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トヨタ“ピット引越し”の真相/カメラマン国本雄資/来季に向けた動きもetc.【WEC富士金曜Topics】

2023年09月09日 10:30  AUTOSPORT web

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TOYOTA GAZOO Racing・ヨーロッパによりフォトグラファーとしてメディア登録されている国本雄資
 2023年のWEC世界耐久選手権第6戦富士6時間レースは、9月8日金曜日に走行初日を迎えた。午前中にスタートしたFP1はウエット、午後のFP2はドライとなるなか、最速タイムは地元戦を迎えたトヨタGAZOO Racingが奪う形となった。

 そんな金曜日の富士スピードウェイのパドックから、各種トピックスをお届けする。

■ポルシェ963に「小さなトラブル」

 直撃が心配されていた台風は夜遅くに海上で熱帯低気圧に変わった。朝方は強い雨と風にさらされた富士スピードウェイだったが、午後からはドライコンディションで走行が行われるまでに天気は回復した。

 ポルシェLMDhのファクトリーディレクター、ウルス・クラトレは次のように語った。

「昨日の時点での予報は悪く、その後、更新されるたびに良くなっていった。今朝、天気予報士に聞いたところでは、予報と同じで、今朝はホテルを出るときに強風が吹いていたので少し怖かったが、その後はどんどん良くなっていった」

 ペンスキーのファクトリー2台と、ハーツ・チーム・JOTAとプロトン・コンペティションのカスタマー・ポルシェ963は、1日の間にいくつかの「小さな」トラブルに見舞われたものの、クラトレによれば、金曜の走行はポルシェにとって予想どおりのものとなったという。

■雨での走行を望んでいたキャデラック

 今週末、ニコ・ミューラーに代わってストフェル・バンドーンがドライブしているプジョー・トタルエナジーズの94号車プジョー9X8だが、テクニカル・ディレクターのオリビエ・ジャンソニーによると、11月の最終戦バーレーンではミューラーがステアリングを握ることになりそうだという。

 ミューラーが夏休み中に鎖骨を負傷したため、ここ富士ではバンドーンが代役を務めている。

 プジョー93号車のジャン・エリック・ベルニュは、前戦のモンツァでプジョー9X8が初表彰台を獲得したことについて、このプログラムにとっての「大きなマイルストーンだった」と語っている。

「チーム全体にとって大きな弾となった。昨年のモンツァで初レースをしてから、僕らはずっと苦労してきたんだ。長い道のりだったよ」

 キャデラック・レーシングのアール・バンバーは、雨となったフリープラクティス1ではキャデラックVシリーズ.Rにとって貴重な走行距離を稼いだ。彼はもっと雨天での走行を望んでいたという。

「富士での(キャデラックVシリーズ.Rの)初走行は、ウエットとなった。このクルマでウェット走行はあまりしたことがなかったから、今朝は多くのことを学ぶことができたよ。もう一度ウエットになっていたら、もっと多くの情報を学べたと思う」

■ケータリングが近いから?

 トヨタGAZOO Racingは、富士のピット位置を例年と変更している。以前はピット出口側のA棟端に位置していたが、今年はピット入口に最も近いチームとなった。

 これは、今季からタイヤウォーマーが禁止となったことが影響している。各スティントのスタート時にコールドタイヤを温める時間を可能な限り増やすための、戦略的決定だという。トヨタのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、「(チームへの食事が供される)富士のWEC共用ケータリングユニットに最も近いガレージだから」とジョークを飛ばしている。

 トヨタGAZOO Racingの元リザーブドライバーで、最近スクーデリア・アルファタウリのF1シートを失ったニック・デ・フリースは、トヨタのLMHプログラムにおいて、興味を持つドライバーの「リストに戻った」とバセロンは言う。

「もちろん、彼のことはまだ知っている。彼は他の数名のドライバーとともに、我々のリスト上にある」

 トヨタGAZOO Racing・ヨーロッパのマネージング・ディレクターを務めるロブ・ロイペンは、宮田莉朋のケッセル・レーシングからのWECデビューについて 「良い機会 」であると語った。

「我々としては、彼がここでどのように成長し、どのようなレースをするのかを見ることができる」とロイペンは述べている。

■“右肩下がり”のプレマ・レーシング

 LMP2クラスに参戦しているプレマ・レーシングは、2台のクルーがランキング8位と9位に沈む苦しい状況ながら、2度目のLMP2シーズンを最高の形で終えたいと思っている。

 チーム代表のレネ・ロジンは、プレマ・チームはパフォーマンスに満足しているものの、アクシデントやペナルティを含むさまざまな後退が結果に影響していると語った。

「富士とバーレーンでは、パフォーマンスを最大化し、今年の序盤戦にやってきたことを発揮するために、とにかく回復を試みたい」とロジンは語っている。

「我々にとってはすべてが悪い結果となってしまっているが、シーズンを通してパフォーマンスは非常に堅実だった」

■ペナルティもろもろ

 インターユーロポル・コンペティション34号車のファビオ・シェーラーは、最初のセッションでピット入り口のホワイトラインをカットしたことにより、FP2で5分間のストップ・アンド・ホールドのペナルティを受けた。

 また、ノースウエストAMR98号車アストンマーティン・バンテージAMRのアレックス・リベラスと、チームWRT41号車のルイ・アンドラーデは、トラックリミットの違反があったことから、土曜日のFP3で同様に5分間のストップペナルティを命じられている。

■富士に現れた人々

 富士のメディアセンターには、2017年のスパとル・マンでトヨタGAZOO Racingのドライバーを務め、現在は全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGT・GT500クラスでドライブしている国本雄資の姿がある。

 彼は昨年に引き続き、フォトグラファーとしてWECのレースを撮影している。国内レース等でもたびたびコースサイドから撮影をしている国本は、今回TGR WECチーム代表の小林可夢偉の計らいにより、TOYOTA GAZOO Racing・ヨーロッパのカメラマンとして富士にいる。

 また、スーパーGT・GT500クラスに参戦中のジュリアーノ・アレジが、パドックで目撃されている。

 FP2のセッション後、アイアン・デイムスは、三浦愛、富下李央菜、バートン・ハナ、猪爪杏奈、高橋佳音、松井沙麗、早川杏樹という7人の日本の女性ドライバーをガレージに迎え入れた。

■11月にカタールでグループテストを実施

 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージング・ディレクターであるジョナサン・ディウグイドによれば、来年の開幕戦カタール1812kmに先立ち、今年の11月にポルシェはロサイル・インターナショナル・サーキットでのグループテストを実施するという。少なくとも5~6チームが参加する予定とのことだ。

「(最終戦バーレーンと)距離は近いし、(WECのロジスティクスを担う)DHLやミシュラン、そしてこれらすべてのチームがバーレーンからカタールまでの移動方法を考えてくれるだろう」とディウグイド。

「おそらく(プロローグと開幕戦に向けて)カタールに荷物を残すことになると思うが、チャンピオンシップのために必要なクルマやスペアなどは空輸する。コスト面でも、二酸化炭素排出量の面でも、できる限り多くのものをカタールに残すことができるよう、ロジスティクスの効率化を考えている」