レジでの支払い方法が多様化し、客の勘違いでクレームが発生することがあるようだ。ドラックストアで働く40代女性が、最近70代くらいの高齢男性に手を焼いた経験を語ってくれた。
男性は2000円ほどの買い物にポイントカードを提示し「ポイントで支払いたい」と言ってきたという。
「確認したところポイントが500円分あったので『残りのお支払いはどうされますか?』とお伺いしたら、『そんなはずはない。1万円分ポイントがあるはずだ!』とキレ散らかされました」
男性客は「いつもポイントで払ってる。お前じゃ話にならないから責任者を呼べ」と怒鳴り散らしたというが……。その後どうなったのか。編集部では女性に詳しく話を聞いた。
「謝れ! 名前はなんや?」
どうやら、この男性客は自分でチャージするタイプの「電子マネーのカード」と、ポイントを貯めて使える「ポイントカード」の区別がついていないようだった。
「その男性は後からチャージ式の電子マネーカードを出されましたので、私が『残りは電子マネーですね』とおうかがいしたら、『違う!ポイントで!全部ポイントで!』とおっしゃいます」
女性は「お客様のお支払い方法は、ポイントではなく電子マネーです」と、他のスタッフとともに3人掛かりで説明した。しかし相手はまったく引かず、それどころか
「お前らの無知のせいでレジが行列やないか!」
「謝れ! 名前はなんや?」
「本部に言ってお前を指導してもらう」
「辞めてしまえ」
と散々罵ってきたというからたまらない。これに女性は「あー、すみませんね!」と名札を見せてフルネームで名乗ったそうだ。「しつこいやりとりに嫌気がさしていたので、かなりふて腐れた態度だったと思います」と振り返る。これに相手は
「お客様は神様やのに、お前の態度はなんや!態度か悪い!きちんと謝れ!」
などとますますヒートアップ。昼前のことで、2つしかないレジの1つをその客にふさがれ、客が数人並び始めた。
「結局ポイントカードではなく電子マネーのカードでお支払いされたのですが、『お前らの無知のせいで!』と、ご自身の勘違いを最後まで認めず、『本部から連絡するように』と言って立ち去られました」
女性は仕方なく「本部からの連絡をお待ち下さい」と伝え、15分ほどかかったこの騒ぎはやっと終了した。
その後も来店「態度は変わらず高圧的です」
その後、この件を本部に連絡すると、こんな説明を受けたという。
「『それは完全なカスハラなので、お客様センターから連絡をする』とのことでした。次回また来られて大声を出されたら、迷わず110番するよう指導されました」
また、店側からは「大きい声で恫喝されたら、大きい声で繰り返すように」というクレーマー対策も教えられていたそうだ。
「そうすると、大体の方は自分がおかしなこと言っていると気付かれるし、周りの方も、輩が吠えてるな!と理解して下さるからと。この方の時もそれをしたので、周りにいた店内のお客様もクレーム内容が理解出来て、好意的だったのかもと思います」
当時、常連客は「大丈夫?訳分からんな。気にせんときや」などと店員たちを気遣ってくれたという。理不尽なクレームも、周囲から理解が得られればスタッフの気持ちは軽くなりそうだ。
その後、例の高齢男性が店を訪れることはあるのか聞くと、
「来てます。相変わらず『ポイントで』とおっしゃるので『電子マネーですね』とスルーしています。態度は変わらず高圧的です」
と明かす。複雑になった決済方法が招いたクレームではあるが、混乱のしわ寄せを店員が受けるのはやるせない。最後に女性は苦々しげにこう語った。
「『お客様は神様や』とか、今どきおかしいですよね。ポイントと電子マネーの違いも分からない、カードの通し方すら分からないなら現金にしてくれと思ってます」