9月9日~10日に北海道の帯広市で開催された全日本ラリー選手権第7戦RALLY HOKKAIDO(ラリー北海道)。最上位のJN-1クラスはこのラリー北海道に来日参戦したヤリ-マティ・ラトバラ/ユホ・ハンニネン(トヨタ・GRヤリスJP4-ラリー2)が初参戦初優勝という、さすが元WRCトップドライバーの実力を見せてくれました。
その盛り上がった今回のラリー北海道、オートスポーツwebではスペシャル取材班としてサーキット実況でお馴染みのピエール北川さんとコラボ。現地の様子を誌面で実況(!?)して頂きました。現地レポート第2回は、土曜日を中心にお届けます。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ど~も~!ピエール北川です!
今回は9月9日土曜日のラリー北海道の様子をお届けしますよ~。
しかし、北海道も9月に入って秋の気配を感じるかと思いきや、日中は半袖1枚で過ごすことが出来るほど気温が高くてびっくり。でも本州に比べれば湿気が少なくてすごく快適! 自生している白樺の木々を見ると、先日WRCで訪れたエストニアやフィンランドを思い出します。
さあ、今日もたくさん写真撮るぞ~!
今日は帯広から車で1時間半。陸別町まで移動して3本のSSを『陸別サーキット』で撮影することにします。かつて北海道でWRCを開催していた時にもこちらの施設は使われていました。その時は僕もひとりの観客としてここへ来た思い出があります。
観客席はこんな感じでベンチを利用したり、緑の上に自分たちで持ち込んだシートや折り畳み椅子を使って観戦。
広く見渡せるコースからは山を駆け抜けてきたラリーカーを、SSフィニッシュのところまで一望出来ちゃいます。
これだけ広々とダイナミックに見渡せる林道とダートコースの合体した施設は僕の知る限り、日本ではここだけ。北海道のみなさんが羨ましいです。
さて、今回は実況アナウンサーではなく取材カメラマンなので(念のためもう一度言わせてくださいw)、観客席ではなくラリー車をもっと近くに見られる林道コースの方へ移動しまーす。
ラリーの会場はサーキットよりも移動が大変。私も軽い登山が出来るトレッキングシューズを履いて、カメラ持って山道をテクテク。
撮影位置に到着してからは、そこからどんな感じでラリーカーを撮影するかイメージします。
準備を進めるうちに『00カー(タブルゼロカー)』、『0カー(ゼロカー)』というラリー競技ではおなじみの先行車がコースチェックでやってくるので、競技車の到着が近いことを知り、気分も高揚してきます!
しばらくすると全日本クラスより先に走る、国際クラスのラリーカーの1号車がスタートする時間に。林道を走るラリーカーのエンジン音に耳を澄ませ、自分の撮影ポイントに来るまで、カメラを構えてじっと待ちます。すると……
ラリー競技は1台ずつスタートするので、自分の前を走り抜けるワンチャンスを逃すと、もう次はチャンスがないこともしばしば。撮りたかったマシンが前のSSでリタイヤしてしまったりすると、一度も撮影できないということもよくあります。そんな訳で撮影を失敗できないプレッシャーを感じた私はシャッターを押す指が震えます(笑)
国際クラスの走行後30分ほどして、全日本クラスの走行がスタート。先頭で走るのは今回一番撮りたかった全日本初参戦で2006年WRC以来17年ぶりに北海道を走る(ヤリ-マティ)ラトバラ選手のGRヤリス・ラリー2を待ちます。そしてついに……
キターーーーーー!!
圧倒的なラトバラ選手のスピードに必死にシャッターを押し続けるだけの私なのですが、そのの走りはとにかく桁違いに速い! ヤバい!! 圧巻!!!
