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マッサが2008年のタイトル喪失についてF1とFIAに対し損害賠償請求へ。“クラッシュゲート”を隠蔽したとの主張

2023年08月18日 08:51  AUTOSPORT web

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008年F1ブラジルGP 優勝したフェリペ・マッサ(フェラーリ)
 元F1ドライバーのフェリペ・マッサが、F1とFIAの当時の対応によって2008年のF1タイトルを逃したという主張のもとで、両者に賠償請求を行うことを決め、その手続きを開始したと伝えられている。

 マッサの弁護士が、法的な請求を行う意思を相手方に対して示す請求前通知書(Letter Before Claim)をF1のCEOステファノ・ドメニカリとFIA会長モハメド・ビン・スライエムに対し、8月15日に送付したと、ロイターは報じた。これは、裁判での手続きの前に必要な正式な通知書だ。

 マッサは、フェラーリドライバーだった2008年に、最終戦まで当時マクラーレンのドライバーだったルイス・ハミルトンとタイトルを争ったが、わずか1点差で敗れた。

 この年のシンガポールGPでは、ルノーチームが不正を行ったことが後に発覚。これは“クラッシュゲート”と呼ばれるスキャンダルで、ルノーチーム上層部が、当時のドライバーであるフェルナンド・アロンソにレース中に優位性をもたらすために、チームメイトのネルソン・ピケJr.に故意のクラッシュを指示し、意図的にレースを操作したもの。これによりアロンソは勝利を挙げた。

 このレースでマッサはトップを走行していたが、クラッシュによるセーフティカー出動時にピットインした際、フェラーリがピットストップ作業でミスを犯し、給油ホースがマシンに接続された状態でマシンをリリース。これによる遅れと、危険なリリースに対するペナルティで、マッサは13位に終わった。

 マッサが今になって訴訟手続きを起こそうと決めたきっかけは、4月にドイツのウェブサイト『F1-Insider』に掲載された元F1最高責任者バーニー・エクレストンのインタビューだった。そのインタビューのなかでエクレストンは、自分と当時のFIA会長マックス・モズレーは、ピケのクラッシュは意図的なものであると知っていたが、「F1を守るために」その場で指摘しないことを決めたと示唆した。

『F1-Insider』は、エクレストンがインタビューにおいて、「規定に従い、このような状況ではシンガポールでのレースをキャンセルすべきだった。その場合、ルイス・ハミルトンではなくフェリペ・マッサがワールドチャンピオンになっていただろう」と語ったと伝えている。

 ルノーについての調査は翌年に行われ、当時のチーム代表フラビオ・ブリアトーレとエンジニアリングディレクターのパット・シモンズが事故の計画に関わったとみなされた。ふたりはモータースポーツへの関与を禁止され、ルノーは執行猶予付きの参戦資格剥奪という処分を受けた。

 ロイターによれば、マッサの代理人を務めるエンヨ・ローが送付した8ページにわたる請求前通知書には、マッサは「F1最高レベルの個人、FIAおよびフォーミュラワン・マネジメントによる陰謀の犠牲者」であり、マッサはクラッシュゲートにより、数千万ユーロに上る経済的損失を被ったとの主張が記されているという。

「要するに、マッサ氏こそが正当な2008年のドライバーズチャンピオンである。F1とFIAは彼からそのタイトルを奪った不正行為を意図的に無視した」と書類には記されている。

「マッサ氏は現時点で自身の損失を完全に数値化することはできないが、その額は数千万ユーロを超える可能性が高いと見積もっている」

「この金額には、マッサ氏が被った精神的、そして評判上の重大な損失は含まれていない」

 14日以内に満足いく回答が得られない場合、マッサはイギリスの裁判所で法的手続きを開始するということだ。

 ロイターがエクレストンに電話でコメントを求めたところ、自分がインタビューにおいて言ったこと、さらにインタビューに応じたことについても、記憶にないと答えたという。

「正直言って、このことについて何も覚えていない。確かにインタビューに応じた覚えもない」とエクレストンは述べたということだ。

 15年前のリザルトについて抗議を行うことについては、可能かどうか定かではない。FIA国際モータースポーツ競技規則では、審査を要求する権利は、競技終了後14日暦日、あるいはその年のFIA表彰式の4日前に失効すると規定されている。