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VIPERADE『VE3-P』。ポケットオーガナイザーに詰め込んで持ち歩く日常の必携品とEDCカルチャー

2023年09月06日 11:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
EDC(Everyday Carry)とは、日常的に携行するアイテムやツール、またはその習慣自体のことを指す言葉。


個々人の生活スタイルによってEDCは千差万別だが、一般的には財布、スマホ、鍵、ペン、ノート、マルチツール、常備薬などが挙げられ、より効率的で準備ができた、現代的な生き方を象徴するものということもできる。

○■いつの時代も気になる“他人の持ち物”。人間の本質をつくEDCカルチャー



僕が2009年まで編集長を勤めていた「smart」という男性ファッション誌では、やれば必ず受ける鉄板企画がいくつかあった。

そのひとつが“あなたのカバンの中身、見せてください”というもの。

人気タレントやモデル、おしゃれ有名人(略して「おしゃゆめ」)という符牒で呼んでいたファッション業界のクリエイター、そして道ゆくスタイリッシュな一般人まで、のちにできた言葉で表すなら、いわゆる“インフルエンサー”に普段持ち歩くカバンの中の私物を披露してもらう企画だ。



当時はまだ認識されていなかったが、昔からあるこうした“私物拝見”企画も一種のEDC思考に基づくものである。

そしてここ10年ほどで、自分のEDCを整えたり披露したり、また他人のEDCを見て楽しんだりする文化がより大きく発展している。



そのきっかけを作ったのは、トム・サックスというアメリカの現代アーティストだ。

彼は2012年、ニューヨークに構える個人スタジオで働くアシスタントに向け、10個のルール=Ten Bullets(テン・ブレッツ)を定めた。

そのうちのひとつが “Always Be Knolling(常に整理整頓する)”というもので、制作チームのメンバーはこのルールに従い、使い終えた道具を作業台に直角に配置するようになった。



彼らが四角形に置いたギア類を真俯瞰で撮影した写真はとても美しかったため、徐々にこの手法を真似し、自分の必携ギアを並べて撮影、SNSに投稿する人が出はじめる。

そしてEDCという言葉とともに、ネット上の新しいサブカルチャーとして世界中に普及したのだ。



EDCカルチャーが広がったのはSNSの発達に並び、以下のような要因が考えられる。

・個性を表現する手段として、ライフスタイルを持ち物に投影したい人が増えたたこと。

・人に見せて自慢したくなる、デザインや機能性に優れたアイテムをネットで見つけやすくなったこと。

・自然災害や社会的な不安が高まるなか、緊急事態に備える意識が高まったこと。

などである。

○■ポケットオーガナイザーに入れて持ち歩く僕のEDC、平日バージョン



それではここから一つの例として、僕のEDCを紹介しよう。

“ポケットオーガナイザー”と呼ばれるEDC用ポーチと、そこに詰め込んでいる小さな七つ道具だ。



ポケットオーガナイザーは、VIPERADEという中国メーカーの『VE3-P』。

実測値でタテ約15cm、ヨコ約10cmという小型ポーチながら、ファスナー付きの大ポケットが一つ、スマホサイズの中ポケットが一つ、縦型小ポケットが二つあり、日常使いにちょうどいい収納力を持つモデルだ。


僕がこのポケットオーガナイザーに収納し、常日頃持ち歩いているアイテムは9つ。


1 RHODIAのメモ帳…「N°11 – 5×5」というロディアのレギュラーシリーズの中では小さめのもの。ふとしたアイデアを記録しておくには、やはり手書きの方がいい。

2 名刺入れ…もらい物でどこのメーカーかわからないが、開くとハトが飛び出す。名刺交換の際にちょっとした会話の糸口になる優れもの。


3 こんにゃく閻魔様…以前住んでいた家に近い、東京・文京区にある源覚寺の閻魔様を形どったお守り。なぜか気になって、ずっと持ち歩いている。

4 LVFANのApple Watch充電器…いざという時、コンビニでレンタルできるライン付きモバイルバッテリーでスマホは充電できるが、Apple Watchは専用充電器が必要なので。

5 小さな耳かき…耳の穴の中は常に清潔に保ちたくて、外出先でも気になったらトイレの個室内で使う。綿棒だと持ち歩くうちボロボロになってしまうので、コンパクトな金属製耳かきを。

