「映画プリキュアオールスターズF(エフ)」の応援上映とスタッフトークが本日10月6日に東京・新宿バルト9で行われ、監督の田中裕太、脚本の田中仁、総作画監督・キャラクターデザインの板岡錦、東映アニメーションの村瀬亜季プロデューサー、ABCアニメーションの田中昂プロデューサーが登壇した。本記事には映画のラストシーンまでの重大なネタバレを含むため、鑑賞前の人はご注意を。
【大きな画像をもっと見る】発声やペンライトの持ち込みが許可された応援上映の直後に行われたスタッフトーク。板岡とともに客席で一緒に応援上映を鑑賞した田中裕太監督が「皆さんお疲れ様でした。熱い声援をありがとうございます」と労うと、観客からも「ありがとうー!」と感謝の声が届けられる。スタッフ陣はキュアプーカのシルエットをデザインしたお揃いのジャンパーを着て登壇。「どうしてもスタッフジャンパーを着て仕事がしたかった」という板岡が自腹で作ったものだそうで、板岡の並々ならぬプリキュア愛が感じられた。
トークが始まると、まずは村瀬・田中昂の両プロデューサーから、この日初めて発表するというある秘密が明かされる。それは公開前に“Final”ではないかと話題を呼んだ映画のタイトルの「F」について。村瀬プロデューサーはまず「制作スタッフとしては、もしこの映画が最後のプリキュアオールスターズ映画だったとしても、悔いが残らないくらい全力で作ろうと思っていた」と意気込みを示すものであると語る。そして田中昂プロデューサーは「“Forever”のFでもありますが、この映画のメッセージとしては“終わらせない”というほうが強い。なので“Not Final”なんです」と、タイトルロゴの背景にリボンで“Not”を示す“N”が隠されていることを説明。観客にも気付いていた人はいなかったようで、これには驚きの声が上がった。
「Go!プリンセスプリキュア」や「映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!」などたびたびタッグを組んできた監督の田中裕太と脚本の田中仁。「何も心配していなかった」「裕太さんだったら間違いない」と互いに信頼関係をのぞかせる。今作の作画監督に自ら志願した板岡もまた、「インタビューを自分で読んでても、田中裕太監督に恋する乙女みたいになっていて(笑)。でも、観た方はわかると思うんです。この人が作ったら間違いないでしょって。この機会を逃したら次いつチャンスがあるかわからないし、言うだけ言ってみようって」と、田中裕太監督への信頼感を滲ませた。
歴代78人のプリキュアが登場するという難題に挑むにあたって、田中裕太監督は「最初は後半10年くらいを重点的にさらう映画にしたいと思ってたんですが、途中で村瀬さんが『このままじゃダメだ』って(笑)」と、村瀬プロデューサーの今作への熱意に言及。村瀬プロデューサーは「でも、よかったですよね!」と呼びかけ、観客は大きな拍手でそれに応える。板岡は制作の日々を「日にちで割り算して1日の仕事はこれくらい、というのを日々繰り返す。そうじゃないと終わらない(笑)」と振り返り、田中裕太監督もチャートを作って全プリキュアの出番を管理していたという。田中仁も「最初に『Go!プリンセスプリキュア』のシリーズ構成をやらせてもらったときに、キャストさんのプリキュアに懸ける思いを知りました。キャストさんは自分の役がすべて。その思いに負けないように、1人ひとりの思いをちゃんと書かなきゃいけない。それが78人ですから、本当に苦しかった(笑)」と苦労を語った。
さらに司会から「もう一度鑑賞する際に注目してほしいポイント」を尋ねられると、さまざまな秘話が飛び出した。まずは作中に出てくるキュアシュプリームのロゴが、実は読めるというもの。田中裕太監督いわく、「キュアシュプリームが主役の『○○プリキュア』を仮定した番組ロゴをデザイナーに作ってもらいました。答えを知ってる側からすると形は残っているので、薄目で見たら読めるかも」とのこと。またキュアシュプリームの特徴的な足音は、監督のリクエストに応えて効果音の担当者が作ってくれたものだという。「キュアシュプリームは人間とは違う異質な生き物というイメージ。衣擦れの音とか、キュアシュプリームから出る音は声以外全部加工がかかっています」と、音へのこだわりもアピールした。
映画のラストでは、黒い衣装のキュアシュプリームと白い衣装のキュアプーカが並び立ち、その姿は初代「ふたりはプリキュア」を思わせる。真っ白な姿で現れたシュプリームの色が変化したことについて、板岡がファンの目線に立った質問を投げかけると、田中裕太監督は「僕の中ではシュプリームは異界の神というイメージで、完璧な存在。それがプリキュアとの戦いや、プーカを生み出すことによって、不完全な存在になり、だから真っ白じゃなくなった。そうしたら黒と白になったので、いい感じに戻ってきた気がするなって。最初から考えてたわけじゃないんです」と、偶然の符号だったことを明かした。
最後に田中昂プロデューサーは「ここまでで周年イヤーとしては半分。後半戦も盛りだくさんです。残り半年、一緒に盛り上がってくれますかー!」と観客に呼びかけ、村瀬プロデューサーは「私たちだけの力じゃできないところまで『映画プリキュア』を成長させてくださってありがとうございます。皆さんの思い出に残る作品になったらうれしいです」と感謝を述べる。「あと5時間延ばしてもいい」と語り足りない様子の板岡は「プーカ、超かわいいじゃないですか。でもグッズが(売り切れていて)ないんですよ。映画を観終わった後に『やべープーカ超欲しい!』と思って売店に行ってもいない。ちょっと聞いてみたいんですが、プーカのぬいぐるみ、作ったら欲しいですか?」と投げかけ、観客は拍手とともに「欲しいー!」「お願いしまーす!」と大きな声で思いを伝えた。
田中仁は「僕個人は『プリキュア』に関わってから約10年。僕だけじゃなく、関わってくださってるスタッフの皆さんの思いが、1つ大きな形となって作られた映画なので、何度でも観ていただけるとうれしいです」と真摯なメッセージを届ける。そして田中裕太監督は、「キュアシュプリームが受け入れられなかったらどうしよう、という心配があったんですが、意外に受け入れられて個人的にうれしかった」と思いを述べ、「『プリキュア』に関わってきた時間が長いのですが、自分の中でも総決算という感じでできればいいなと突っ走ってきました。いろんな人の力を借りて。何より観ていただいたお客さんたちのお陰で、20周年の1つ大きなところを担う映画として、成功と言えるところに持ち上げられたのかなと思います」と安堵する。そして「映画の上映は続きますので、2回3回と足をお運びいただければうれしいです」と真摯に語りかけ、スタッフトークの幕を下ろした。
※記事初出時、シュプリームに関する記述に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
■ 「映画プリキュアオールスターズF」
公開中
□ スタッフ・キャスト
原作:東堂いづみ
監督:田中裕太
脚本:田中仁
音楽:深澤恵梨香
総作画監督・キャラクターデザイン:板岡錦
美術監督:林竜太
色彩設計:清田直美
撮影監督:大島由貴、高橋賢司
製作担当:吉田智哉、本田竜馬
声の出演:関根明良、加隈亜衣、村瀬歩、七瀬彩夏、古賀葵、菱川花菜、茅野愛衣、高森奈津美、ファイルーズあい、日高里菜、悠木碧、三森すずこ、白石晴香、小原好美、本泉莉奈、藤田咲、早見沙織、嶋村侑、坂本真綾、種崎敦美
※種崎敦美の崎はたつさきが正式表記。
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