信じられない程のスピードでコーナーに侵入してきて、あっという間にクルマの向きを変えてコーナーを脱出していく。まさに「これがワールドクラスドライバーの走りなのか!!」という感じ。
走り去った後の土埃をタップリと浴びて放心状態で感動する私は、もうラリーの虜です(笑)
とりあえず全車撮り終え、次のSSは撮影ポイントを変えて、ジャンピングスポットへ。ここでは(ヘイキ)コバライネン選手のジャンプが見事だったのでお見せしましょう。こちら!
撮影に夢中だった私は最初気付きませんでしたが、同じ場所で見ていたギャラリーの方が、「コドライバーの北川(紗衣)選手が手を振ってくれてた!」って言ってるんです。で、よ~く見ると……
ホンマや!(笑)
1日の走行を終えたあと北川紗衣選手にこのことを聞くと、「ギャラリーのみなさんに少しでも楽しんで見てもらえたら、と思って手を振りましたよ!」と笑顔で答えてくれました。
時速100km以上のスピードで林道をジャンプしながらペースノートを読みあげ、さらにギャラリーポイントでお客さんのために手も振る北川選手。なんというファンサービス精神!! 全日本のコドライバー凄すぎます!!
お昼には陸別サーキットでモリゾウ選手とユハ・カンクネン選手(WRCで4度王者に輝き85年サファリラリーでトヨタセリカを駆り勝利したレジェンド)が、なんとWRCのトップクラスのマシンでデモ走行を披露。
モリゾウ選手は最新のラリー1カーで走行。
カンクネン選手のヤリスWRCの迫力にビックリして耳をふさぐ子供たち。カワイイ(笑)
走行直後、2台のマシンをギャラリーのところまで持っていてくれるサプライズ! お客様も大喜びです。
ということで陸別で3本のSSとデモランを撮り終え、雨に変わった夜のサービスパークへ戻ります。選手も続々と帰ってきました。
サービスパーク到着前に2本のタイヤ交換をしたラトバラ選手。「アグレッシブな走りをした」と本人も言っていましたが、パンクを起こすほど限界まで攻めた走りをしていたようです。これも世界中のラリーチームが期待する発売間近のGRヤリス・ラリー2を鍛えるため、あえて壊れるギリギリまで走ることで『もっといいクルマづくり』を実践しているということでしょう。
こちらはようやく今シーズンのニューマシン、スバルWRX S4で走ることができた新井敏弘選手。ボディサイズの大きさからGRヤリスやシュコダ・ファビアとコーナーの轍で上手くラインが合わないスバルだそうですが、新井選手のこの笑顔を見ると復帰戦で確かな手ごたえは感じている様子。スバルファンのみなさんは引き続き応援してくださいね!
19時を過ぎてサービスインした勝田範彦選手。
1日を走り終えて勝田選手の表情に笑顔はありません。ラトバラ選手と同じGRヤリス・ラリー2で戦いながら大きなタイム差をつけられた初日の結果に悔しさを滲ませます。
しかしご本人によるとWRCトップドライバーだったラトバラ選手が今回参戦してくれたおかげで、全日本選手たちとの明確なレベルの差を感じることができて、まだまだ自分はもっと成長できるはずだと確信したそうです。
今後もこうした形で世界のトップドライバーが日本で参戦してくれれば、全日本選手たちのレベルがもっともっと上がるので来年以降もぜひWRCドライバーの参戦を期待したいと、最後は日本のラリー界の将来を見据えたコメントに感動しました。
ってことで、夜明けから夜遅くまでタフに戦う選手やチーム。そしてラリーメディアの先輩たちのタフネスさを改めて感動して尊敬した、濃密なラリー北海道の土曜日でした!
ではまた、次回!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
Profile ピエール北川
三重県生まれ。名古屋市在住。モータースポーツ実況29年。 2013年SUPERGT、翌2014年SUPERFORMULAと両シリーズ公式の実況アナウンサーとして全国各地のサーキットで実況中
X(Twitter):https://twitter.com/Pierre_Kitagawa
HP:http://pierre-kitagawa.com/