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スバルの新車「レイバック」に試乗! 「レヴォーグ」とは別物?

2023年09月08日 11:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
スバルの新型SUV「レヴォーグ レイバック」に一足早く試乗してきた。レイバックは単に「レヴォーグ」の車高を上げただけのクルマなのか。車高が上がった分、走りにネガな影響が出ているのでは……。そんな不安をお持ちの方に、ぜひともお伝えしたいことがある。


○完成度の高い「レヴォーグ」をリフトアップ?



スバル「レヴォーグ」に新たなSUVモデル「レヴォーグ レイバック」(以下、レイバック)が追加となる。デビュー前の8月末、新潟県佐渡島のクローズドコースで行われたプロトタイプの試乗会に参加することができた。



レヴォーグは日本にステーションワゴンブームをもたらした「レガシィ ツーリングワゴン」の後継モデルとして2014年に登場したスポーツワゴンだ。海外市場を見据えた結果、レガシィが年々大型化したことで、日本国内で使用するユーザーのニーズに合わなくなってきたことからレヴォーグが生まれた。



初代レヴォーグのディメンジョンは当然ながら、「インプレッサ」より少し大きく、レガシィよりは小さいといった抜群のサイズ感。水平対抗4気筒の1.6Lと2.0Lターボエンジンに「リニアトロニック」と呼ばれるCVT、さらにシンメトリカルAWD、「アイサイト」といったスバルのお家芸的装備を満載したことで、確固たる立場を確立することができた。



2020年に登場した2代目もキープコンセプトで、ボディをいたずらにサイズアップすることなく、アイサイトをブラッシュアップした「アイサイトX」にすることで先進安全運転支援機能を強化。エンジンは水平対抗の1.8Lと2.4Lのターボに換装することでパワー感と燃費を向上させた。大型のセンターディスプレイを採用したデジタルコックピットを導入するなど各機能をレベルアップさせることで、スバルのフラッグシップワゴンとしてスバリストたちのハートをガッチリとつかんだ。


そんな2代目レヴォーグをリフトアップして、クロスオーバーSUVスタイルに仕上げたのが今回のレイバックだ。



サブネームの「レイバック」(LAYBACK)は「LAID BACK」(ゆったりした、くつろいだ、細かいことにはこだわらない)を語源とした名称で、「スバルの豊富なSUVラインアップの中で、唯一無二の存在となるSUVとして、日本市場向けに新たに開発したモデル」と紹介している。


○アウトドアではなく都会派を追求?



レイバックのボディサイズは全長4,770mm、全幅1,820mmで、基本的にはベースとなったレヴォーグとほぼ変わらない。大きく異なるのは、全高が70mm高い1,570mmになったこと。最低地上高を55mmリフトアップして200mmにしたことによる車高アップだ。


何より驚いたのは、レイバックの商品としてのポジショニングだ。アウトドアのイメージが強かったスバルが、今まで手薄だった新たなマーケットを狙い、「都会的なイメージ」を持つクルマとして開発したのだ。



レヴォーグのリフトアップ版というから、てっきりインプレッサと「クロストレック」の関係のように、ブラックの樹脂パーツを多用することでよりタフなイメージを強調する仕上がりにするのかなと思っていたのだが、その予想はいい意味で大きく裏切られた。


エクステリアを見ると、フロントグリルのエンブレムから左右に伸びるサテンメッキのウイングが「コ」の字型ヘッドライトの内側まで張り出す形で伸びていて、ちょっと上質なイメージに。バンパー下から前後のフェンダー、サイドスカートに続くブラックのクラッティングは割と控えめな形で装着されている。

一方のインテリアは、ブラック/アッシュの2トーンにカッパーステッチをいれたトリコット/ファブリックのシートによって、落ち着きと上質さのある都市型SUVらしい雰囲気に。室内やフラットなラゲッジスペースは、ベースモデルと変わらず使いやすいレイアウトを踏襲しているが、車高アップによってラゲッジの床面は70mmほど高くなっている。


○走安性と乗り心地、コスパも最強



試乗会場となったのは、佐渡島にある大佐渡スカイラインだ。島の協力によって、白雲台の交流センターからスカイライン展望台までの3.5kmが貸し切りとなっていた。そこをプロトタイプのレイバックで2往復、合計約14kmを走った。



走りは結論からいうと「もう最高!」といってもいい感じ。なかでも、55mmのリフトアップによりストロークを増した足回りのセッティングが絶妙だった。


レイバックは超高速域の走行を必要としない国内専用モデルらしく、少し柔らかめのバネを採用している。そのままだと走行中にフワフワしたり、コーナーで姿勢が乱れたりするのだが、レイバックは専用チューニングを施したリ、バウンドスプリング付きのダンパーを組み合わせたりすることで、ネガな影響をつぶしている。



試乗コース内には、コーナリング中に大きめの段差がある場所が2カ所ほどあったのだが、通過時にはまさにレイバックの足のよさをはっきりと体験することができた。


リバウンドスプリングは、バウンドストローク時(ダンパーの縮み側)には作用せず、リバウンドストローク時(伸び側)にだけスプリングの反発力が加わる構造で、リバウンドを抑えるという機能を持っている。そのため、コーナー内側のサスのストロークが抑制され、結果として車体のロールが大きくならないのだ。同じ場所を通過するレヴォーグと比べても、姿勢変化の差が少ないのがわかる。コーナーでは最小限のロールしか許さず、大きな段差を通過しても揺れが一発で収まるという操縦安定性と、良路での柔らかい乗り心地を両立しているのがレイバックの特徴だ。



搭載するエンジンは最高出力130kW(185PS)、最大トルク300Nmを発生する1.8Lの水平対抗直噴4気筒ターボエンジン「CB18型」の一択。走ってみた印象からいうと、クルマとエンジンの相性はこれが一番だと思う。パワフルな2.4Lターボだと、エンジンが速すぎて足回りとのバランスが崩れてしまうはずだ。まあ、燃費面を考えれば、マイルドハイブリッドの「e-BOXER」搭載モデルがあってもよかったかな、という気はするが……。


レイバックの予約受け付けは9月7日に始まっている。正式価格は今のところ不明だが、上級グレード「リミテッドEX」はアイサイトX、フル液晶メーター、12.3インチ大型ディスプレイ、ハーマンカードンサウンドシステムなどを標準装備し、リニアトロニックとシメントリカルAWDシステムを搭載しながら300万円台だというから、コスパは最強。そして、あの乗り心地だ。



都会派SUVといえば、すでにブランドを確立したトヨタ自動車「ハリアー」など強敵も多いわけだが、乗ってみればレイバックの良さは間違いなく伝わると思う。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)