夫婦ももとは他人、いろいろな理由から「離婚したい」と思う瞬間もある。
「離婚したいと思ってますし、そう思う具体的なエピソードは、結婚生活が長いので地球ほどあります」
こう語るのは、広島県の60代前半の女性(医療・福祉・介護/年収450万円)。女性はエピソードの1つとして、まだ幼かった我が子が入院したときのできごとを挙げる。当時パートで働いていた女性に、夫が、
「仕事なんか行くなよ、どうせアンタの仕事なんか大したことないんだから。子どもに付き添え」
と心ない言葉をかけてきたのだ。(文:福岡ちはや)
「1日も早く仕事を辞めて家のことをしろ。女の仕事なんか大したことない」
女性の頭に離婚の2文字がよぎったのは、これが初めてではなかった。女性は独身時代、福利厚生のしっかりしている共働き可能な職場に勤めていたが、結婚後まもなく妊娠がわかると、夫から、
「1日も早く仕事を辞めて家のことをしろ。女の仕事なんか大したことないんだから」
と言われたそうだ。
今となっては“男は仕事、女は家庭”という価値観はもう古いが、これは数十年前の話。しかし女性は当時から互いの仕事を尊重し合い、助け合える夫婦関係を築きたいと思っていたようだ。女性は「付き合っているときには協力的な話せる人だと思ってましたが」と胸の内を綴る。
「夫婦協力しながら共働きするつもりだったので大ショックでした。考えてみれば、新婚のその頃から、もう離婚は頭にあり続けています。旦那は『女は家にいて家事育児をするのが当たり前!』との価値観でした。(中略)私なりに責任を持って、独身時代からの仕事もパートの仕事も働いていたつもりですから、旦那に私の人格を全否定された気持ちで、旦那がまったく理解しようともしてくれないことにも幻滅でした」
この一件以来、女性は夫を頼る気持ちを捨て、家事に育児に仕事にと奔走してきた。
「家事育児を旦那に文句言われないよう、差し支えないよう意地でもやり、パートの仕事も細々と続け、一切旦那には迷惑かけないようにし、仕事の相談事もしたことはありません」
長い間1人ですべてを抱え込んで、さぞつらかっただろう。
「家庭内離婚をしているようなもの。離婚する作業が面倒なのでしないだけ」
現在は子どもも成長し、仕事に充てられる時間が多くなった女性。そのおかげもあってか、「旦那には内緒で正社員になり、旦那の扶養でなくなりました」と明かす。
「パートで始めた仕事から、今に繋がる人との出会いがあったり、資格を取ったりし、自分の世界を作ってきました。迷惑かけてませんから、今は旦那に文句も言われることなく、人間関係にも恵まれ、楽しく仕事ができています」
「旦那から働くことをよく思われてないのに仕事をしてきたから、子どもにも人並みに学校に行かせてやれたし、年金を受給できる年になれば、それは旦那のではなく私自身の年金なのです」
今では仕事が女性の心の支えとなっているようだ。一方、女性の夫に対する気持ちは冷え切っていた。
「家庭内離婚をしているようなもので、同居はしてますが、あえて離婚する作業が面倒なので具体的にしないだけで、その頃から心の中では離婚しています」
※キャリコネニュースでは「離婚したいと思った瞬間」をテーマにアンケートを実施しています。回答はこちらから。 https://questant.jp/q/NQTLY3J8