2023年10月24日 19:01 弁護士ドットコム
スリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の死亡事件をめぐり、刑事告訴されていた名古屋入管の職員13人がふたたび「不起訴」となったことを受けて、ウィシュマさんの遺族は10月24日、都内で記者会見を開いて「納得できない」とうったえた。
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ウィシュマさんは2021年3月6日、収容されていた名古屋入管の施設で亡くなった。それまでに何度も体調不良を訴えていたが、適切な治療を受けさせてもらえなかった。尿検査では「飢餓状態」を示す結果が出ていたとされる。
遺族側は2021年11月、当時の名古屋入管局長など、職員13人を殺人容疑で刑事告訴した。しかし、名古屋地検は2022年6月、不起訴とした。
この処分が不服だとして、遺族側が申し立てたところ、名古屋第一検察審議会は同年12月、業務上過失致死について「不起訴不当」と議決していた。
遺族側の代理人をつとめる指宿昭一弁護士と駒井知会弁護士によると、この日の記者会見の直前、再捜査を担当した名古屋地検の検事から、不起訴とした理由の説明が遺族に対してあった。
この検事は、一から証拠を見直して、職員や医者の聴取などの再捜査をしたうえで「死因ないし死亡に至る具体的な事情を特定できなかった」と述べたという。
また、仮に死因が特定できた場合でも「医者でさえわからなかった事情で死亡すると予見し、それを回避する行為を職員ができたとは認められないと判断した」と話したという。
このような検事の説明について、ウィシュマさんの妹、ワヨミさんは会見で「でたらめな話だと思います。一切、納得いきませんでした。不起訴とされたことは本当に残念です。心苦しいです」と話した。
もう一人の妹であるポールニマさんも「あくまでも公平な判断を求めていましたが、不公平な判断しか出なかったことは非常にショックです」と心境を語った。
指宿弁護士は「電話一本で(救急車を呼べば、ウィシュマさんの死は)回避できたはず」と指摘。駒井弁護士も「民間だったらこんな結論は出ていない」と怒りを口にした。遺族側は今後も入管側の責任を追及していくとしている。