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タムロン社長が辞任、会社経費を女性に私的流用…どんな法的責任に問われる?

2023年08月23日 14:11  弁護士ドットコム

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カメラレンズ大手のタムロンは8月22日、代表取締役社長の辞任を発表した。


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タムロンによると、前社長は少なくとも過去5年間、月に複数回にわたって、ある女性が関与する飲食店で飲食して、費用を会社に負担させていたことが発覚した。



今年7月、前社長が出張に女性を同伴させて、会社の経費を私的に流用したという内容の内部通報があったことがきっかけでわかったという。



タムロンは事態を「極めて深刻」に受け止めて、会社から独立した外部の専門家などで構成する調査委員会を設置して、事実の調査をすすめるとしている。



今回のような経費流用はどんな法的責任に問われるのだろうか。元検事の西山晴基弁護士に聞いた。



●特別背任などの罪に問われる可能性

今回のケースのように取締役が会社のお金を私的流用した場合、特別背任罪や業務上横領罪、詐欺罪に問われる可能性があります。



いずれも10年以下の懲役に処せられる重い罪であり、被害金額が大きい場合には、一発で実刑になる可能性があります。



いずれの罪に問われるかは、私的流用の方法により変わってきます。ざっくりと説明すると次のようになります。



特別背任罪:自分の職務権限に基づいて会社のお金を私的流用した場合業務上横領罪:会社のために保管していたお金を私的流用した場合詐欺罪:自分に出金権限があるかのように装って、会社の預金口座からお金を引き出して私的流用した場合



このうち特別背任罪について補足すると、背任とは、自分や第三者の利益を図る目的で、会社の任務に反して、会社に損害を与える行為をいいます。



たとえば、銀行の融資担当者が、共犯者がいる融資先に対して、共犯者から見返りを得る目的で「回収見込み」がないお金を「無担保」で貸付けて、銀行に損害を生じさせた場合が典型例です。



●共犯者の存在が明らかになってくる可能性

私的流用の具体例としては、会社の備品を発注する担当者が、会社のお金を私的流用しようと考え、必要のない備品を発注し、その分水増しした代金を会社に支出させる場合があります。



こうしたケースでも、だいたい発注先に共犯者がいて、担当者は、共犯者を通じて会社に多く支出させたお金を受け取り、私的流用します。



今回のケースについては、私的流用の具体的な方法が未だ明らかではないですが、辞任した社長が、会社のお金を私的流用しようと考え、自分の職務権限に基づいて適正に使った費用と装って、会社にそのお金を支出させていた場合には、特別背任罪に問われる可能性があります。



「少なくとも過去5年間、月に複数回」にわたり繰り返していたとなると、辞任した前社長の私的流用を把握し容認していた人物や、彼とともに利益を得ていた人物がいた疑いも出てきますので、今後は、共犯者の存在が明らかになってくる可能性もあるかと思われます。




【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/