暴言や暴力といったパワハラが日常的に行われている職場に誤って入ってしまったら、1日でも早く逃げるほうがいい。
東京都の50代前半の男性(営業/正社員・職員/年収650万円)は、ハローワークから紹介された金属加工の仕事を2週間で辞めたことがある。「給与はまとも、まあまあな金額だった」が、酷いパワハラを受けていた。編集部は男性に詳しく話を聞いた。
「研修で折ったドリルの刃を、ベテラン社員が投げつける」
男性は「パワハラのデパートのような会社でした」と振り返る。パワハラの具体的な内容を聞いたところ、「書ききれません」と笑い、いくつか例を挙げた。
「研修で折ったドリルの刃を、ベテラン社員が投げつけていました」
刃の先端が当たって怪我をしたら傷害事件だ。男性の同期は、「製品の寸法が計測できないからと、ノギスでド突つかれて出血」していたという。ノギスとは物の厚みなどを測る金属製の測定器で、尖っている部分もある。一体どうしたら、これで人をど突こうという発想になるのだろう。
また、「経費がもったいない」という理由でゴム手袋なしの素手で切削油の中に手を突っ込んで作業したことも。そのせいで男性は2週間もの間、手がかぶれてただれたと明かした。そもそも男性は技術職志望ではなかった。「営業で応募したのですが、勝手に設計CADで採用」にされたというから驚きだ。
ほかにも、本来なら防じんマスクが必要な作業をマスクなしでやらされていた。安全配慮義務も何もあったものではない。技術職に限らず営業マンが「成績が悪い」と言われて、社長に土下座していたのも見た。パワハラ気質の職場だったのだろう。
「気が利かねぇなぁ~。親の顔を見てみたいわ!」と罵倒され殴られた
入社早々パワハラのオンパレードに耐えていた男性。中でも社長と、その息子で当時30歳ほどだった専務によるパワハラが特に酷かったようだ。
ついに退職を決定付ける出来事が、自身の歓迎会で起きた。息子のビールグラスが空になっていたことに気づかずにいた男性は、息子に呼ばれ、
「気が利かねぇなぁ~。親の顔を見てみたいわ!」
と、グラスが空いてることを窘められたという。それだけでは済まなかった。
「最後にゲンコツで頭を殴られ、そのことを翌日また窘められ、嫌気がさしたので、自分の家族の病気を理由に辞意を伝えた」
もう我慢ならないと退職を申し出た男性に、息子は言い放った。
「てめぇの都合なんてどうでもいい」
これには男性も、
「てめぇの会社なんてどうでもいい」
と溜まっていた鬱憤が爆発した。この後、男性は息子から蹴られ、頭を平手打ちされたという。当然、翌日から出勤しなかったが、
「どうもそんなことが日常茶飯事だったようで、朝は鬼のように携帯に電話がかかってきましたが、こちらからはもう出勤しない旨を電話で伝えたところ、あっさりと承認されました」
と揉めることなく、退職が受理されたのは不幸中の幸いだったろう。
というのも、男性が会社を去ってから19年も経つが、「未だにその会社は存続していて、大量の退職者を垂れ流している」ようで、「職安に対する不信感が募るばかりです」と吐露する。
男性はその後、木材加工のメーカーに入社したが、「8年勤務した後に、やはりその会社も代替わりして会長の息子のパワハラが酷くなり、次も決めずに退職願いを提出しました」と語る。しかし、男性の働きぶりが評価されていたのだろう。取引先の建材問屋にスカウトされ就職し、今に至っている。
「その業種の大手に移れたので、辞めたことは全く後悔していません」
と男性はきっぱりと語った。
転職先が決まっていなくても、やばい職場なら即行で逃げ出すほうが、心身を病むよりずっといい。男性のように辞めて開ける未来があるのだから。
※キャリコネニュースでは引き続きアンケート「仕事を即行でやめた人」を実施しています。回答ページはこちら https://questant.jp/q/HF78WM9H