かわぐちかいじ原作による実写映画「沈黙の艦隊」の完成報告会が、本日8月24日に東京・グランドハイアット東京で開催された。
【写真】映画「沈黙の艦隊」完成報告会で笑顔を見せる大沢たかお、玉木宏ら。(全29枚)9月29日に公開される「沈黙の艦隊」は、海上自衛隊一の操艦技術を誇り、シーバットの艦長に任命された海江田四郎が、反乱逃亡を起こすところから始まる物語。完成報告会には原作者のかわぐちをはじめ、海江田四郎役の大沢たかお、深町洋役の玉木宏、南波栄一役のユースケ・サンタマリア、山中栄治役の中村蒼、入江蒼士役の中村倫也、速水貴子役の水川あさみ、曽根崎仁美役の夏川結衣、海原渉役の江口洋介、吉野耕平監督、Amazonスタジオのダナエ・コキノス氏が登壇した。
同作は“Amazon Original映画”として、Prime Videoが初めて製作する日本の劇場版映画。コキノス氏は「世界的に人気のマンガであり、実写化不可能だと言われてきた『沈黙の艦隊』の映画化に製作として携われたことを大変光栄に思います。それと同時に、このレガシーのマンガをしっかりと実写化しなきゃいけないという責任も感じておりました」と話し、キャストとクリエイター、同作に協力した防衛省と海上自衛隊へ感謝の言葉を続ける。
主演としてだけでなく、企画を立ち上げた松橋真三とともにプロデューサーの役割も担った大沢。実写化のプロジェクトについて「原作を知ってる人から見ればとてもハードルが高い。それはスケールの大きさ、そしてタブーに切り込まなくてはいけないから。実現は難しいと思いながら、時間をかけながらゆっくり進めました。その中で、Amazonスタジオさんをはじめ、ここにいる皆さんに協力していただき、まずスケールを確保できた。そして防衛省や海上自衛隊の皆さまに『今だからこそいいんじゃないか』と快い言葉をいただいて、プロジェクトが始動していきました」と振り返る。吉野監督は「潜水艦というのは窓が1つもなく、かなり特殊な環境。その中で非常にスリリングな物語が展開され、地上でもまた同じようにスリリングなやり取りが続いていく。この原作をどう脚本化し、どんな形にしていこうか悩みました。ですがキャストの方々の熱いエネルギーと、何よりもこれを形にしたいという思いのスタッフによる技術が、今日の公開に結びつけてくれたのかなと思います」と述べた。
かわぐちは映画の感想を聞かれ「マンガも映画も、人間が生きてないとその世界が嘘八百になってしまう。映画で海江田艦長を見たとき、『海江田艦長が生きている』と感じました。海江田艦長が動くと、周りの人物もみんな生き生きしていた」とキャストの力を賞賛。「それと潜水艦の力。本物の圧をひしひしと感じました」とも述べる。さらに「原作では余計な枝葉と言いますか、物語の要素が散らばっているんですが、そういうものを映画ではきちんと削ぎ落としてテーマにピシッと焦点を合わせていた。その監督の力にも感動しました。自分のマンガの面白さを再確認させていただいたという気持ちでいっぱいです」と伝える。またかわぐちは映画では海江田と深町がなぜライバル関係になったのかが説明されていると、原作との違いもアピールした。
大沢は海江田について「原作だとすごく顔が凛々しくて男っぽく、骨っぽいんですが、残念ながら僕はけっこう真逆」と言いながら、自分なりに解釈して演じたとコメント。また玉木との共演について「船が違うので撮影はほとんど別だったんですが、声で会話するシーンで1日だけ一緒になりました。普通は録音やスタッフが代わりに読んだりで済ませるんですが、呼び出されました」と笑いを誘いつつ、たつなみの乗組員を演じるキャストたちの真剣な顔つきを見て改めて気持ちが奮い立たされたと語る。それに対し、玉木は「生で声を合わせてくださるのは非常に緊迫感も上がりますし、画としても表れてくると思うのですごく助かりました」と感謝した。
オファーを受けたときのことを聞かれ、玉木は「原作は30年ぐらい前のものですが、今読んでもまったく色褪せていない。でも、今だからこそできる技術もある。今、この映画を実写化することの意味を考えて撮影に臨もうと思いました」と回答。原作では男性だが、映画では女性として登場する速水役の水川は「実際、今の艦隊員は女性が増えてきていると伺っていました。副艦長、艦長の右腕という重要な立ち位置で女性が活躍することの覚悟や葛藤をしっかり自分の中で感じることで、女性にも観ていただけるような目線を作れればいいなと演じていました」と述べる。激動の有事に頭角を現す内閣官房長官を演じた江口は「あることが起こったときの、国民の揺れ動く目線になっている。観た人の動揺になっている」と自身の役どころを紹介した。
終盤、かわぐちは「原作の連載当時、女性の自衛隊員や閣僚はほとんどいなかったんです。だからマンガの世界も男性だけの社会で描いてきました。それから30年経って、この映画を観たら女性が活躍している。これは現代の物語だな、と思いました」とコメント。最後に大沢は「30年前の問題作。話題になった作品が、2023年に映画になり、おそらく議論を巻き起こす問題作になるのではと思います。ぜひ皆さんで議論していただきたいし、僕も皆さんの議論を耳にしながら、これから先どういうふうに自分が生きていけばいいのか、参考にさせていただきたい」と締め括った。
■ 映画「沈黙の艦隊」
2023年9月29日(金)公開
□ スタッフ
原作:かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」(講談社)
プロデューサー:大沢たかお、松橋真三
監督:吉野耕平
制作:クレデウス
配給:東宝
主題歌:Ado「DIGNITY」(ユニバーサル ミュージック)/楽曲提供:B’z
□ キャスト
大沢たかお、玉木宏、上戸彩、ユースケ・サンタマリア、中村倫也、中村蒼、松岡広大、前原滉、水川あさみ、岡本多緒、手塚とおる、酒向芳、笹野高史、アレクス・ポーノヴィッチ、リック・アムスバリー、橋爪功、夏川結衣、江口洋介
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