて分析を進めたいですね」

■福住仁嶺(ThreeBond Racing) 予選12番手/決勝9位

 金曜日のフリー走行を11番手で終えていた福住は、予選のQ1・B組を6番手で通過。しかし、進出したQ2の終盤では、デグナーでコースオフしてしまう。

「スロットルが戻らなくなるトラブルが出てしまった」と福住は説明する。

「デグナーひとつめでかなり怖かったですが、なんとか接触することもなく、素早くエンジンを切ることができたこともあって、大事には至りませんでした。赤旗が出た直後だったので、また波乱が起きるだろうなと考え、少しでも良い順位を狙っていたのですが……」

「(デグナー)1個目に入ったときに戻らなくて、ずっと全開状態のところにアクセルが張り付いてしまって。ヤバかったですね。ブレーキ踏んでも絶対に止まれないから、そこでIG(イグニッション)を切ったんです。怖かったですね」

 幸いクルマ自体にはダメージがなく、決勝にも出走することができた。

「スタートでふたつポジションを上げることはできましたが、すぐに今回も厳しいなと感じました。そして、ああいう事故でレースが終わってしまって……。明日のためにも走っておきたかったという部分はありますが、(クラッシュした)全員がなんとか無事だったということで、そこはひと安心かなと思います」

■松下信治(B-Max Racing Team) 予選10番手/決勝13位

 予選ではQ1・A組を6番手で通過した松下は「予選はすごい良くて。ただ、(Q2で)赤旗入っちゃったのが残念でしたね。ニュータイヤを履いた人たちと履いてない人たちが分かれて……僕らは履いてなかったので、そこはちょっと失敗かなと思いますけど。まぁ、明日もう1回あるので」と振り返る。

 とはいえ10番手スタートということで、決勝では今季初となるポイント獲得にも期待が高まった。

「決勝はスタートでちょっと仁嶺と当たって、少しダメージがあったかな。そのあとの後半のレースで追い上げるつもりだったんですけど……」と好走の手応えがあったと語る松下は「(笹原)右京と(大津)弘樹が大丈夫そうならいいのですが」と大クラッシュを喫したふたりを心配していた。

 既報のとおり、前戦のクラッシュによりモノコックとエンジンを交換して最終2戦に臨んでいる松下。実質のシェイクダウンとなった金曜フリー走行と比べると、徐々にマシンを手の内にできているようだ。

「なんか、やっぱり素直になった感じはありますね。セットを変更したときに、クルマが変わる(反応する)感じはありました。ただ、予選の赤旗後にニュー履けばよかったんですが、そこでちょっと判断ミスしてしまって。明日また切り替えて頑張ります」

■大草りき(TGM Grand Prix) 予選17番手/決勝18位

 5日前の月曜日に突然第8戦&第9戦出場の打診を受け、急ピッチでスーパーフォーミュラデビューの準備を進めながらレース当日を迎えた大草。

 金曜日に行われた専有走行では、SF初走行ながらもチームメイトのジェム・ブリュックバシェを上回るタイムを記録し注目を集めていた。

 決勝レースは5周もしないうちに終了となってしまったが、ドライビングについて大草は、「まだ60パーセントの実力も出せていないような感覚」だという。

「この次元のタイムで走ったことが無かったので、出し切ることができなかったというのが正直な感想です。なので第8戦の決勝レースを通してマシンに慣れて、第9戦で100パーセントを出すという作戦だったのですが……(苦笑)」

 まだまだマシンに慣れ切っていないため、自分の力を出せていないと語る大草。しかし、午前中に行われた公式予選Q1・B組の走行では、野尻智紀(TEAM MUGEN)や宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)など並みいる猛者を退け、セクター2の全体ベストタイムを記録して速さの片鱗を見せた。

「どのセクターもまとめることができれば、セクター2のようなタイムが出せると感じています。(コーナーへの)飛び込みのスピードとかはまだ足りていないなと感じるので、他のセクターでもうまく走れるかが明日の課題だと思います」

「クルマ自体にもそのレベルのポテンシャルがあると思っています。なので本当に、僕にかかっているんです(笑)」

 初めてのスーパーフォーミュラのレースウイークに奮闘している様子の大草。早々に終わってしまった決勝レースでも、ライバルの走りを間近に見ることで得た感覚もあるといい、明日の第9戦では予選から“前日越え”を狙ってくることだろう。

■関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 予選20番手/決勝12位

 今シーズンもいよいよ最終戦を迎えたが、これまで7戦を終えてノーポイントと悔しいシーズンを過ごしている関口。ポイント獲得の最後のチャンスを掴むべくこの第8戦&第9戦鈴鹿に臨んだが、午前中の予選ではトップとの差に「ビックリしました」と語る。

「予選は、走り自体はミスもなくまとめることができたと感じています」

「ですが、順位も悪いしトップとのタイム差もすごくて……ビックリしています」

 走りとしてはまとめることができた一方、マシンを作ることができなかったと語る関口だが、迎えた決勝レースでは早い段階からポジションアップを果たし、8台をパスして12位を手にした。

 マシンのフィーリングは「良いとまではいかないですけれど、普通と言えるレベルまでは上げられたかな」という。

「トップの2台みたいなタイムは見えてこないですが、自分のウリでもある混戦のなかでのサバイバル能力を出すことはできたと思います」

 トップまで追い上げられた可能性は無いとも口にするが、「シングルポジションなら多分いけた」と語る声色は、希望を感じているようにも聞こえた。明日の最終戦こそ、今季初ポイント獲得に期待がかかる。