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豊洲タワマンで10年暮らす男性 高収入で高学歴、文化レベルも高い家庭に囲まれて疲弊

2023年09月16日 06:10  キャリコネニュース

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都内屈指のタワーマンションエリア、豊洲。そんなエリアに暮らす女性達を指して「キャナリーゼ」という言葉が生まれたのは、既に10年も前のこと。今も豊洲という地域は、一つのブランドだ。しかし、ここに暮らして10年を迎えた40代男性は「もう、限界。今は地方移住に憧れています」と語る。いったい10年の間に何があったのか。(取材・文:昼間たかし)

「○○ちゃんのママはいつもブランドの靴」と羨ましげに話す妻

「夫婦そろって地方出身。特に自分は中国地方の山間部の田舎生まれなのです。なので、豊洲のマンションを手に入れた時は、成功者になった気分でした」

と当時を懐かしむ男性。引っ越してすぐに女の子も生まれた。たまに帰省すれば、誰もが「あそこの息子は東京に出て出世した」と知っている。やっかみの声も耳には入ったが、それも含めて優越感に満ちていた。

「引っ越した頃は、豊洲のタワマンが話題になることも多くて、そんな注目される土地に住めたことで希望に満ちていました。でも、歳を重ねるごとに、それは幻想だと気づいたんです」

男性の年収は900万円、妻が700万円で、世帯年収は1600万円のいわば「パワーカップル」だが、豊洲では平均的といったところ。それまで自分たちは成功者だと思っていた男性は、改めてこの地での立ち位置に気づいたのである。

男性が初めに違和感を抱いたのは、子どもが保育園に通い始めた頃だった。

「朝の出勤前に子どもを保育園に送るのは自分の役割だったのですが、毎朝出会うほかのパパママは、さりげなくブランド物の服やカバンを使っている人ばかりでした。自分はあまりブランドには興味はなかったのですが、妻は目ざとくて『○○ちゃんのママはいつも、どこそこのブランドの靴』とか羨ましげに話すようになったんです」

この妻の変化は男性にとっては驚きだった。夫婦ともに理系出身で、コミュニケーションはどちらかというと苦手なタイプ。ところが、妻は「子どものために」と積極的にママ友と交流するようになり、親の勤務先や出身校まで話題にするようになった。

「自分の出身大学は偏差値は高いけどマイナー。かつ勤務先も上場企業とは言えBtoBで知名度の高くないところ。ずっとそのことにコンプレックスを抱いていたんですが、次第にそれが重く感じるようになったんです」

友達が夏休みに海外旅行に出かける話をする娘

とりわけ男性が苦痛だったのはパパママ同士の交流だったという。

「保育園の時には、ママ友と子どもが集まるパーティーがえらく多くて。しかも、パパが参加する家も多かったんですよ。挙げ句の果てには『パパ同士でも交流しましょう』という話になって。結局、お互いの子どもの優劣を観察しながら言葉を選んで会話するわけでしょう。なんで、プライベートでそんな会社の延長みたいなことをしなくちゃならないのかと……」

当然、会話は将来の中学・高校受験の話まで及んだが、首都圏出身のパパママが口にする有名校の話題にまったくついていけないことが、さらにコンプレックスを増大させた。

「子どもが小学生になってパパママが集まるということは減りましたが、娘も友達が夏休みに海外旅行に出かける話とかを当たり前にするでしょう。日常会話で自分よりも高収入・高学歴かつ文化レベルも高い家庭が存在することを毎日のように知るのは苦痛です」

もうひとつ、男性を豊洲嫌いにさせたのは、豊洲だけで生活が完結してしまうことだった。豊洲駅周辺にはさまざまな店があるが、その代表格は大型ショッピングセンターのアーバンドックららぽーと豊洲だ。

「徒歩圏内に店舗が充実していて便利ですよね。買い物や飲み食いだってチェーン店ばかりです。ららぽーとは店舗も充実していて便利ですが、給料の何割かは自分の前を素通りして、ららぽーとに吸い取られているんじゃないかと考えたら愕然とします」

一時は、あえて豊洲から橋を渡った先にある東雲のイオンを利用するなどしてみた男性だが「無駄な抵抗だと思ってやめた」という。

「結局、豊洲というのはもっと何世代も東京に住んで都会に慣れた階層向けの街だったんでしょう。田舎育ちの自分には、早すぎたんです」

豊洲がそういう街かどうかはさておき、ひとつ言えるのは、今タワマンに住んでいなかったら男性は心穏やかに暮らせて、妻の性格が変わることもなかったかもしれない。