一日の大半を過ごす職場では、トイレくらい自由に行かせてほしい。ところが、一部の職場では「トイレ時間を計測する」といった恐ろしい決まりがあるという。
福祉施設で働く20代の女性は、「勤務先は3階建てで50人ほどの人が働いていますが、トイレが1階フロアしかありません」と嘆く。しかも
「トイレに行く際は必ず上司に報告する義務があり、トイレ時間を計測され、一定時間を超えると給料が減額されています。生理痛や急な腹痛でも全てお話しなければならないので、とても恥ずかしくて苦しいです」
というから驚きだ。一体どういうルールなのか、編集部では女性に詳しく話を聞いた。
「規定時間を過ぎたな」生々しい上司たちの会話
そのルールは女性が入社した3年前ほどには既にあったという。トイレは1階にあり男女別で、それぞれに個室が各2つずつある。3階にいる人は降りる時間も考えると焦ってしまいそうだが、一定時間とはどのくらいなのだろうか。
「トイレ時間は1回10~15分以内とされているようです。15分を超えると減額になると聞いていますが、実際のところ何円ほど引かれているのかは上司や上の役職の方しか知らされていません。私のようなパート勤務の人間は詳細を知らないんです……」
給料のことなのに明確に知らされていない上に、一方的に減額はアウトではないだろうか。本当に減額されているのか、脅しではないかと疑問を感じるが、実際に計測はこんな風にされている。
「上司に声をかけると、手元に用意してあるストップウォッチやタイマー、それがない場合には上司らの腕時計などで計測しているようです。出勤している上司の誰かに言えばいいので、近くにいる方にひと声をかける形です」
上司は男女両方いて、「お堅い男性から話しやすい女性まで色んな人がいる」と言う。ただ、いずれにしてもルールには厳しい。ほかの人がトイレに行っているとき、上司たちのこんな会話をよく耳にするというのだ。
「規定時間を過ぎたな」
「まだ〇〇さん、戻ってきてないよね?」
「もう〇〇分経ったから計算しておいて」
「規定通り分刻みで減額って記入しておいて」
職場でこれを聞かされたら、そのときトイレに行っていない従業員にはプレッシャーになるに違いない。そもそもトイレにいる時間が長いという理由で減給することは法律的にはかなり難しいと思われるが、この職場では強引にやってしまっているのだろうか。いずれにせよブラックな環境と言っていいだろう。
女性は「正社員の方や役職者の方数人で情報を共有し、減額の計算や個人名を書き留めているのかなと思います」と推測していた。「いちいち細かいなあ……」と思ってはいるものの、言える立場でもなくうんざりしている様子だ。
「耐えられずトイレに駆け込んだ際にも自分の腕時計で計測」
そんなプレッシャーの中、女性自身は減額されたことはないが、日々ルールを守るのに必死だ。
「死ぬほど恥ずかしくて仕方がないのですが、減額されるのも怒られるのも嫌なので、報告は必ずしています。普段はどんなに腹痛がひどくてもトイレは我慢しているのですが、耐えられずトイレに駆け込んだ際にも自分の腕時計で計測をして、ギリギリ規定時間以内に、死ぬ気で滑り込みます」
報告が嫌でトイレをガマンしている上に、落ち着いて用を足せない状況となっている。なぜ、働く人にここまで無理強いしなければならないのだろうか。
「詳しくは知らないのですが、恐らくトイレで漫画や小説を読まれる方、お菓子を食べたり、食事をとる方、スマートフォン等をいじる方が一定数いるから、ではないかと予想しています」
つまり過去にトイレで長々とサボる人がいたからではないか、と考えられる。
しかし、上司もいちいち計測する手間がかかって仕事の効率が悪くなりそうだ。このルールについて、もちろんほかの従業員からも「なくなってほしい」 「トイレくらい自由にさせてくれ」と不平不満は出ているそう。女性は、「ずっと密かに」こんな風に考えていると語った。
「ひどい腹痛や生理痛などで、特に女性は苦労が多いと思われます。言いたくても言えない、つらいのに口にできない方も一定数います。トイレに自由に行けない、という現状はあまりよろしくないのでは?人間である以上トイレは絶対に使用すると思いますので、制度を廃止してほしいな…と思っています」
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