今から25年ぐらい前、パチンコホールには現在ほどアニメ版権モノは跋扈していなかった。メーカーごとに独自の機種をリリースするのがマシン作りとしては王道で、その会社ごとにオリジナルのキャラクターで勝負をするというのが当たり前だった。
三洋の『海物語』のキャラクターをイメージすれば分かりやすいかもしれない。大抵のメーカーは、それぞれに頭をひねって、ユーザーウケを狙ったキャラを創出していたのだ。
それこそ北電子の『ジャグラー』とか、山佐の『パルサーカエル』とか。4号機時代の終わりには大都技研の『吉宗』、『番長』といった具合に、やはり独力で人気キャラを創出している。とにかく、今ほど版権モノは多くなかったのである。
流れが変わったのは5号機時代になってから。この辺りから『新世紀エヴァンゲリオン』や『サクラ大戦』などの版権モノタイアップが突然増えてきた。従来でも『必殺仕事人』や『ウルトラマン』など、ユーザー層に合わせた版権作品はホールデビューしてきたが、アニメ系。しかも割と新しめのものとなると、当時はかなり珍しかったのである。(文:松本ミゾレ)
昔はアニメ版権モノを打つのが恥ずかしかった!
それこそ、これは僕の思い出になってしまうが、とにかく5号機時代になってアニメ系のパチスロが台頭していくのを、当初は戸惑いの目で見ていた。ビタ押しだの機械割だの言っていた手前、萌え要素のあるアニメなんかがパチスロになろうと打つ気にならなかったのである。
どうやら最初に出たパチスロの『エヴァ』はかなり甘かったらしいが、僕は一切触ることがなかったし、オタク臭い人たちがホールに増えていくのを見て辟易すらしていた。
が、それも過去のこと。『エヴァ』はこの後パチンコでもデビューし、パチンコ、パチスロいずれもシリーズ化するほどの大ヒットを記録する。
何なら僕がそれ以前に打っていた『パチスロ北斗の拳』や『巨人の星』だって思いっきりアニメなので、そもそもパチンコファンとアニメ版権は相性が良かったのかもしれない。そして現在では、右を見ても左を見ても、有名無名問わずアニメ作品とタイアップした機種がホールにひしめいており、逆にメーカーオリジナルのコンテンツキャラが登場する機種が激減した。
これも時代の流れ。オタクをユーザーとして取り込もうとしてある程度成功した、メーカーの企業努力の成果なんだろう。実際、「版権モノだから打つ動機になった」とする人なんてのもいるものだ。
「結局6万ぼったくられたけどパチンコすげーって思ったよ」
先日、5ちゃんねるに「お盆に初めてパチンコやった話」というスレッドが立っていた。
スレ主は全くのパチンコ初心者で、ふとパチンコを打ってみようと思い立ち、お盆の時期にホールを訪れた。
ただ、何を打てばいいか分からないので、アニメで観たことがあるエヴァにしたのだという。
「リーチにアスカしか出てこなかったけどシンジで当たりインパクトラッシュとかいうのになって何回か当てると高橋洋子の『Final Call』って曲が流れた。エヴァ好きだけど初めて聞いた曲にびっくり。パチンコじゃないと聞けないじゃんと思ったけどやってなかったワイが悪いんやな。神歌だった。それと同時にパチンコやらなかった自分を恥じた。
高橋洋子の新曲聞けるのコレだけじゃんと思いパチンコって先に行ってるんだなって思った。結局6万ぼったくられたけどパチンコすげーって思ったよ。でも新劇じゃないのは何故?www」
と、こんな感じで6万やられたにも関わらず、自分が知らない新曲が流れたことに大興奮していた。お盆時期なんだし、そりゃ6万も負ける調整だったんだろう。この人に関してはビギナーズラックは発動しなかったようだ。
それにしても、僕なんかは常々、好きな版権作品がパチンコになって、大当たり中に知らない曲が流れてもどうでもいいって思ってたクチだけど、逆にそういう新要素に驚きと感動をおぼえる人もいるとは。
こういう話を目にしてしまうと、あながち新曲だの描き下ろしリーチだのも無駄ではないのかな? という気もしてくる。でもどうせ音量下げて打つし、基本的にセグや釘んとこしか見てないし、やっぱ僕はどうでもいいかな……。
それにしたって、初めてのパチンコで6万も負けたのに新曲に出会えたことで大喜びするとは。こういう人ばかりなら、パチンコホールも安泰なんだろうけどね。
逆に言えば初心者からも6万奪い取る危険性を持つ遊技機がずらりと並んでいるのがパチンコホール。改めて怖いなって思っちゃうところだ。まあ、それでも昔よりはマシなんだろうけど。今、パチンコで負けが込んで借金したり、自殺する人の話ってあんまり聞かなくなってるし。