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『四谷大塚』女児盗撮事件の背景に「先生の立場を利用しているという感覚」元受験塾関係者が明かす“闇”

2023年08月24日 06:30  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

教育の道へ進んだ理由を「塾への恩返し」と語った、森崇翔容疑者そっくりの男性(YouTube『wakatte.tv』より)

 大手中学受験塾・四谷大塚の元講師の男・森崇翔容疑者(24)が、教え子の小学生の女子児童にわいせつな発言を強要し、下着を盗撮したなどとして逮捕された事件。

驚くべき塾講師たちの“闇”

 四谷大塚は森容疑者を8月10日付で懲戒解雇。講師らがスマホを教室内に持ち込むことを禁止するなどの再発防止対策を発表。

 逮捕を受けて「今回の不祥事を極めて重く受け止め、二度とこのような事態を起こさぬよう、全社を挙げて再発防止対策を実行してまいります」とコメントした。

 森容疑者は、他にも勤務先の同校舎で別児童への盗撮を繰り返し、撮影した写真はSNSのグループチャットで共有するなどの愚行に及んでいた疑いが持たれている。

 さらには高校時代の同級生が「当時から子どものわいせつ動画を撮影していた」と証言するなど、森容疑者の悪質極まる常習性が垣間見える。

 今回の事件の報道を受け、『週刊女性PRIME』は受験塾の実態を掴むべく、受験塾関係者3人の取材を行うと、驚くべき塾講師たちの“闇”が見えてきた──。

[証言1] 元大手中学受験塾Aの社員

 松永さん(37歳女性・仮名)は、2010年に大手中学受験塾Aに新卒で入社後、6年間勤務した。仕事内容は入塾等に関する保護者対応、塾講師の勤怠管理、日々の受付対応など、「実際の授業以外」の教室運営全般を担っていた。

 Aさんが勤めていた大手中学受験塾は、授業を行う講師は基本的に社員もしくは業務委託。アルバイトはいなかったという。

「まず塾講師業界というのは圧倒的に給与や待遇が悪い。就職活動でわざわざ塾業界を選ぶ人は当時もほとんどいなくて、私も難航した就活で唯一内定したのがここ(大手中学受験塾A)だったので、半ば仕方なく入社しました。

 教室運営は常に人手不足。都心の校舎であっても、講師以外のスタッフは1~2人で回しているような状況でした。情熱を持って授業を行っている先生ももちろんたくさんいますが、 “塾講師は社会性の欠けた人が多い”という偏見を持たれがちだという雰囲気は少なからず感じました」(元大手中学受験塾A社員・松永さん、以下同)

 今回の四谷大塚の盗撮事件について聞いてみると。

「“生徒を盗撮してはいけない”、なんて当たり前すぎて、職務規定なんかにはありませんよ。すべての教室にカメラはついていて、授業中の生徒や講師の様子はすべてリアルタイムで確認できるようになってはいました」

 松永さん自身もその大手中学受験塾Aには小学生当時に通っていたという。

「小学生のころ、自分が生徒として通っていたときの印象はとてもいいんです。学校とは別で通う放課後の受験塾は、習い事の延長のようなイメージで楽しかった。先生もみんないい人ばかりで、私の親も安心して通わせていたと思います。

 ただ自分がいざ就職したときに見えてくる景色は違いました。まず、講師は基本、生徒である小学生の子どもとしか接していないので、ビジネスマナーなどに欠けている人が多い。我々のような事務スタッフや保護者とのやりとりはうまくいかないことがしばしばです」

 松永さんの口から飛び出す塾講師の実態は、ネガティブなワードが続いた。これらはすべて、保護者や、まだ幼い生徒からはけっして見えてこないものだ──。

[証言2] 元大手中学受験塾Bのアルバイト講師

 井上さん(35歳男性・仮名)は大学生時代、大手中学受験塾Bで2年間、塾講師としてのアルバイト経験がある。そこでの勤務形態は驚くべきものだったと教えてくれた。

「時給が2000円超と良かったので続けていました。大学生活を楽しむ中での、割の良いアルバイトだと割り切って働いていたので特に不満を抱いたりはなかったですが、この生活を社会人として続けたいとはもちろん一切思えなかったですね。

