2023年09月26日 09:50 弁護士ドットコム
幼い子どもがジュースをおいしそうに飲み、祖母がその姿を近くで優しく見つめる。
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微笑ましい光景のように思えるが、その場所がスーパーで、しかもジュースは精算前の商品だとしたらどう感じるだろう。
弁護士ドットコムにそんな目撃談が寄せられ、「窃盗罪にあたらないのか?」と疑問が投げかけられた。
レジで代金を支払うつもりだとしても、支払い前の商品を食べてしまうことは法律違反になるのだろうか。星野学弁護士に聞いた。
——会計前の商品を食べることは窃盗罪にあたると考えられますか
結論として、会計前の商品を食べることは、窃盗罪にあたると考えられます。
ここで厳密な法的説明は避けますが、窃盗罪とは「他人が管理する物を許可なく自分の管理下に移す犯罪」と考えるとわかりやすいと思います。
そのため、お店の管理するジュースを許可なく自分の管理下に移して、孫に飲ませる行為は窃盗罪にあたることになります。
開封してから孫に飲ませると、ジュースを自分の管理下に移したうえでの行動になるので、ジュースを飲ませようとした時点で既遂になると考えられます。
なお、この時点で窃盗罪の既遂となりますので、その後にお金を払うつもりだったと言っても、窃盗罪が否定されるわけではありません。
窃盗が発覚しても「金を払うつもりだった」とさえ言えば、窃盗罪が成立しないとしたら大変です。ダメ元、一か八かで窃盗をする人が増えてしまうのではないでしょうか。
——会計待ちでレジに並んでいるときにジュースを飲んでしまったらどうでしょうか
この場合も、会計を済ます前に店員の許可なくジュースを飲んでしまっているので、窃盗罪(既遂)が成立すると考えてよいでしょう。ただし、会計をするかどうかが不明確な場合とは異なり、会計をする意思が明確だったとして、実際には重い処罰がされることは少ないと考えられます。
なお、会計前の飲食のすべてが窃盗罪にあたるとまでは言えません。
孫がぐずり始めたり、食べ物にむせてしまったりして、お店の人にあらかじめ「あとで清算するので、先にジュースを飲ませても良いですか?」と伝えて、店側が許可したら窃盗の問題は生じません。
世界には、会計前にお店の商品を飲んだり食べたりしたあとにお金を払うのが普通だという国もあるようです。また、お店に入って好きな商品を手に取り、会計をしなくて店外に出ても、店内のカメラやセンサーが購入商品を特定してクレジットカード決済をおこなうという店舗もあります。
このような店舗では、会計自体がなくなっているのですから、会計前に商品の飲食をしても窃盗罪は成立しません。
しかし、現在の社会においては、きちんと会計をしたあとに飲食するほうがよいでしょう。
【取材協力弁護士】
星野 学(ほしの・まなぶ)弁護士
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から1年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。行政機関の各種委員も歴任。
事務所名:つくば総合法律事務所
事務所URL:http://www.tsukuba-law.com