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ハリウッド俳優不在の第49回“アメリカ映画祭” 「エディット・ピアフの内縁の夫」ギヨーム・カネが異彩を放つ

2023年09月10日 12:01  Techinsight Japan

Techinsight Japan

映画『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』で主演女優賞を総なめにしたマリオン・コティヤールの「内縁の夫」と紹介されてきたギヨーム・カネ(2018年8月撮影)
「ノルマンディー海岸の女王」と謳われるフランス北部のリゾート地ドーヴィルで現在、第49回「ドーヴィル・アメリカ映画祭」が開催されている(9月10日まで)。毎年、夏の終わりに開催される「ドーヴィル・アメリカ映画祭」では、“アメリカ映画祭”と命名されているだけあって、フランスにいながらアメリカ映画に焦点をあてるユニークな映画祭だ。ハリウッド俳優や監督がゲストとして招待されるのが恒例だが、今年はハリウッドのストライキと時期が重なってしまった。ストライキ期間中は映画宣伝が禁止されているため、アメリカ人スター抜きでの開催となったが、そんな中、一際輝いていたのが現地フランスの俳優陣であった。

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今年の映画祭審査委員長は、名実ともにフランスを代表し、ハリウッド映画にも出演経験がある俳優兼監督のギヨーム・カネが抜擢された。

ところで、今年50歳になるフランス中年男優の代表ギヨーム・カネをご存じだろうか?

1994年から俳優としての活動を始めたギヨームは、27歳の時にレオナルド・ディカプリオ主演の映画『ザ・ビーチ(原題:The Beach)』(2000年公開)に出演し、国際派俳優としての道を歩み始めた。彼の俳優としての地位を不動なものとした作品は、2003年公開の映画『世界でいちばん不運で幸せな私(原題:Jeux d'enfants)』で、フランスでは140万人を動員する大ヒット映画となった。日本でも2004年に公開されている。この作品で共演したのが、マリオン・コティヤールだ。ギヨームとマリオンは2007年から交際をスタートし、2011年には長男が、2017年には長女が誕生。フランスらしく、婚姻関係にはない事実婚カップルである。マリオンは1998年からスタートした映画『Taxi』シリーズに出演しているため、交際当時でも知名度はあった。


フランスでは、甘いマスクの爽やか青年として人気を博し、2002年公開の映画『僕のアイドル(原題:Mon Idole)』で長編監督デビューを果たすなど、俳優業以外でも成功していたギヨーム。マリオンも着実にキャリアを積んでいたものの、2006年までは「ギヨーム・カネの内縁の妻」というステータスであった。ところが2007年から立場は逆転。映画『エディット・ピアフ~愛の讃歌~(原題:La Môme, 英題:La Vie En Rose)』でマリオンは、アカデミー賞、セザール賞、ゴールデングローブ賞などの主演女優賞を総なめにした。結果、フランス国外でギヨームは「オスカー女優マリオン・コティヤールの内縁の夫」として紹介されるようになった。


その後、国際派女優としての道を着実に歩み続けたマリオンは、2016年公開の映画『マリアンヌ(原題:Allied)』でブラッド・ピットと共演を果たすが、ここで問題が発生する。ブラッドは当時、アンジェリーナ・ジョリーとの泥沼離婚劇が勃発中で、その最中マリオンは第2子妊娠という状況にあったため、ブラッドとの関係を疑われた挙げ句「お腹の子供は誰の子?」とまで報道されるようになった。そのためマリオンは自身のインスタグラムでギヨームとの子供であることを発表しなければならない事態となった。


しかしそんなゴシップや風評にも動じないのがギヨーム・カネだ。監督として、また俳優として順調にキャリアを積み、最新作『Le Déluge(邦題未定。「大洪水」の意味)』ではルイ16世を演じる。

ちなみにギヨームには離婚歴があり、2001年から2006年までの間はドイツ出身の元モデル、ダイアン・クルーガーと婚姻関係にあった。ダイアンも2004年公開の映画『トロイ(原題:Troy)』でハリウッドに進出し、同年公開の映画『ナショナル・トレジャー(原題:National Treasure)』で有名になった。

ダイアン、マリオンのいずれもギヨームという「伴侶」を得た後に、ドイツ、フランスという自国の枠を一足飛びに飛び越え、世界に知られる国際派女優となった。ギヨーム・カネ、なかなかの「あげまん男子」なのかもかもしれない。

しかし世界もいつまでもギヨームを「内縁の夫」と呼び続けることはできない。50代に突入し、甘いマスクの爽やか青年から、ダンディー路線に入りつつあるギヨーム。ハリウッド俳優不在の“アメリカ映画祭”で、圧倒的存在感を示したその円熟した魅力を世界のエンタメ業界関係者が放っておくとは到底考えられないのだ。
(TechinsightJapan編集部 リエコ)