2023年08月20日 09:21 弁護士ドットコム
陸上女子のドルーリー朱瑛里選手(岡山県立津山高1年)に注目が集まっている。今年1月におこなわれた都道府県対抗女子駅伝で17人抜きの走りをみせ、区間新記録を達成。初の全国高校総合体育大会(インターハイ)でも、女子1500メートルで3位に入り、「陸上界の新星」と取り上げられている。
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一方で、プライバシーや肖像権に関する問題も起きている。過度な報道や無断撮影に不安を感じるとして、2月にはコメントを発表して大会を休場した。ドルーリー選手の代理人である作花知志弁護士は言う。
「1月の駅伝後に取材が殺到し、自宅付近の練習風景を無断で掲載されたり、友人の家にまで取材がいったりするようになりました。当時は中学生でしたし、怖かっただろうと思います。親権者の依頼を受け、2月の大会を欠場するとともに、プライバシーや肖像権を守ってほしいというコメントを私のほうから発表しました」(作花弁護士)
競技中のドルーリー選手を延々と撮ってネットにアップしている人もいた。また、ネットのまとめサイトや掲示板には、自宅の場所がわかるような情報や写真が掲載されて、作花弁護士が10件近く削除要請をおこなったという。
一体なぜ、ここまで注目が集まったのか。ドルーリーさんを複数回取材したという記者はこう話す。
「ドルーリーさんが17人抜きをした大会の前に、全国高校サッカー選手権で岡山学芸館高が初優勝したり、津山出身のお笑いコンビ『ウエストランド』がM-1グランプリで優勝したりして、『岡山旋風』の流れがありました。それもあって、より話題性が高まったんです。その後、普段なら来ないだろうスポーツ紙が、地元の大会の取材に来るようになりました」(記者)
もちろん、実力も折り紙つきだ。今回のインターハイ(全国高校総体)も現場で見ていたという前述の記者はこう話す。
「女子1500メートル決勝は、高校1年生の歴代最高となる記録でしたし、伸び代しかありません。最後のスパートで加速したときには、観客からもどよめきと声援が出ていましたね。未来のオリンピック選手として期待されていますし、今後も大会の結果次第ではフィーバーが続くでしょう」(記者)
一方で、アスリートをめぐっては、競技に取り組む選手たちを性的な意図を持って撮影する「アスリート盗撮」が問題となっている。今回のインターハイでも、警察に引き渡した事例があった。
全国高校総体・札幌市実行委員会の陸上担当によると、保護者でも関係者でもない人が不特定多数の女性選手を撮影していたという。
本部で事情を聞いたところ、他県の大会でも運営から指導を受けていることがわかり、警察に引き渡した。その後、インターハイに来る前にも、近隣のJR駅構内で盗撮をしていたことが警察で発覚したという。
インターハイでは、各審判員や本部役員がスタンドに目を配り、不審者と思われる人物がいれば声かけをしたり、スタンドに通報用本部直通QRコードを貼り、観客にも情報提供を呼びかけたりする対策をとったという。
このようなアスリート盗撮は、着衣の上からの撮影のため、7月に新設された「撮影罪」の対象にはならない。ただ、こうした撮影行為の規制についても検討するよう附帯決議で盛り込まれた。
作花弁護士は「都道府県の迷惑防止条例の適用はあるものの、刑が軽く抑止力にならない。もし今後も立法されない場合には、国会が法律を制定しないその立法不作為が、憲法に違反しているとして、何人かのアスリートが原告になって裁判を起こすことも手だ」と話している。