2023年08月19日 09:21 弁護士ドットコム
彼女を妊娠させてしまった——。そんな相談が多数、弁護士ドットコムに寄せられています。当事者である「彼氏」だけでなく、「彼氏の親」からの相談も珍しくありません。息子は一体なにをしているのか、という疑問もありますが、自立前の息子だったならば、親が慌てるのも無理はありません。
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親たちはどんな相談をしているのでしょうか。そして親にも義務が生じるのかどうか。弁護士に今後どのような対応が考えられるか話を聞きました。
表現を一部変え、相談の一例を紹介します。
「大学生の息子(未成年)の別れた彼女が妊娠しました。相手の家族から、息子には迷惑をかけないので、産ませてほしいと言われたそうです。息子は、将来を考えられないから産まないでほしいと伝えたのですが……」
「高校を卒業したばかりの息子が同級生の彼女を妊娠させてしまいました。相手の娘さん、親は喜んでいますが、社会も知らず、養うなんてそんな甘いものじゃありません。息子も軽率な行動だったので悪いです。ですが私達は賛成できません」
「中学2年生の息子が、彼女(中3)を妊娠させました。向こうの親は産ませると言いますが、私は腑に落ちません。妊娠を知ったのが20週目だったので、どうすることも出来ません。どうすればいいのでしょうか?」
息子の親たちは「産んでもらいたくない場合、相手に中絶してもらえないのか」「望んでいない出産の場合でも、認知や養育費を支払わなくてはいけないか」と聞いています。河内良弁護士に聞きました。
——男性が産んでもらいたくない場合、相手がそれに応じて中絶しなければいけないのでしょうか
妊娠を維持し、出産するか否かは、女性の自己決定にかかわるもので、男性が女性に中絶を求めることはできません。逆に言うと、男性が出産を望んでいても、女性が中絶を選択した場合には、男性はこれを阻むこともできないのです。
——男性が望んでいない出産の場合でも、認知や養育費を支払わなくてはいけないのでしょうか
女性が出産を選択した場合、婚姻関係にない男女の間に生まれた子ですので、男性との間には、直ちに父子関係は生じません。父子の関係がない以上、男性には養育費の支払い義務もありません。ただ、子が男性に認知された場合には、そのことによって父子関係が生じ、男性には養育費の支払い義務が生じます。
女性が男性に認知を求めて、男性がこれに応じない場合には、女性から家庭裁判所に調停の申立てを行い、調停でも決着しない場合には、認知の訴え(訴訟)を起こすという流れが想定できます。調停を経ず、いきなり訴えを起こすことは、現在の制度上は認められていません(調停前置主義)。
——男性側が学生の場合、養育費は男性本人ではなく、その親が応じることになるのでしょうか
父子関係があるとされた場合、養育費の支払い義務は父である男性が負うもので、男性の親に支払い義務はありません。
養育費の金額は、男性と女性の収入額に応じて機械的に定められる傾向があります(養育費の算定表が最高裁判所のホームページにもあがっています)。
男性側に収入がない場合には、結果的に、養育費の額はゼロとなる場合も考えられますが、その後に男性が収入を得るようになったら、その時点で養育費の調停を起こして請求するということも起こり得ます。
いずれにせよ、男性側の立場としては、義務の有無が不明確なものを漫然と認めて支払いに応じたりなどはせず、まずは弁護士に相談されることをお勧めいたします。
【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp