2023年08月11日 08:41 弁護士ドットコム
保険金の不正請求問題が発覚した中古車販売大手「ビッグモーター」(東京都港区)への厳しい声が続いている。
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弁護士ドットコムニュースには、全国約300店舗の各所で車を売り買いした人からの経験談が複数寄せられた。
「冠水した車だと言いがかりを付けられた」「1分おきに電話が来て怖かった」「売却をキャンセルしたら、店長に『バカ』など罵声を浴びせられた」…。詳しく聞いてみると、CMで知られる「♩クルマを売るならビッグモーター♩」のキャッチフレーズとは程遠い実態が見えてきた。
関西地方に住む男性は、2年ほど前に愛車のベンツ売却でトラブルとなった。3カ月たっても名義変更の知らせが来ないので、調べると使用者が自分のままになっていた。既に手元に車はないのに、車庫(保管場所)も男性の契約している場所ということになる。
「車庫証明の費用節減なのか、組織的な車庫飛ばしなのではと疑います。何かトラブルがあったら、私の責任が問われる可能性もある。気づかないうちに客を脱法状態にしている」
日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連)の担当者は「名義変更・移転登録は原則15日以内ですが遅れることもある。しかし3カ月というのはおかしい。不適切なのは間違いありませんが、何のためなのか」と首をかしげる。
同業他社の社員も「仮にビッグの人が事故を起こした場合、使用者の男性に請求がいくし保険の中断もできない。お客さんにはデメリットしかないのは確か。でも、ビッグのメリットもわからない。謎です」と話す。
さらに、不可解な事態が男性に降りかかる。その約10カ月後、500万円超で売却したベンツに冠水した跡があると言われ、700万円の賠償請求訴訟を起こされたのだ。水につかった覚えはなく書類などを用意していたが、ある日突然取り下げたと連絡があり、終了した。「一連のことについて説明を求めて何度も連絡していますが、なしのつぶてです」(男性)
「ビッグモーター社員の異常なまでの営業スタイルに引いた」という経験談も相次いだ。
国産高級車を査定に行った女性は、強引な営業に根負けして契約。しかし、翌日に友人と交渉がついたため、キャンセルの話をしに夫と関東地方の店舗に連絡したという。
すると店長を名乗る人物が「できるわけねーだろバカか? おまえ、道徳って習った? バカじゃねーの?」と罵倒。本社に電話すると伝えると「会社から何してもいいと許されている。うちはそういう会社だからね」と告げられたという。
また、別の女性は「査定の日時を設定する担当者が朝から夜まで1分おきに着信を残してきた」と証言する。怖くなって断ろうとしたが、既にビッグモーターの社員とみられる男性が自宅に車を見に来たり、違う営業所の社員からショートメッセージがきたりしたという。
「つかんだら離すな」とでもいえそうな営業手法は、客に恐怖すら与えていた。保険金不正の報告書では板金部門での営業ノルマの問題点が指摘されたが、売買を担当する社員の振る舞いも、少しでも売上をあげなければとの焦りすら見えてくる。