2023年10月05日 07:01 リアルサウンド
オンライン上で知り合って親しくなり、恋愛関係に発展することも珍しくなくなった。姿格好や年齢・性別も不確かな中で生まれる人間関係は、先入観のないピュアなものにも思えるが、実際に対面した時、オンライン上のキャラクターと大きなギャップを感じることも少なくないだろう。9月下旬にX(旧Twitter)上で公開された創作漫画『オンラインゲームのイケボな愛方(疑似恋人)とオフ会したら隣の席の陰キャでついでに女だった話。』は、そんなすれ違いや関係性の構築/再構築が描かれた作品だ。
(参考:『イケボな愛方(疑似恋人)とオフ会したら~』を読む)
女子高生のサキには、オンライン上で交際しているイケメンでイケボな彼氏・カイがいる。クラスメイトに“彼氏がいる”と話してしまい、「彼氏の写真を見せて」とせっつかれ、カイとオフラインで会うことに。いざ会ってみると、カイの正体は隣の席の“陰キャ”女子・古海だった――。
本作を手掛けたのは、高校卒業後にイラスト系の専門学校に進学し、現在は本業漫画家として活躍しているタクヘイさん(@Takuhe_tarabox)。現代的なテーマと、細やかな演出・表現が効いた本作がなぜ生まれたのか、話を聞いた。(望月悠木)
■オンラインゲーム界隈でよく聞く話をベースに
――なぜ『オンラインゲームのイケボな愛方(疑似恋人)とオフ会したら隣の席の陰キャでついでに女だった話。』という短編作品を制作しようと?
タクヘイ:たまたま本業のほうで1ヶ月ほどお休みをいただいていたのですが、やっぱり漫画を描いていないと落ち着かなくなったため趣味で制作しました。1週間ちょっとで完成しました。
――オンラインゲームが出発点の“百合漫画”ですが、タクヘイさんもオンラインゲームが好きなのですか?
タクヘイ:そうです。私自身、もともとオンラインゲームが好きだったので、その界隈でよく聞く恋愛話や人間関係の話をベースに、脚色や変更をして膨らませました。
――クラス内での立ち位置を気にしすぎているなど、サキの性格や価値観はまさにリアル高校生という感じでしたね。
タクヘイ:サキの言動については、自分の中高生のころの様子を思い出しつつ、「こういう学生いたよね」というイメージを壊さないように気をつけながら描きました。
――漫画では声はわかりませんが、なぜか「古海って声低そうだな」と思えました。「古海=声が低い」と思わせるために意識したことは?
タクヘイ:背を高くしたり三白眼気味な目にしたりなど、少し男性寄りのビジュアルにしました。また、ストレートに気持ちを伝えるところなど、「女子だけどイケメンさが滲み出るといいな」と思いながら描きました。
■「素直に感情が伝わるように」
――2人の表情はデフォルメされておらず、あくまで感情の延長線上として喜怒哀楽が表現されており、とても自然に感じました。
タクヘイ:一応恋愛ものなので、「なるべくストーリーの流れの中で素直に感情が伝わるようにできるといいな」と思い、あまりデフォルメは使わずに描きました。自然に感じてもらえたのなら嬉しいです。
――結局サキはスクールカーストに縛られてたままで、今後も見栄を張ってまた追いつめられる未来が見えました。既存の価値観から脱却させないラストを選んだ理由は?
タクヘイ:多分あれのみの出来事では、サキはまだまだスクールカーストから脱却はしないかなと思ったため、誤魔化しに成功するラストにしました。「今後またピンチになった際に古海といろいろあるんだろうなぁ」と想像しています。いつか素直になって立ち位置なんて気にしないようになれると良いですね。
――今後の目標などを教えてください。
タクヘイ:今後も細く長く漫画を描き続けられればと思っています。現在は芳文社のアプリ『COMIC FUZ』で『黒竜姫と白執事』という漫画を連載しています。良かったら覗いてみてください。
(取材・文=望月悠木)