2023年10月03日 10:01 弁護士ドットコム
職場で、スラックなどのビジネスチャットツールを利用している人も多いでしょう。そんな社内チャットの個別のやりとりが、会社に監視されていたという相談が、弁護士ドットコムに寄せられています。
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ある女性は、会社の上層部たちにチャットツールの会話を見られていました。
「社内専用のSNSがあるのですが、そのチャットツールを使った会話が会社の上層部の人たちに見られていることを最近知りました。ラインのような感覚で社員は使っており、社内の人とコミュニケーションをとっているのですが、その会話が見られていたなんて…困ります」(女性の相談より)
会社側が社員のチャットを監視することは、法的に問題ないのでしょうか。山本幸司弁護士に聞きました。
——ビジネスチャットの内容を監視することについて、プライバシーの問題はないのでしょうか?
社内チャットは会社のネットワークなどを使用するものではありますが、従業員のプライバシー保護との関係で問題となることがあります。
まず、会社の社内規程にチャットを閲覧・監視するとの規定がある場合や、従業員が監視の実施に事前に同意している場合においては、従業員はプライバシーのない通信手段としてチャットを使用することになります。
そのため、会社による監視は、特別な事情がない限り適法と考えられます。ただし、社内規程は従業員への周知が必要です。
——このような社内規程や従業員の同意がない場合には、どうでしょうか?
その場合、プライバシー権侵害となることがあります。
類似の事案について、裁判例もあります。これは、会社のネットワークを使用した電子メールを会社が監視した事案で、「監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合」に、プライバシー権侵害になると判示しています(東京地裁平成13年12月3日判決、労判826・76)。
たとえば、監視する職務上の必要性がない場合や、個人的な好奇心から監視をした場合、監視するような責任ある立場にない者が監視した場合などは、違法となる可能性があるでしょう。
【取材協力弁護士】
山本 幸司(やまもと・こうじ)弁護士
広島弁護士会所属。企業法務(上場企業、医療機関など)、相続、不動産、労働、離婚問題、刑事事件などの分野で経験を積み、広島市で独立開業。税理士と共同して、法務・税務の両面からトータルサポート。
事務所名:山本総合法律事務所
事務所URL:http://www.law-yamamoto.jp