マックス・フェルスタッペンが11番手、チームメイトのセルジオ・ペレスが13番手からスタートしたF1第16戦シンガポールGP決勝レース。レッドブルのストラテジストは2台にハードタイヤを履かせてスタートさせるというギャンブルを試みた。
通常であれば、スタートでの蹴り出しを考えてソフトタイヤかミディアムタイヤでスタートする。実際、19人中16人がソフトかミディアムをスタートタイヤに選択していた。
つまり、レッドブルは一か八かの作戦に打って出ていた。裏を返せば、シンガポールGPでのレッドブルは、それほどまでに追い詰められていたとも言える。
そして、その博打は20周目にセーフティーカーが導入されたことで半分外れ、43周目のバーチャルセーフティカー(VSC)によって、完全に外れることとなった。
なぜ、レッドブルはシンガポールGPでこれほどまでに苦しんだのか。あるレース関係者はこう指摘する。
「レッドブルの独特の車高がバンピーなシンガポールの路面で悪さをしたんだと思う」
レッドブルのRB19はライバルたちのマシンよりも車高が低く、中高速コーナーに強いという特徴がある。ところが、シンガポールの路面はバンピーであるため、低い車高のままだと運転しづらく、車高を上げるしかない。
ところが、車高はディフューザー効果と関連していて、車高を上げたことでレッドブルのマシンはダウンフォースを失うというデメリットを受けることとなった。そのことは、フェルスタッペンが予選後にこう訴えていたことでもわかる。
「とにかく低速コーナーで僕たちは週末を通して問題を引きずっていた。さらにリヤのサポートもまったくなかった。常に滑っていた」
ただし、セットアップを微調整したことで土曜日のフリー走行3回目では、かなりよくなっていた。これで、予選で戦えると手応えを感じたエンジニアたちは、勝利を目指して、予選に向けてさらにセットアップを変更。これが裏目に出た。
フェルスタッペンはこう振り返る。
「ブレーキングでボトミングしてフロントタイヤの荷重が抜けてしまった」
この言葉から考えられるのは、フロントの車高を低くしたことではないかということだ。フロントの車高を下げることで、ディフューザー効果を高めてリヤのサポートを上げようとしたが、逆にフロント側のフロアがボトミングしたことで、ブレーキングでノーズダイブした瞬間に、フロントの荷重が抜けるという現象を招いてしまった。
その結果、コーナーの入口でアンダーステア、出口でオーバーステアという最悪のマシンになってしまった。
開幕から負け知らずだったがゆえに、なんとかして連勝を続けようとして、逆に深みにはまったわけだ。どんな状況でも勝利を目指すレッドブルらしいと言えばそれまでだが、この敗戦で次の日本GPでは余計なプレッシャーにさいなまれることなく、いつも通りの戦いを演じてほしい。