従業員が定着しない職場には、それなりの理由がある。千葉県の50代前半の女性(サービス・販売・外食/年収300万円)が半年間勤めたイベント設営会社は、退職者が続出する職場だった。女性はその会社に採用された経緯について、次のように語る。
「コンサル業などをしていた社長が起業して数年の会社で、現場が社長を含め3人で、リモートで事務をしている人が1名のところでした。そこへ事務として20代2人と50代の私が、3人ともパソコンは入力程度しかできないことを伝えて採用されました」
社長は「(パソコンができなくても)大丈夫大丈夫。ヤル気と人柄重視だからさ」と人当たりがよかった。しかし、その社長にこそ大きな問題があった。(文:福岡ちはや)
人使いの荒い社長のせいで、どんどん辞めていく
パソコンがほとんどできない新入社員3人を事務担当として採用した社長。しかし、その面倒を社長本人が見ることはなく、昼夜構わず働いている現場担当の2人に指導役を押し付けているのが実情だった。それにもかかわらず、社長は女性に対し不満をもらし始めたという。
「パソコンでの書類作成もつきっきりじゃないとわからないのに、『そのくらいできないの?初歩はできるって言ってたのに。自分で勉強して』と最初と態度が違いました」
それなら“ヤル気と人柄重視”などと聞こえのいいことを言わず、パソコンで書類作成できる人を雇えばよかったのに、と思わずにはいられない。
やがて女性は業務内容にも違和感を覚え始めた。
「会社で取り扱う資材を覚えるためと、重たい鉄パイプ運びやノーマスクでのスプレー塗装、現場作業に駆り出されるのも当たり前になり、手袋とか多少の備品は購入してくれましたが、作業服は自分たちで何枚も揃えなければなりませんでした」
事務担当として入ったはずの会社で現場仕事をさせられるとは、思ってもみなかっただろう。こうしたできごとが積み重なり、繁忙期前の社長の一言で女性は退職を決意する。
「(社長が)『このままじゃ現場作業が滞る。話にならない』と言い出しました。挙げ句、現場作業の人に帯同して手が離せないのに『○○に見積もりお願いして』の電話。先輩もフォローしてくれず、夕方にやっと連絡をとって報告すると『できないならできないって早く言ってくれたら、△△さんが途中で別のところで用意できたのに』と怒られ、先輩からもあとから『現場に出てたらできないんだから、リモートスタッフさんに回したほうがいいよ』と言われ、プツンと気持ちが切れました」
女性は「試用期間中に(社長が)もう少し私に何が足りないかなどの話をしてくれたらよかったのですが、作業の合間に『会社、どう?』と各々軽く聞かれただけだったので、『まあ、足は引っ張ってないだろう』と前向きでした」とこぼす。必要なときに必要な指導をしないで、何かあったときに急に責められてはたまったものではない。女性は、
「協力会社の人に聞いたら、『あの社長、言うことコロコロ変わるし人使い荒いから、もとは一緒に働いてた俺たちも、会社は辞めて独立してるんだよ』と男性も居着かないことがわかりました。結局、私ともう1人の人も辞め、残る1人も転職検討中だそうです」
と明かした。社長が自身の問題に気づいて変わらなければ、これからも従業員が定着することはないだろう。
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