6 Penonのボールペン…サステナブルな木材を使用した、コンパクトなボールペン。書き味がよく、自分っぽいメガネの飾りも気に入っている。

7 VICTORINOXのネイルクリッパー…爪がキーボードやスマホの画面に当たる感触が嫌いで、常に短く切っているため必需品。非常にコンパクトなうえ切れ味最高。

8 薬入れ…カプセル剤の形をした常備薬入れ。中身は頭痛薬2錠と鼻炎薬1錠、高血圧薬1錠、そしてゴム製歯間ブラシが3本

9 カード類とお札…免許証やクレジットカードなど7枚といくらかのお札。最近はモバイル決済ばかりなので財布は持たない。

という感じです。

すべて詰め込むとポケットオーガナイザーはパンパンになるが、大事なものがひとまとめになっていると外出の際にとても便利で安心感がある。


さらにその日の仕事内容などによって、ペン型のICレコーダーや小型のマルチツールなどをプラス。オーガナイザー外装部のベルトに装着する。

また、本来はストラップをつけるために施されているオーガナイザー上部の2つのループに、カラビナで家の鍵と車の鍵を装着。

こうしておけば鍵がカバンの中で迷子になることもない。


このVIPERADE『VE3-P』には、軍ものによく見られるワッペン装着用のベルクロが施されているので、僕は好きなバンドのロゴなどを貼って楽しんでいる。

今日はドイツのノイズバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのワッペンを。

なかなかいい感じだ。


○■休日はEDCの内容が少しだけ変わる



上記でご紹介したのは、僕の平日のEDCセットだ。

主要なモノはかぶるが、休日は中身を少し入れ替えるので、もう1セッティングだけ、ご紹介したい。


平日セットにはなかったものだけを詳述する。



1 LED LENSERのフラッシュライト…コンパクトな『P2』という機種。デュアルライフ(二拠点生活)を実践している僕は、夜中に真っ暗闇な山の家に移動することがある。そんなときは、小さくて明るいフラッシュライトが必携品。

2 IMCOのライター…同じく山の家に行くときやアウトドアで遊ぶとき、虫刺されしやすい体質なので蚊取り線香を必ず焚く。よってライターも忘れてはならない。

3 モンブランの万年筆…大事にしている万年筆は、いじったり文字を書いたりするだけで心が癒やされるので、実用品というよりも休日用のメンタルアイテム。

4 PUMAのスーベニアナイフ…刃渡5cmと3cmの2本が折り畳まれているドイツ製ナイフ。海外でEDCといえばナイフがメインだったりするが、日本の場合は銃刀法と軽犯罪法でどんな小さなナイフでも、用もなく持ち歩いていると摘発されることがある。だからこのナイフは、バーベキューをやる日や果物を持っている日など、本当に必要なときだけEDCに加える。もはやそれは“EDC”でもないのかもしれないが、ナイフがないとEDC紹介は格好がつかない気がしたので、蛇足ながら付け加えてみた。



ワッペンは、ハッピー・マンデーズのアルバムジャケットに由来するカラフルな「MADCHESTER」ロゴに付け替えたりして。


こうやって自分のお気に入り小物をチマチマといじっているだけで、なんだかとても楽しく、時間が経つのを忘れることがある。

また、EDCのなかに新しく加えるものがないかと考えたり、ネットで探したりするのも実に有意義な時間だったりするのだ。



SNS上には、世界中の同好の士によるEDCサークルがたくさんあるので、今回の当コラムでピンときた人は、ぜひ見てほしい。


文・写真/佐藤誠二朗



佐藤誠二朗 さとうせいじろう 編集者/ライター、コラムニスト。1969年東京生まれ。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長。カルチャー、ファッションを中心にしながら、アウトドア、デュアルライフ、時事、エンタメ、旅行、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社 2018)、『日本懐かしスニーカー大全』(辰巳出版 2020)、『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック』(集英社 2021)。ほか編著書多数。 この著者の記事一覧はこちら(佐藤誠二朗)