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休憩中の「お菓子配り」が仕事よりも苦痛で退職に至った女性の回想 毎日10人以上に配らないとならず…

2023年08月20日 06:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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職場のコミュニケーションの一環として、土産ものや持参したお菓子を配るのはよくある光景だ。しかし、それに苦痛を感じる人がいるとすれば、本末転倒だろう。

いまから6年ほど前、部品メーカーの営業事務として働いていた50代女性は、まさにその「職場のお菓子配り」が苦痛だったという。

「会議室みたいな所を休憩室として使わせてもらっていたのは良かったのですが、ランチの時に必ずお菓子を配りはじめます。それも毎日のことで人数はだいたい12、13人でした。年齢層は20代後半~60代までと幅広かったですね」

こう当時を振り返り、約4年務めた仕事を辞めるひとつの要素にもなったことを語る。お菓子配りのどんなことが辛かったのだろうか。編集部では女性に取材を申し込み、当時の状況を聞いた。

「人数分のお菓子を買わないといけないと思うと段々苦痛になり……」

同僚たちが買っていたのは「小袋に入ったあられせんべいとかチョコレート菓子が中心で、あとは贈答品として頂いた焼き菓子やお饅頭」などだった。貰い物があるときはいいが、12~13人分を毎日となると、さすがに各自持ち寄らなければ足りない。

「私も皆さんと同じような個包装のお菓子を買っていきました。その場で食べない人もいますし、持ち帰って家族に渡すという人もいたでしょう。保存期間も考えて、私が選ぶ基準は中身よりも個包装だったら何でも…という感じでした」

しかし、やがて女性はお菓子を用意することや、昼食時だけでなく3時の休憩も含めた「お菓子配りの時間」が辛くなっていく。

「人数分のお菓子を買わないといけないと思うと段々苦痛になり、途中から毎回ではなく時々にするようにしました。私は賞味期限の近い見切り品のお菓子や、会社以外の人からの贈答品などを活用しましたが、出費は月に2000~3000円くらいになりました。当時は給料や生活に困窮していたので、私にとっては大きな出費でしたね」

女性だけでなく、ほかにも負担に感じていた人はいただろう。だが、やめようと言い出す人はいなかった。

「持ってこなくてもいいんだよ~と言う方々はいるのですが、皆さん毎回持って来てはせっせと配りはじめます。中には徹底して持ってこない方がいて、その方のことを『一度も持ってこない』と陰で言っているのを聞いて、やはり持ってこないといけないんじゃんって思いましたね」

「昨日のお菓子○○さんに渡した?など、やけに細かいんです」

こうして辛いお菓子配りタイムが続いたわけだが、特に辛いことは何だったのか。

「毎回ありがとうとは言いつつ、持ってきたお菓子を品定めされてるのではないかと勝手に追い詰められていました。私自身もいただいたお菓子に対していくらくらいかと値段を推測していましたから」

また、配る際に全員揃っていないこともあり、煩わしいやり取りが発生していた。

「『○○さんの分がない』『昨日のお菓子○○さんに渡した?』など、やけにそういった部分に細かいんです。どんと置いて勝手に取ればいいのにって思いました」

確かに、大箱を置いて「ご自由にどうぞ」とすれば配る手間もないし欲しい人だけが食べられる。そういう職場もあるだろう。ただ、食べることだけが目的ではないことも、女性は理解している。

「お菓子はコミュニケーションアイテムです。その場で食べない人もいて、食べることが目的ではないフシもあります。食べても味に云々は特にありません。仕事や家庭の不平不満や社会問題といった普通のおしゃべりするための栄養なだけですかね。盛り上がりはしませんしダラダラ話すだけです。ほとんど午前中の仕事での誰かの悪口です」

つまりお菓子よりおしゃべりが大事なのだ。そこにお菓子があると、単なる休憩よりも場が持つのだろう。ちょっとたばこ休憩にも似ている。しかし女性の感覚には合わなかったようで、

「だんだんと仕事よりもランチタイムや3時の休憩が苦痛になり、結果的に退職しました」

と明かした。

「古い体質の会社で嫌になりました」

退職理由については、給料に不満もあったというが「お菓子配り」も多少関係していたという。

「お菓子配りの文化が当然だという古い体質の会社で嫌になりました。プライベートのお土産も、男性社員は女性事務社員に渡して配らせていましたので、そういった風土全般が嫌でしたね」

一方、いまの職場ではデスクで食べたり外食に行ったりと「ランチタイムも気を使うことなく有意義に過ごせています。同僚と食べに行くこともありますが、あまり群れたりもせず思い思いの時間を過ごしています」と穏やかに過ごせているようだ。

「ランチタイムは一緒に過ごすメンバーも間違えると職場に居づらくなることもがしばしばで、慎重にしないと後々えらいことになりますよね。結果、ひとりで過ごすのが一番だなと感じてます」

と前職での経験をふまえ清々したように語っていた。