表向きは「顔採用」など無いかのようでいて、採用担当者が実は自分の好みのタイプを選ぶのはありがちなことだろう。しかし、あまりにもあからさまな態度では呆れてしまう。今から14年前、大阪府の30代女性は、ある企業の面接を受けた当時をこう振り返る。
その会社は、顕微鏡などを製造販売する小さな企業だった。面接官である「30代後半の研究者のような男性」は、こんな希望を口にした。
「私はこのビルの一室で毎日過ごしていて、ランチには行かず外線電話を取るのでこもりがち。なので、このキッチンで手料理を作ってくれる女性を採用したい。気配りのできる華のある女性がいい」
女性はこうした言葉から「これは面接ではないな」と察したという。編集部では女性に詳しく話を聞いた。
「このキッチンで手料理を作ってくれる女性を採用したい」
「当時、私が見た求人だと事務員は給与の相場が13~15万円だったのに対して、その会社は月給20万円、交通費全額支給でした」
募集していた職種は「営業事務、販売、事務全般」で、事務にしては給与が良く不思議に感じていたという。そのうえ、「いらっしゃい」と歓迎されビーカーに入れたお茶も出された。お茶を出してくれた男性が面接官だった。
「面接のはずなのにお客様のような待遇に戸惑いながらも、会社の概要やどんな仕事をしているのかなど談笑しながら話が弾みました。ほかには女性事務員が2人いて、面接の時はランチで外に出ていたそうですが、全部で5人働いていると聞きました」
そこで前述の「このキッチンで手料理を作ってくれる女性を採用したい」といった要望が飛び出した。事務員が社員の食事の支度まで求められるのは行き過ぎではないだろうか。女性は「そこでピンと来ました」と語る。
「話の内容を繋ぎ合わせると、ビルの一室で彼の手足となり、散らかった部屋の片付けから掃除、お昼の彼の昼食調理含む雑用兼、販売から事務もする『家政婦兼事務をする20代前半の若い可愛い女性』を募集していたようです」
しかも、相手はこんな本音を漏らしたという。
「『週5日の長い時間、下手したら家族よりも長い時間を過ごす相手は、もっと若い人がいいんだ』という言葉が決定的でした」
「私の後に来た面接のお嬢さんは長髪色白、若くて美人な方でした」
女性は当時24歳。十分に若かったが、自身を「可愛くは決してない普通の人でした」と冷静に評している。面接ではさすがに「可愛い女性がいい」など直接的な言葉はなかったが、結婚や出産についても尋ねられた。既に結婚が決まっていた女性が「1年以内で結婚します」と伝えると、返って来たのは否定的な言葉だった。
「面接官から『この年齢で結婚を決められるのは早いですね。家庭に入るとなると、この仕事は向いていないかもしれません。時短や育休などないですし、こちらとしても長く勤めてほしい』と言われました」
ちなみに、まだ女性が室内にいるときに次の応募者が現れた。「私の後に来た面接のお嬢さんは彼の希望通りであると思われる長髪色白、若くて美人な方でした」と振り返る。
「背が高くすらりとした美人の女性で、スーツや靴がまだ着こなせていないので初々しさがある女性でした。面接官の男性は、『本日はお越しくださりありがとう。今日担当します〇〇です』と名乗り、一言めから私とは対応が全く違っていました。ギラついた目というか、この子がいいという目をしていて印象的でした」
その後、女性は「お気をつけて」と帰されたそうだ。後から来た色白女性が何やら書類を書くよう指示されていたのを目にしたが、「私は書類を書いていません」と明らかに差があった。その瞬間、「これは面接ではない」と悟ったという。
「彼のお眼鏡に叶えば面接、叶わなければ『来客』になるとその時はっきりわかりました。面白い面接もあるもんだな、と思いました」
ちなみに結果は、2日後に不採用通知がメールで届いたという。「そうだろうな、と思いました」と特に腹が立つこともなく、オモシロ体験として家族や友人に話して聞かせたということだ。
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