2019年7月、英ロンドンのハイド・パークにてステージで熱唱するセリーヌ・ディオン カナダを代表する女性歌手セリーヌ・ディオン(55)。ファンでなくとも、1991年の『美女と野獣』、1997年の『タイタニック』など数多くの映画の主題歌として彼女の歌声を聞いたことがあるだろう。パワフルかつ繊細な美声を持つセリーヌ・ディオンは長年2か国語を駆使して世界中を魅了してきたが、2022年12月、自身のインスタグラムで公開した動画の中で、彼女が神経系の稀な病気である「スティッフパーソン症候群」であることを明かした。再びステージに立つことをファンに約束し、難病と闘っているセリーヌ・ディオン。そんなセリーヌを支える家族、復帰を願うファンを一瞬にして凍り付かせる失態がフランスのテレビ局の生放送中に起こった。
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セリーヌ・ディオンのヒット曲は英語での楽曲が有名なため、実は彼女の母国語がフランス語(カナダ・フランス語)で、1980年代後半まで日常英会話さえままならなかったことはあまり知られていない。そんなセリーヌ・ディオンの素晴らしさは抜群の歌唱力と声量だけではない。母国語であるフランス語圏に確固たる地位を築きつつ、それ以外の国や地域では英語で世界規模の熱狂的ファンを擁している。事実、フランスでセリーヌ・ディオンの英語ソングを聞く機会は少ない。マーケットの差別化を図り各国の文化、言語に合わせたプロモーション活動の賜物だ。そしてこれらをすべて可能にしているのが、セリーヌの歌手としての稀有な才能、そして異文化、異言語のなかでも決して諦めることをしなかった弛まぬ努力なのだ。
そんなセリーヌを彼女の幼少期から支えた音楽プロデューサーで後に夫となるのがルネ・アンジェリル氏だ。文字通り二人三脚で「セリーヌ・ディオン」を世界の歌姫へと育て上げた夫妻であったが、2016年1月14日、ルネ氏が長い癌との闘病生活の末にこの世を去った。セリーヌ曰く「自分の人生で愛する人はこの先もレネ唯一人」というように最愛の夫の死去は、7年が経った現在においても癒えることはないという。それでもレネとの間にもうけた息子3人に愛情を注ぎつつ、音楽活動を行っていたセリーヌ自身にも試練が訪れる。それが「スティッフパーソン症候群」だ。
「この稀な病気について、私たちはまだすべてを知っているわけではありませんが、私が苦しんでいる筋肉の痙攣の原因であることがわかっています。残念なことに、この痙攣は私の日常生活にいくつかのレベルで影響を及ぼしています。歩行が困難になることもありますし、声帯を使って思うように歌えないこともあります。」
さらに2023年5月26日には、ツアーをキャンセルすることを発表した。「またがっかりさせてしまって本当にごめんなさい。私は体力を回復させるために懸命に働いていますが、ツアーは100%の状態でも過酷で難しいものです」とセリーヌは心境を明かしている。
当然セリーヌ・ディオンの復活を待ち望むファンがフランスにも大勢いる。その想いは時に他の英語圏の国や地域より熱いと言っても過言ではない。そんなフランスのセリーヌファンのために、M6(フランス民放の1社)が9月15日(金)に『セリーヌ・ディオンに捧げる夕べ』を放送した。それに先立ち、放送数時間前の『12時45分』という生放送情報番組で、アナウンサーのナタリー・ルヌー(52)がファンや視聴者を凍り付かせる失態を犯してしまった。
「今夜、M6はセリーヌ・ディオンの伝説的なアルバム『D'Eux』(邦題『フレンチ・アルバム』)の30周年を記念して、特別な夜をセリーヌ・ディオンに捧げます。“モルド”でーーーー、“モンド”で最も売れたフランス語のアルバムです(“Un album francophone le plus vendu au mort... au monde !”)。」
フランス語で「モルド」は「死」、「モンド」は「世界」を意味する。
この直後、一瞬にしてスタジオが凍り付いたのが画面上でもすぐに感じ取ることができたほどだ。この放送事故は、翌日フランス週刊誌各社がこぞって取り上げるほどのニュースとなった。
また、セリーヌ・ディオンがうつ病ではないかという心無い一部報道もあるが、姉で歌手のクローデット・ディオン(74)は、『7 jours』誌のインタビューに対し、これを真っ向から否定し「私たちは妹にすべての愛情を注いでいます。妹も私と同じように、この試練を乗り越える自信があります」と述べている。
確かに現在のセリーヌの闘いは容易なものではない。「モルド=死」という言葉にファンや視聴者が過敏に反応したことからもセリーヌが厳しい闘いを強いられていることは想像に難くない。だが、セリーヌがこれまで歩んできた道を思い起こせば、彼女が決して諦めることを選択しない女性であると分かる。最愛の夫の長期間に渡る闘病生活を支えるために一度は無期限の活動休止を決断したが、彼の切なる願いを受けてセリーヌはラスベガスのシーザーズ・パレスのステージへと戻ってきた。ルネ・アンジェリル氏の願いはただひとつ、セリーヌ・ディオンがステージに立ち歌い続けることだ。その願いを叶えるべく今セリーヌは闘っている。そこには彼女が病に負け、復帰を諦めるいかなる理由も存在しないのだ。
画像2~4枚目は『Céline Dion 2022年12月8日付Instagram「Dans le cadre de sa tournée mondiale Courage, 」、2018年9月29日付Instagram「Don’t miss your chance to see Céline’s final shows at @thecolosseumatcaesarspalace , Las Vegas.」』『Nathalie Renoux 2023年9月16日付Instagram「Une expérience inédite pour moi 」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 リエコ)