2023年09月29日 09:51 弁護士ドットコム
自身の局部の写真を送りつける「ちん凸」。最近では、男性YouTuberグループが女性インフルエンサーに局部の写真を送りつけたことが話題になりました。
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被害にあったのは、インフルエンサーの「あみち。」さん。YouTuberグループ「えびすじゃっぷ」のフジさんはX(旧ツイッター)で「泥酔し悪ふざけしてしまった結果」と説明し、「大変不快な思いをさせてしまった旨を心より謝罪させていただき、和解させていただきました」と報告しています。
あみち。さんは以前から「ちん凸」の被害にあっており、平均して1日5通、多いときで10通ほどDMで送られてくるそうです。
こうした行為は犯罪に問われないのでしょうか。わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士に聞きました。
局部画像の送り付けについては、まず、わいせつ電磁的記録頒布罪(刑法175条1項)が検討されます。
<わいせつ電磁的記録頒布罪> 法定刑は2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する
一般に、「頒布は、不特定又は多数の人に対して物を交付・讓渡することをいう」とされるので、「1対1は頒布にあたらない」と理解されています。
ただ、「たまたま1名の顧客に交付・譲渡等したに過ぎない場合であっても、 それが不特定又は多数の人に対して交付・譲渡等する意思でされたものであれば、頒布に該当する」(東京高裁昭和47年7月14日判決、東京高裁昭和62年3月16日判決)という判例があるので、元カノなど特定の1人への送信でも、「頒布」の「疑い」で逮捕されることがあります。
検挙された場合でも、1対1の送信であることの弁解が通れば、頒布罪にはなりません。
写真を送った人が18歳未満である場合には、児童ポルノ提供罪(児童ポルノ・児童買春法7条2項)、提供目的製造罪(同条3項)が検討されます。
児童ポルノ提供罪の法定刑は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。提供目的製造罪の法定刑も同じです。
「提供」というのは、1対1の送信を含む概念です。児童ポルノ提供罪は児童を保護する罪ですが、行為主体から児童を除外していないので、被害児童本人が補導・検挙されることがあります。
また、ストーカー規制法では「その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を送付」する行為(同法2条1項8号)を「つきまとい等」としています。
そのため、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」反復しておこなうと、ストーカー行為として処罰されることがあります。法定刑は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/