2023年08月16日 12:01 弁護士ドットコム
学習塾「四谷大塚」の男性講師が業務中に生徒を盗撮して、SNSに投稿していたことが発覚し、波紋を呼んでいる。
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集英社オンライン(8月11日)によると、男性講師は女児の実名や連絡先などを小児性愛者仲間が出入りするSNSに掲載していた。四谷大塚は8月13日、事実を認め謝罪。男性講師は8月10日付で懲戒解雇処分とし、警察へ通報したという。
こうした中、教育・保育施設など子どもが活動する場で働くときに性犯罪歴などの証明を求める仕組み「日本版DBS」をめぐり、学習塾やスポーツクラブなどは対象から外れる見通しという報道が波紋を呼んでいる。
現在、こども家庭庁では「日本版DBS」の導入に向けた有識者会議が開かれている。記事は読売新聞が8月3日に配信した「性犯罪歴なし証明する『日本版DBS』、学校や保育所は全職員対象…学習塾は見送りへ」というものだ。
こども家庭庁の担当者は弁護士ドットコムニュースの取材に「記事は把握しているが、対象外という表現は誤り。必ずしもDBSの対象から見送るとして、決まったというものではない」として、報道を否定した。
小倉将信こども政策担当大臣も8月15日の会見で、「現時点ではそのような検討がされているものではありません。塾やスイミングクラブ等も検討対象に含めた議論がされているところで、引き続き、必要な検討を進めてまいりたい」と話している。
「娘を塾に通わせている親としてショック」、「自衛でどこまで防げるんだろう」。
四谷大塚の事件で保護者に衝撃と不安が広がる中、子どもと関わるすべての仕事を「日本版DBS」の対象にするよう求めるオンライン署名には、続々と賛同者が集まっている。
署名を始めた認定NPO法人フローレンスの担当者は「8月10日に署名を始めたが、四谷大塚の事件を受けて保護者の不安が高まっている中で、6日間で6万2千筆が集まった」と反響の大きさを語る。
フローレンスでは、訪問型病児保育を提供している。「スタッフ採用時は、書類で賞罰について尋ね、複数の面接官が何度も面接して慎重におこなっている。ただ、行政の仕組みなしには性犯罪者の判別は難しいため、事業者にとってもDBSのような仕組みが強く求められている」と話す。
一方、職業選択の自由やプライバシー侵害の問題、犯罪歴という個人情報を取り扱うことなどから、事業や業務の範囲をどこまで広げるのかについては、慎重な議論が求められる。
日本では、教員について、4月から子どもへの性暴力などが理由で免許を失効した人に関するデータベース(特定免許状失効者管理システム)が運用されている。過去40年間のデータが記録されていて、教育委員会や私立学校は教員を採用する際に氏名を検索するよう義務付けられている。
ただ、懲戒免職を受けずに依願退職した教員や懲戒免職未満の処分歴、禁錮刑未満の刑罰歴などはデータベースの管理対象外のため、確認することができない。
たとえば、大阪府は2023年6月、2020年9月から22年11月にかけて、勤務校の生徒12名に対し、SNSなどで性的な言動等を含むメッセージを合計737回送信し、私的なやりとりをおこなうなどした大阪府立高の教員(34)を懲戒処分した。ただ、停職3月と懲戒免職未満の処分のため、データベースには記録されないことになる。
さらに、任期が限られている講師などの場合、任用期間が終わった後に懲戒処分ができないため、期間中に発覚しない限り教員の職を続けることができる。そもそも教員免許を必要としない職種の場合、確認対象にもならない。
保育士についても、4月から資格管理が厳しくなった。わいせつ行為が認められた場合は登録取消しとなり、禁錮刑以上の場合は無期限で再登録ができない。今後、教員と同様のデータベースも整備される予定だ。
海外では、職種に関わらず本人または使用者が犯罪歴証明書を求めることができる制度がある。イギリスやドイツ、フランスでは、子どもの安全確保を目的に、子どもに関わる職種については犯罪歴照会を行うことを義務化している。
有識者会議では、対象の事業者に対してどのようなことを求めるかや性犯罪歴を確認する仕組み、前科をどう考えるかなどが論点となっている。
こども家庭庁は早ければ秋の臨時国会に関連法案を提出すると発表。子どもたちを性被害から守るための仕組みをどうするか、急ピッチで議論が進められている。