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ADHDの18歳女性が「ホスト被害」、親代わりも「支援センター」の餌食に…自己責任で済ませていいのか

2023年10月26日 10:31  弁護士ドットコム

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若い女性が多額の「売掛」を抱え、支払いのために風俗店勤務に追い込まれる「悪質ホスト問題」。被害にあう人は、東京・歌舞伎町に限らず、地方にも広がっている。さらに解決を難しくしているのが、適切な支援先が見つからず、二次的な「詐欺」も起きることだ。解決に奔走する親代わりの女性がなめた苦労を報告する。(ジャーナリスト・富岡悠希)


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●もともとインドア派の出かける頻度が急に増えた

西日本に住むアヤコさん(60代・仮名)は今年3月、同居していたミホさん(当時18・仮名)がホスト通いをしていることに気が付いた。ミホさんの部屋で、ホストクラブの店舗カードやホストの名刺など約20枚を見つけた。



中にはハートマーク付きで「婚姻届」「夫になる人(ホスト名)」「妻になる人(空欄)」のような、「気持ち悪い名刺」(アヤコさん)もあった。



ミホさんが持っているスマホ代は、アヤコさんが支払っている。全地球測位システム(GPS)で、ミホさんがどこにいるかという位置情報をアヤコさんは共有できる。



ホスト通いに気付く少し前から、ミホさんは自宅から車で数十分離れた県庁所在地の都市に週1回ほど出かけるようになっていた。ミホさんは、もともとインドア派。出かける頻度が急に増えたことや出かける服装から、今までとは違った様子をアヤコさんは直感で感じた。



普段はほぼ見ないGPSの記録をたどったところ、ある系列のホストクラブを転々としていた。



●デリヘルやパパ活をはじめるようになっていた

ミホさんは、発達障害のADHD(注意欠陥・多動症)などの診断を受けている。アヤコさんによると、ミホさんは「顔の表情を読み取るのが苦手なためか、見た目が良い美形男子に惹かれやすい」という。



さらに諸事情により両親と暮らせなかった。発達障害の相談に乗ってもらっていた医師からは、「男性依存」になる可能性を指摘されていた。



長い間アルバイトして、コツコツ貯めたお金もすぐになくなり、ミホさんはまずはメンズエステ(メンエス)で働き始めた。さらにその後、デリバリーヘルス(デリヘル)勤務に。さらに「パパ活」にも手を出しているようだった。



「すぐにどうにかしないと手遅れになる」。アヤコさんは、ミホさんのGPS履歴を見ながら焦った。



●弱みにつけ込んだ「ビジネス」の被害にもあった

アヤコさんは、まずは弁護士を頼ることにした。県内で3人に会い、東京の弁護士にも相談に出かけたが、「具体的な売掛の減額交渉でないと動けない」と言われた。



警察にも行ったが、「具体的な法律違反行為がないと手出しができない」。ミホさんはホストクラブに行ったあと、午前3時ごろに帰宅していた。「ホストクラブが法律で決まった時間を過ぎて営業している可能性がある」と指摘したが、警察は関心を示さなかった。



県の性暴力センターや女性支援センター、発達障害者支援センターもダメ。18歳未満のうちは、やり取りをしてくれた児童相談所も「18歳になっていますから」と突き放した。恐らく20件以上、思いつく限りの相談先に足を運んだが、どこも頼りにならなかった。



公的機関に見放されたと感じたアヤコさんは、ネットで探した「民間支援団体」を頼った。



まず関東で宿泊施設を持つ、とある「自立支援センター」に相談した。すると、ミホさんを連れて行く前、山里にある人目のつかない別の団体を経由して欲しいと言われた。ホストが同センターまで追いかけてきて、連れ去ってしまうことがあるからだという。



施設の体験も兼ねて向かった先のその団体の幹部は、「ミホさんの前に、アヤコさんがまずは元気になる必要がある」。かなり強引に施設に引き留められ、当初2、3日の予定だったのが、1カ月ほど外部との接触を一切禁止された。



「このままでは自分の心身が壊れる」。そう判断して、1カ月ほどで嘘をついて逃げ出した。しかし、当初前払いと言われて支払った数百万円のお金は戻ってこなかった。一連の経緯を冷静になったアヤコさんは、次のように振り返る。



「『弱みビジネス』に騙し取られてしまった。公的機関に頼れず、精神的に追い込まれたところをつけ込まれた」



●「ビジネスではなく、単なる搾取だ」

先月、発達障害の相談をしてきた医師から、今年7月に設立された「青少年を守る父母の連絡協議会」(略称:青母連/せいぼれん)を教えてもらった。東京・歌舞伎町に事務所を構える公益社団法人「日本駆け込み寺」内にできた団体だ。



同法人の前代表で、現理事の玄秀盛さん(67)をたずねるため上京した。それまでは誰も力になってくれなかったどころか、お金まで無駄に支払ってしまった。ところが、玄さんの対応は違ったという。「ミホさんがその気になれば、ホストへの売掛は交渉できる」「ともかく、ミホさんとの連絡を維持できるようにしましょう」「今後は一緒に考えて力になりますから、何かあったらいつでも連絡下さい」



助言が的確なうえ、無料だった。今月、青母連の第1回保護者会があるとの連絡を受け、開催日の早朝、夜行バスで駆け付けた。他の被害者とも繋がり、苦しみをいくらかは共有できた。



今、アヤコさんは、住まいの地域でも、青母連の支部を立ち上げたいと考えている。悪質ホストの問題は、歌舞伎町に限らず、全国に広がっているからだ。



また、玄さんが進めようとしている、25歳以下の「青少年」に対する「売掛禁止条例」に全面的に協力するつもりだ。ミホさんが明かさないことから、アヤコさんはホストやホストクラブへの売掛がいくらになっているか把握できていない。



しかし、2022年4月の民法改正で成人が18歳になる以前だったら、ミホさんは「救えた」という思いがある。そして次のように訴える。



「これだけ若い女性の被害者がいるのに、18歳の年齢を境にばっさりと成人扱いとして切る。ホストに隙を狙われている」



「彼女たちの『自己責任』で済ませていいはずがない。他の被害女性を知るにつれ、誰でもどんな女性でも巻き込まれると考えるに至った。こうしたやり方は、もうビジネスなんて呼べず、単なる搾取だ。法的な規制はもちろん、みなさんにも、実態をもっと知って問題意識を持って頂きたい」