 若い社員の講師たちも、みんながみんな高学歴だなんてことはない。校舎の責任者の校長と言われる立場の人は、パワハラ気質のおじさんでした。いつも授業の合間の休憩時間に、狭い給湯室でタバコを吸って、特大サイズのマウスウォッシュをラッパ飲みで口に含んでから授業に戻っていましたね。

 バイトしてみて思ったのは、絶対に子どもをここ(大手中学受験塾B)には通わせたくない、ってことですね。何の準備もしていない自分が、授業30分前くらいに校舎に来て、適当に授業するだけなんですから」(元大手中学受験塾Bアルバイト講師・井上さん、以下同)

 聞くと、井上さんは有名私立中高一貫校出身。アルバイト2年目の夏期講習で、社員も含めた全講師中、生徒からの評価で校舎1位の成績をとったことがあるという。

「バイト経験2年目の大学4年生、当時の自分は21~22歳。それが生徒からは、”先生って27歳くらい~?”なんて聞かれて、若くてやさしい先生、くらいにしか思われていない。

 ちなみに、”自分がアルバイトの大学生であること”は生徒には言ってはいけないという決まりがありましたね。私は小5の算数のクラスを担当していたのですが、夏期講習など、授業のコマ数が増えて講師不足に陥ると、”井上、ちょっと今日、国語と理科もお願いできるか”みたいなことを校長に言われて(笑)。

 まぁ教えられるんですけど、普段は算数を教えている自分が、急に国語の授業で”小説内での主人公の気持ち”を心情語から読み取って解説し始めるんだから、これ塾として大丈夫か?とは思っていました」

 実はこれはまだいいほう。塾講師アルバイトの求人サイトを見ると、「頭が良くなくても塾講師はできる! なぜなら勉強のできない子たちの気持ちがよくわかるから♪」なんて目を疑うような記事がわんさか出てくるのだから。

[証言3] 元大学受験塾Cのアルバイト講師

 最後の証言は、これまでの中学受験塾ではなく、大学受験塾Cで講師経験のある谷口さん(33歳男性・仮名)。国立大学医学部在学中に、医学部志望向けのクラスでアルバイト講師として、数学と物理を教えていたという。

 大学受験塾Cは、多くの講師が現役の国立大学生や医学部生であることを売りにしている。もっとも学習塾で講師に求められるものが大きい大学受験において、1~2年前に大学合格を勝ち取った学生のほうが講師として優秀である、という考えに沿っているという。

 ただ、つまり18歳の高校3年生の女子を、19歳の男子大学生が講師として教える、ということが起こり得てしまうのだ。となると──。

「僕は医学部在学中の6年間、大学受験塾Cでアルバイトで講師をしていましたが、高3の女子生徒と付き合ったことが2度あります。生徒といっても、たかだか2~3歳下とかですからね。

 学生講師も、生徒たちも、どの講師と誰が付き合ってるとか、あの講師が誰に手を出して揉めてる、とか日常茶飯事でした。当時は講師である自分も生徒もまだ若いので、特に違和感はありませんでした」(元大学受験塾Cアルバイト講師・谷口さん、以下同)

 四谷大塚のような事件が起こり得るかを聞くと。

「さすがに講師と生徒、というのはなかったと思いますが、教室が入っているビルの別フロアの多目的トイレで生徒同士が、なんて話はありました。小学生の生徒と塾講師、というのと、僕らがいた環境はまた全然違うとは思いますが、講師がどこかで”先生の立場を利用している”という感覚は正直共通しているものがあると思います」

 もう十分に分別のつく年頃の恋愛とはわけが違う。

 取材して見えてきたのは、塾講師という職業そのものに、構造的な問題点がはらみやすいということ。

 将来のために子どもたちが学ぶ場が、性犯罪の温床になることなど言語道断である。