2023年09月13日 18:31 リアルサウンド
AIやロボットというテクノロジーが身近になってきたいま、SF作品にも感情に触れる熱を帯びた物語が新たに生まれつつあるのかもしれない。7月下旬にX(旧Twitter)上に投稿された創作漫画『ハコのひと』は、そんなことを感じさせる熱量の高い作品だ。
(参考:漫画『ハコのひと』を読む)
ゲンは目を覚ますと、そこは閑散とした部屋だった。状況が飲み込めずに困惑しているゲンの前に、ダンボールを被ったハピという謎の人物が現れ「ハピはゲンの育ての親のロボットさ」という。謎を残しながら、ハピとの奇妙な共同生活が始まる。ハピは何者なのか、この世界で何が起きているのか、それらの謎が徐々に解明されていく――。
本作を手掛けたのは、“漫画を描くスイッチ”を入れてくれたのは『鬼滅の刃』だと話す作者のピクタムさん(@picta_m)。荒々しさと繊細さが混在する独特の世界観が魅力の本作がどのようにして制作されたのかなど、話を聞いた。(望月悠木)
■「セリフはできるだけ簡潔に」
――今回『ハコのひと』を制作した背景を教えてください。
ピクタム:物語の原型は2022年12月にできました。それを2月、5月に開催された1次創作の同人誌即売会『コミティア』の出張編集部に持っていきました。そこでいろいろな編集さんから意見を聞きながらアップデートを繰り返し、構想から完成まで6か月くらいかけて制作しました。
――“謎の施設に閉じ込められ、謎のロボットに育てられる”という内容でした。本作の設定はどのようにして思いついたのですか?
ピクタム:現実世界との繋がりが全くない異世界を舞台にしたファンタジー“ハイファンタジー系”のディストピアの世界観から着想を得ました。ただ、スティーヴン・スピルバーグの映画が好きだったので影響を受けているかもしれません。また、構成自体はあくまで読切漫画ですので、短い時間で楽しめるように意識しました。
――メイン2人はどのようにして作り上げましたか?
ピクタム:ゲンは明るく元気で運動好きなやんちゃなイメージ、ハピは世話焼きで堅物で動きが遅いイメージです。『トムとジェリー』のように時には仲良く時にはケンカしているような関係性を描こうと考えました。ビジュアルですが、小動物のようなゲン、オーバーオールでデカいハピ、といった感じで2人を対比させて差別化できるようにしました。
――ちなみになぜハピにダンボールを被せたのですか?
ピクタム:ハピは謎めいた存在にしたかったので、「それならダンボールを被せようかな」という狙いがあって被せました。
――小動物っぽいゲンですが、激情している時の表情の描き込みがすごかったですね。
ピクタム:感情が激しく動くカットは、自分としては特に描きたい部分でしたので、かなり力を入れて描きました。ゲンの目は力を入れて描写しています。
■ラストは最初から決めていた?
――バトル要素、SF要素、さらには家族愛など様々な要素がつまったストーリーでした。各要素のバランスはどのように調整しましたか?
ピクタム:その辺りは最も気を使う部分でした。言語化することは難しいのですが、「創作者としてエンタメを創りたい」という意識を強く持ち、深い物語性のある作品作りを心がけました。
――ゲンとハピの立ち位置が入れ替わって、最初と同じセリフを口にする、というラストが素敵でした。ラストは最初から決めていたのですか?
ピクタム:ラストはおかげさまで最も反応をいただけました。「螺旋のように立場が逆転しても続いていく世界」を描こうと考えていたので、初期段階から決めていました。
――最後に今後の活動目標など教えてください。
ピクタム:現在Xやpixivなどを中心に漫画作品を不定期にアップしています。まだまだアウトプットできていない企画やアイデアの構想があり、エンタメをより多くの読者さんにお届けしたいと考えています。今後とも応援よろしくお願いします。
(取材・文=望月悠木)