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学習系動画アプリで「ちゃんと勉強ができる」子どもは偏差値55以上 その理由は……

2023年09月05日 16:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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学習系動画アプリを使う子どもが増えており、「動画アプリだけで成績が上がるのでしょうか?」という相談が保護者から多く寄せられています。これに対し私は「上がる子どもと、上がらない子どもがいる」と答えています。また「全てを動画アプリに頼るのではなく、必要なところだけ使う」ことをお勧めしてます。

皆さんは、成績が上がる子どもと上がらない子どもの違いはどこにあると思いますか。個別指導塾の経営者でプロ家庭教師である私が、学習系動画アプリをどのように使いこなせば良いかを解説します。(個別指導塾経営、プロ家庭教師:妻鹿潤)

必要なものを、必要な分だけ、安く選択する時代に

学習系動画アプリの良さは「スマホさえあれば、自宅など好きな場所・好きな時に操作できる」手軽さに加えて、「停止や繰り返しができて、何度も好きなペースで見られる」こと、「ピンポイントで見たい内容だけ見られる」ことです。そして何よりも「安価なこと」が魅力です。

代表例としてはリクルート社の「スタディサプリ」がありますね。スタディサプリは、プロ講師による小学校高学年から大学受験生までの5教科18科目の授業動画4万本が、月額2178円から見放題という手軽さで人気です。2020年時点でのサービス累計有料会員は194万人で、学校が導入しているケースもあります。

スタディサプリに限らず、このようなITを使った教育サービスは全般的に伸びており、今後も増えることが予想されてます。保護者の皆さんも子どもの勉強にうまく役立てていきたいところだと思います。

また、学習系動画アプリというと動画で授業を受けるものを真っ先にイメージすると思いますが、今はそれだけではありません。特徴的なものをいくつか簡単に紹介します。

「Rakumon(ラクモン)」は、分からない問題があった時に写真とテキストを送れば、先生が解き方と解答を教えてくれるというものです。小学生から大学受験生までが対象です。

ウェブカメラで勉強中の姿を映し合うことで、自宅にいながら自習室にいるかのような緊張感が生まれる「オンライン自習室MyroomNeo(マイルームネオ)」もあります。チャットで日々の勉強を報告し合えるので、刺激を受けたり励まし合ったりしながら勉強できます。

ところで、これまでは学校以外で勉強するといえば、塾が真っ先に選択肢に上がったと思います。塾では授業や質問対応だけでなく、定期的に模試が行われ、進路相談や個別にカリキュラムを作ってもらえるなど「all in one」で解決してもらえます。ただその分、金額も割高になります。それが今では「必要なものを、必要な分だけ、安く選択する」時代に移りつつあると言えるでしょう。

受動的に聞くのではなく、頭を使って理解しにいく姿勢が必要

一見すると学習系動画アプリは万能なようですが、あまり向いていない子どももいます。

多くの子どもを見てきた経験上、「学習系動画アプリで『ちゃんと勉強ができる』子どもは、感覚的に偏差値55以上だ」と考えてます。もちろん偏差値55で明確には分けられませんが、この偏差値近辺からどうしても「理解力」か「集中力」のどちらかで限界があるように感じます。

学習系動画は分かりやすく説明してくれますが、「受動的に聞くのではなく、頭を使って理解しにいく姿勢」が必要です。停止や繰り返しができると言っても「理解するには一定の力」が欠かせません。

また、60分から90分の動画を見てノートにまとめ、問題を解くことに、相当に集中力を要します。目の前に人がいると、人間は「見られている」「何か言われる・思われる」と程よい緊張感があり、集中力が続きやすいですが、動画となるとその緊張感が落ちてしまいがちです。成績が中・下位の子どもは、勉強への苦手意識が大きいことが多く、人がいないと集中力が続かないということに繋がりやすくなります。

実際、私も前職がオンライン予備校を経営する会社でその実態を見てきましたが、明らかにオンライン予備校は偏差値55から60の生徒をターゲットにして戦略を立てていました。一方で偏差値60以上になると、大手予備校のハイレベルでカリスマ的な先生の授業を生で見て勉強したいという傾向が強く、オンライン予備校は偏差値55から60ゾーンが最も相性が良いように感じました。

勉強が苦手な子どもでも、自分の好きな動画なら勉強に向かえることも多い

それなら勉強に苦手意識が強い子どもには、学習系動画がお勧めできないかというと、そうではありません。特に今はYouTubeに面白くて良質なものがたくさんあります。例えば、ボカロ好きな子どもなら、Vocaloid初音ミクが唄う「ボカロで覚える中学理科」「ボカロで覚える中学英単語/数学」などがあります。

「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」といったアニメが好きな子どもには、セリフを英語で覚える動画が良いかもしれません。特に語学系は動画で勉強するとネイティブの発音が聴けるので、リスニングやスピーキングの対策にもつながります。

また発達障害の子どもには、視覚優位の場合は動きが活発でイメージで勉強できる動画や、聴覚優位であれば効果音や音声が面白いと思うものなどを選ぶと良いでしょう。

子どもの特徴に合わせた動画を見ることで、参考書や授業は「勉強」という感じがしてやる気が起きない子どもでも、好きな動画なら勉強に向かえることも多いです。勉強が苦手な子どもを持つ保護者には「子どもの好きなもの、相性が良いもので何か良い動画はないか」という視点で探すことをお勧めします。

これからは学習系動画と対面授業の良いところを合わせたハイブリッドな時代

このように学習系動画には様々な良さがありますが「対面授業でないとできないもの」もあります。それぞれの特徴を踏まえて、目の前にいる子どもたちにどのようなアプローチが最適かを模索する必要があると思います。

さらに今後は学習系動画と対面授業の良いところを合わせたハイブリッドな時代になりそうです。例えば予備校や塾の先生の授業の動画を学校の先生と生徒が見て、学校の先生がその内容を子どもたちに落とし込んだり、考えさせたりするというように、それぞれの良い側面を柔軟に取り入れる時代になっていくのではないでしょうか。

今はちょうどその走り出しの時期で、学校や教育産業もそれぞれが試行錯誤している状態です。保護者も子どもたち自身も、学習系動画アプリなどITを使った教育サービスに日頃からアンテナを張ることが大切だと現場を見て感じています。